罪のない優しさ
「そっかぁ〜…でも、世の中もっと辛い思いをしてる人っていっぱいいるし。そういう人たちと比べたら、自分はまだましだって思えるんじゃない?」
その言葉を聞いて、一番の親友だと思っていた彼女からそっと瞳をそらした。
そっか。そっか…
人間の価値観や考え方というものは、その人の人生を体現している。
彼女に悪気はない。
それは、優しさで言ったものだ。
彼女は優しくて、きれいで、羨ましいほど真っ直ぐだ。
きっといい家庭で育ったのだろう。
いい家族に恵まれたのだろう。
当たり前のようにそれが与えられてきたのだろう。
そういうのは、そうじゃない人ほどよく分かる。
彼女に悪気はない。
でも、世の中は綺麗事で出来ているわけではない。
全ての人が“優しさ”を“優しさ”として受け取れるわけではない。
本当に辛いことがあった時、誰かと比較したからといって、辛さが軽減するわけではない。
結局、私の辛さは私だけにしか分からない。
きっと、私と彼女は本当に分かり合えることはないだろう。