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第三十話 寝たら男前になりました

昔、ナルシィは俺の後輩で教育係として色んなことを教えてやった。


「ネズ先輩! さっきの動きどうでしたか!?」

「ああ、ナルシィ、悪くなかったぜ。だが、もうちょい力抜いてみろ」

「はい! こうですか!?」

「そうじゃない。余計なことすんな! もっと自分の身体を知れ! こうだよ! こう! おい、ナルシィ? どうした?」


ナルシィはハッと我にかえり、笑って口を開く。


「いや、やはり、ネズ先輩の動きは綺麗だなって。何が違うんでしょうか?」

「だから、余計なものは置いとくんだよ。雑念を捨てて、無心で動く。そうだ、俺が良く言ってるだろ。三回。あれは俺のスキルでもあるんだけど、おまじないでもあるんだよ」

「おまじない、ですか?」

「三回言ってる間に、そのことに集中するんだ。まずは、身体、そして、その中に流れる魔力、最後に心。全部に呼びかけて研ぎ澄ます」


ナルシィはそれを聞いてぶつぶつと呟きながらさっきの動きを繰り返す。

何度も何度も繰り返し、身体も黒髪も泥だらけだ。

けど、


「出来た! 出来ましたよ! 先輩!」

「ああ、めっちゃ綺麗な動きだったぞ!」

「やったああああ! ボクもっと頑張って先輩みたいになります! 先輩みたいになります! 先輩みたいになります!」

「なんで三回言うんだよ」

「大事なことだからです!」


ガキみたいにはしゃぐナルシィを素直に俺は誇りに思った。



*******



「それがどうしてこうなっちまったかねえ……?」


目の前には、おかしくなってしまったかつての後輩、そして、俺をぶち抜いて七光に輝いたナルシィがいる。後ろにはけばけばしく飾り立てられたアルトの街並み。


「うがああ……ネズ、お前を、否定する!」


黒髪に戻ったナルシィが拳を振り上げてくる。

それを軽くいなして、蹴りを入れる。

ナルシィは吹き飛び、壁に激突し瓦礫の中に埋もれる。

だが、ナルシィは止まらない。

ボロボロになっても構わず俺に突進してくる。


「はっはっは! いい様じゃねえか!? ナルシィ! お前はそっちのが似合うよ!」

「うる、さい……! あんたは! なんで、ああなったんだ!? 僕は、僕は、貴方を誇りに思っていたのに!」


ナルシィは涙を流し、俺を睨む。

そして、再び殴りかかってくる。

俺はそれを受け止める。


「僕が再び貴方に出会った時には、賊のような風貌で、言葉遣いは汚く、振舞は荒く、醜かった! 僕の、僕の先輩はそんな人じゃなかった!」


ナルシィの瞳に映るのは怒りと悲しみ。

その二つが混じりあった感情が俺を責め立てる。

ナルシィは七光になるべくして、なった。

だが、


「俺を理由にお前がおかしくなったって言いたいのか? ふざけんなよ。言っただろ、余計な事は考えるなって……昔、お前は俺みたいになりたいって言ったよな? なんでだ?」

「それ、は……ネズ、先輩の、一生懸命な姿が美しかったから……!」

「なら、俺は何も変わってねえよ。姿かたち変わっても俺は今も昔も守りてえもん守るだけだ。その為に、俺はお前に会いに来たんだよ、ナルシィ」


ナルシィはハッとすると涙を拭い、構えを取る。

俺はそれを受け止めるべく、腰を落とし、拳を構える。


「あ、ああ、ああぁあああ」

「泣け泣け! 顔ぶさいくだぞ!」

「はい! 七光! 人徳のナルシィ! 目指すは人々に愛される英雄! その為に、僕は貴方と戦う! 貴方と戦う! 貴方と戦う!」

「黒蝙蝠隊長! ネズ! 大切なものを取り戻しにここにきた! だから、絶対取り戻す! 取り戻す! 絶対に取り戻す!」

「「うああああああああああああ!」」


拳がぶつかり合い、血飛沫が上がる。

互いの顔面に打ち込まれ、同時に吹っ飛ぶ。

二人とも立ち上がるが、ナルシィの顔は真っ赤に腫れあがっている。

多分、俺もだろう。


「おう……男前になったじゃねえか」

「……あ、ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます!」

「なんで、三回も言うんだよ」

「大事な、こと、だからです……!」


そう言ってナルシィは崩れ落ちた。


「一回、ゆっくり寝ろ。そんでもっかいやり直せ。お前なら出来る。がんばれ、がんばれ、がんばれ」

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