第十七話 寝たらパーティーが始まりました
「ぐああああああ!」
俺は女を襲っていた男を殴り飛ばす。
ニヤニヤと笑う俺に苛立ったのかそれとも単純に暴力の光景に当てられたのか、何人かが襲い掛かってくる。
が、秒殺。こんなガリガリの奴らに負けるはずがねえ。
「くそ! くそ! くそ! ふざけんな! ふざけんな!」
最初にぶっとばされた男は地面を叩きながら泣いている。
「言ったろ、テメエこそ、ふざけんじゃねえよ」
「ああ?」
「お前は、自分の欲望の為に、一人の女を泣かせてるんだぞ」
自分の行いが良くないことだとは自覚しているんだろう。
地面に顔を伏せ、震えている。
だが、その震えは徐々に大きくなり、叫びだす。
「それがどうした! 俺は真面目に生きていたんだ。コツコツ働いて店を持ったと思ったら……荷馬車が盗賊団に襲われてよお……うまくいかなくなって全部失って……ちょっとはいい思いしたっていいだろう!?」
シューセンドらしいやり方だな。この街は豊かだ。
だが、それは悪質なやり方だったらしい。
スロウに聞いたが、シューセンドは、商人に対し、様々なフォローをしていて、輸送護衛なども請け負っていたらしい。
だが、それらは全てシューセンドの策略だった。
全ての流れを操る為の。
シューセンドは、善良な商人を嵌めて借金まみれにして落とし、賄賂や不正に汚れまくった奴らを囲っていたのだ。
そして、盗賊団とも繋がり、嵌めた商人の財産を奪っていた。
一世一代の勝負として一生懸命増やした財産をイカサマで奪うのだ。
男もその善良だった商人の一人なんだろう。
俺は泣きわめく男を見ながら、決心を固める。
すると、隣にいた女が男の元へ歩み寄り、
「分かりました。それで貴方の気持ちが収まるのなら。心晴れるまで私の身体を使って下さい」
そんな事を言い出した。
よく見れば、汚れているが神官服。シスターか、この女。
身体を震わせながらそう言った女を見て、男は何というべきか言葉を探してるみたいだった。そして……複雑な感情を持て余し泣き叫んだ。
「す、すまねえ! すまねえ……! 俺はあんたみたいな人になんて事を……ああ! ああああああ!」
この男も腐りきってるわけじゃなさそうだ。そんなヤツが多く此処には居るんだろう。
集まってきた野次馬たちも居た堪れない顔をしてやがる。
「おい、あんた。俺と元は商人なんだろう? 俺に何か売ってくれねえか?」
「売れって言われても俺には何も……」
「なんでもいい情報を寄越せ。そしたら、金をくれてやる。情報は金になるからな」
俺はスロウから受け取ったブツを懐から取り出す。
「こ、これは……金の粒?」
ネーマで金をコレに変えた。持ち運びが便利だからと。
「さあ、なんでもいいぜ。俺に教えてくれ。面白ければ色を付けてやる! お前らもなんかねえか!? 教えてくれよ!」
そう叫ぶと、みんながどおっと押し寄せようとした。
「まあ、待て! 俺は風魔法で音が拾える。その場で話せ。面白ければ……」
俺は別の風魔法で金の粒を一つ取り出し、シスターの手元へ届ける。
リタの風魔法、便利だな。
「あ、あの……」
「襲われそうになった男に身体を差し出すあんたの度胸は面白かった。受け取りな。それで、こいつらに施しをやるでもなんでもいい。好きに使え」
「あ、ありがとうございます!」
シスターが深々と頭を下げる。
「さあ、どうだ!てめえらの声、俺に聞かせろ!」
その時、今までで一番貧民街に活気が生まれたと、男は言っていた。
ゼニスの貧民街ではお祭り騒ぎのパーティーのようだった。
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