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第三話 寝たら鼻水垂れました

『純潔』のマシロ。

白く長い髪、そして、美しい雪のような肌。

その麗しい見た目を見せつけながら舞うように敵を斬り裂く。

そして、神から与えられた『純潔』という障壁を発する能力により、敵の返り血どころか自身に傷を負うことさえない。

心揺らすことなく冷静沈着。戦場ですら顔をゆがめたところを見たことない為、人は彼女をこう呼ぶ。


『純潔の女神』と。


そんな純潔の女神が、ものすっごい口を開けてパクパクしてる。


「な……な……! 貴方、今、なんと言いましたか!?」

「ん? いや、やっと寝られるって」


やべえ、純潔の女神から鼻水が出てる。大丈夫か、コレ。


「ずず……! あなた、自分の犯した罪を分かっているのですか!?」

「罪、ねえ」

「あなたは変わった、変わってしまった……! 同じ騎士見習いとして出会った頃のあなたは、凛々しく強く正しく優しい騎士の見本のような人でした。私は、そんなあなたに……! けれど、今はもうあの頃の見る影もありません。落ちるところまで落ち、罪人になるなんて……! 最低です!」


純潔の女神(鼻水付き)が俺を罵ってくる。

何も響かない。

もしかしたら、寝不足のままだったら、怒る、悲しむ、自分を責める、何かしてたのかもしれない。

けれど、今スッキリした頭で思うことはひとつだ。


「なにいってんの? お前」

「はばあ!?」


純潔の女神(鼻水垂れ)が俺を睨む。


「ずずずずず!」


汚いな、純潔の女神。


「な、なにいってんのって……あなたこそ何を言ってるんです!?」

「こんな国の罪人になって追放されたところで痛くも痒くも眠くもねえよ」

「こ、こ、こんな国!?」


おい、近づくな鼻水の女神。


「こんな国だろう? 一人の兵士を国の一周させて守らせた挙句に追放させるような国なんてよ」

「え……?」

「最初に行かされたのは、ギゼインの東南だ。首無し騎士の討伐に参加せよって王子様の命令でな。次に、そのまま東のメジマソクの所で、対帝国の防衛戦。北に回って、シューセンドのところで盗賊団潰し、北西ナルシィのところに行かされ、西ドエムス、そして、南の魔人討伐……まあ、俺が聞いたときは魔物討伐だったけどな。ともかく、全てオウジサマのご命令で俺はこの一か月間寝ることすらままならないまま戦い続けたわけだ」


覚醒魔法と痛みで己を起こし続ける地獄だった。

あ、感情がないのは嘘だ。なんかすげえ腹立ってきた。

目の前で鼻水の女神が震えている。


「そんな……!」

「知りませんでした、か? 知ろうとしたか? 移動しながら飯を食い、風呂も入れず髪も髭も伸ばし放題、肌は荒れ、目は腫れあがり、身体は重く、意識は朦朧……その男を見て、お前は、最低の罪人だといったわけだ」

「ち、ちが……!」

「違わないね。お前が中央にいる意味はなんだ? 監査のためじゃあなかったか? 正しくある為に私が必要なのだと昔言っていたな。 国の頂点にいる王族がやることは全て正しいと思っていたんじゃないか? じゃあ、純潔の女神様が同じ仕打ちに、お前の大切な人が同じ目にあっても正しいとお前は言えるのか」

「あ、あ、ああああああああ!」


鼻水の女神さまが顔を歪ませ絶叫している。

一回寝た方がいいよ、ほんと。

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