第三十六話 寝たら待たせてしまってました
グリは体中ボロボロのくせに何事もなかったように笑っている。
反対側にいるドランとやらは散々グリに躱され続けたのだろう。
驚いてしりもちをついて、足も手もぶるぶる震えている。
「おおー、グラも痩せたなー。いい運動してきたみたいだな」
「う、うん! よかったよ!」
おい、兄妹で赤裸々に話すな。
やめろ。それはそうなんだけど、身内がいるのはちょっと恥ずかしい。
「ん? ってことは、弟になるのか? 我が弟よ」
「うるせえよ。お前めちゃくちゃ元気じゃねえか」
「いや、すっげー眠いっすよ」
「まあ、だろうな。寝た方が良い」
「隊長たちももっと二人で寝た方が良いっすよ」
「えへへ」
相変わらず口の減らない奴だ。出会ってからずっと生意気で遠慮のない、遠慮する必要のないやつ。
そして、そんな兄貴をあたたかく見守り、信頼しているやさしいやつ。
この二人とも本当に随分長く付き合ってきた。だから、甘えてたところもある。
「待たせて、悪かったな」
二人はちょっと目を見開いて、そして、笑ってくれた。
「ちょっとおお! 誰よ! あんた達! アタシの興業の邪魔をして!」
一番高い席からドエムスが叫んでいる。相変わらず顔を赤くしている。
「……まあ、いいわ! 闘技場に今いる全闘士を出しなさい! アイツらを捕まえたら望みのものをあげるわ!」
闘技場にぞろぞろと、人が出てくる。
皆、武器を持っている。
「グラ、お前は俺達の間にいろ。俺達が盾だ」
「はい、隊長」
「へっへっへ、懐かしいな。最初の頃はこうだったもんな、隊長」
「そういえば、そうか。っていうか、グリ、お前、その枷」
「あ、いけね。外そう」
「おーっほっほっほ! バカね! 前に言ったでしょ! それは奴隷に使う支配の輪! 逆らう事なんて……」
「支配権を『奪う』」
グリがそう言うと、黒い輪は簡単に外れ、地面に落ちる。
「は?」
「ダメだぜ、オレより強い魔力込めておかないと。オレはなんだって自分のものにしちまうんだから」
「ば、化け物! ええい! やっておしまい! 数ならこっちが圧倒的なんだから!」
俺達が構えると、相手は一斉にかかってきた。
「おらああああ!! 死ねえええ!!」
一人の男が剣を振りかぶってきた。その動きはあの男の前では悪手だ。
「いい剣だな、よこせ」
急スピードで懐に潜り込んだグリはそう言って相手の剣を奪い取る。
「な、なにい!?」
相手の男が驚いているのをよそに、グリは奪った剣を長年の相棒だったかのように振り回す。
「な、なんだ、コイツ?」
「おお、そうだったな、オレの本当の名前はグリ。黒蝙蝠の『強欲』のグリだ! お前らオレに勝ちをよこしな……!」
グリはそう言って、舌なめずりをしながら笑った。
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