説明物語 説明編
この賭け事僕は勝てる気しかしない。
何故って?
それはもちろんヒントのおかげだ。
僕は自分で言うのもあれだが、女子とは基本的に関わらない人だ。そして僕がここ最近話した異性と言ったら母親と妹と川岸さんに北村先生の4人ぐらいだ。一応女子比率の高い商業高校に通っているのにな。自分で言って少し悲しくなるな。まあいいや、そんで話を戻すが、まず必然的に僕の妹と母親は除外される。
そうなると残るは北村先生と川岸さんの二人となるのだが。北村先生は正直有り得ないと考える。まあ理由は北村先生はよく自分の家族の話をするのだが。その結果家族構成が一人っ子で父と母は普通のサラリーマンと専業主婦だと明らかになっているからだ。ついでに言えばあのテンションが異常に高くて生徒思いの先生の身内に陰陽師がいるとかマジで一切想像できない。有り得ない。
そう考えると北村先生がこの今目の前にいる人の身内である可能性は限りなくゼロに近い。そうすると必然的に残るのはただ一人。
そう川岸さんだ。
そんで川岸さんの何かというと。私的に川岸さんのお兄さんではないかと思う。
何故かというと、まず容姿が若々しいのと喋り方というか喋っている時の感覚が数歳年上のお兄さんって感じだったからだ。
まあ、もちろん今の領域はオカルトの世界だ。
姿形を若くする能力はあるかもしれない、ましてや、あの圧倒的な力だ、出来たとしてもおかしくはない。しかし精神を変化するのは中々に難しいと思うのだ。
それはもちろんライトノベルの世界では若い見た目に若い精神で中身はお爺ちゃんとかあるあるだが。そうあるあるなのだが。常識的に考えてそれは難しいと思う。不可能に近いことだと思う。
人間成長して年を重ねれば精神は変化する。年相応の精神になる。
そうして変化していった精神を若い、それこそ20代の時に戻すのは、まあ無理だと思うし。違和感バリバリでおかしくなると思う。そもそもそれをする理由が余り思いつかない、というかメリットが薄い気がする。まあ、もちろん記憶消去とか出来たら出来なそうな気はするが、それこそやる理由が見つからな。
じゃあこの人の精神は若いということになる。つまり年齢も若いということになる。
そうなると川岸さんのお兄さんというのが一番筋が通り。納得できる答えとなるのだ。それが僕の出した結論であり。考察だ。というわけでこの人の正体は川岸さんのお兄さんだ。
「正解だよ大正解だよ。100点満点をあげよう。そうだよ。俺は川岸さんのお兄さん、いや川岸さんのお兄ちゃんだよ。というわけでからこれから俺の事は川岸さんのお兄ちゃんと呼んでね」
「は。はい」
何故川岸さんのお兄ちゃんと呼ばせたがるのか少し理解に苦しんだが。ここで断る理由もないので了承する。つか、心読んで受けごたえされるの何か少し違和感があるな。まあしょうがないけど。諦めるけど。納得するしかないけど。
「うん。うん。納得してもらえると嬉しいよ。というわけで賭けは見事に君の勝ちだよ。まあ正直言えばこの賭け、結構君に有利だったからね。これくらい出来ないと俺としてはショックだったよ。本当にね。しっかりと答えが導きだせて良かったよ」
「そうですか」
まあ、確かに中々にヒントがでかかったからな。ということはもしかして、これ?わざと僕を勝たせようとしてくれた?
簡単な問題を出してヒントを出して僕と賭けをして僕に勝たせて情報を与えようとしてくれてたのか?
「いや。別にそういうわけではないよ。正確に言うなら試したんだよ。君がどれくらい物事を考えれる力を持っているのかをね。今回出した問題は君は見事正解できた。それも完璧に近い形でだ。でも普通の人は中々にそう上手く結論を出せない。それが出来る君は凄いよ。実に凄い。良い陰陽師になれるよ。俺が保証してあげよう」
ん?良い陰陽師?その言い方だとまるで僕が陰陽師になるみたいじゃないか?どういうことだ。僕は陰陽師になるつもりなんてサラサラないぞ。
「あれ?そうだったの。君陰陽師になるつもりなかったの。そうか。それは残念だ。じゃあ陰陽師になろうか。あ、これ拒否権とかないから。君が陰陽師にならないようなら俺は君を殺さなければならないから、ね?」
山岸のお兄ちゃんはそう言って笑った。
その笑顔から僕はそこが知れない恐ろしい闇と。力と殺意と有無を言わせない圧力を感じた。
つまりどういうことかという。これは断ったら殺される。
僕は陰陽師にならなければ今この場でミンチ肉にされる気しかしない。その未来が容易に想像できる。怖すぎる。
「うん。ミンチ肉にはしないよ。ひき肉にするだけだよ。というわけで陰陽師になってくれるよね?」
こんなもの脅迫じゃん。つかミンチ肉もひき肉も変わらないよ。怖すぎるよ。マジで今少し漏らしかけたよ。
「はい。なります。なります。もちろんならせて頂きます」
僕はそう言って敬礼をした、ほぼほぼ無意識に敬礼をした。因みに人生で一番綺麗に決まった敬礼だと思う。
「そうか。それなら良かった。まあ陰陽師といっても君に特に負担はかけさせないから。精々君のその吸収王の力を使わないと難しい依頼をこなして貰うぐらいかな?もちろん依頼を受けてくれたら報酬もあげるよ」
なるほど。負担はほとんどなさそうだな。それに報酬もくれるのか。そう考えると悪くないな。
「そう。悪くないよ。陰陽師はいいよ。稼げるし稼げるし楽して稼げるし、超絶楽して稼げるし」
稼げるか。しかも楽してか。それは凄くそそられるな。やっぱりお金は大切だからな。色々と買いたいものあるし、稼げるってのは嬉しいな。
「でしょでしょ。陰陽師は良い職業だよ。あっと話が脱線したね。賭けに勝った君には情報を上げないとね、というわけでどんな情報が欲しい?」
どんな。情報が欲しいか。これはまた試されているな。
僕がどんな情報を教えて貰うのかというのを。本来ならばここでどんな情報を貰おうかと悩むと思うのだが。僕はもう既に欲しいと思っている情報がある。
それは。僕の力についての更なる詳しい説明と、僕が吸収してきた死霊?や怨霊(仮)に対しての詳しい情報だ。
「なるほどね。実にいい情報を選ぶね。よし。じゃあ二つとも説明してあげよう。特別大サービスだよ。いやはや俺って優しい」
山岸さんのお兄ちゃんはそう言って嬉しそうに笑ってくれた。
ありがたい。本当にありがたい。
「ありがとうございます」
僕は礼儀としてお礼を言い頭を下げる。
「うん。お礼が言えるのはいいことだな。じゃあ、さてとまずは君のその左腕の力についてより詳しく教えてあげよう。といってもあくまで俺の分かる範囲ではあるがね。まあそこら辺は許してくれ」
「はい。大丈夫です。問題ありません」
まあ、分かる範囲でも教えて貰えるだけありがたいしね。
「そうか。では説明を始めよう。まず吸収王の説明から始めよう。吸収王というのはありとあらゆる全ての非日常的存在を吸収する力を持つ最強の王であり神に届く力を持った存在だ。呼び名としては吸収王・死霊王・最強王・神殺し、まあ、色々あるが。言えるのは滅茶苦茶に強い化け物だということだな。まあ、当たり前の話だ。ありとあらゆる全ての非日常的存在を吸収して自分の力に出来るんだぞ。そりゃあ最強になれるわなって話だ。でだ。その吸収王の力がもしも世界を崩壊させるという点に向かえば。一切の冗談抜きで世界が滅びてしまう。それを考えた時に陰陽連に正教会に仏僧会に東宝教会等々、まあ、普段はいがみ合ってる様々な組織が一時的に手を組んで吸収王を消滅させようって話になったのさ、で、結果は消滅までは出来なかったがほぼ全ての力を散らした上で超絶強固な封印が出来た。で一件落着というわけさ」
ヤバい、何か想像していた情報と違った。
「あ、ごめんごめん。これは前振りというか前提条件さ、本題というか本情報はこっからさ。まあとどのつまり俺が何を言いたいかというと。君は最強の存在・吸収王にして死霊王にして最強王にして神を殺せし最悪非日常的存在にしてありとあらゆる全ての非日常的存在を吸収し我が身とし、ありとあらゆる全ての非日常的存在を従えて支配させ、意のままに操る、王の中の王。力の中の力。最強の中の最強になれるということさ」
いや。だから求めてる答えじゃないのだが。つか、それ僕その吸収王だが死霊王だか最強王だか分からないが、強くなり過ぎたらそいつみたいに消滅処理もしくは封印処理されるんじゃ。
・・・少し嫌な沈黙が走る・・・
「ああ、確かにされるね。でもまだ話は終わっていないよ。ぶっちゃけよう。君の力を上は過小評価している。上は君があの吸収王を超える化け物に最強に成長できる素質を持っていることを知らない、知ろうとしていない。つまりどういうことかというと。気にしなくていいということだ。まあ、君が不自然に大量の死霊が沸くかなりヤバいお墓とか特級呪術スポット何かに行かない限りは上は君の事を怪しまないだろう。あ、ここ最近やったみたいに自然に湧いた死霊とかは処理していいからね、一部ではあるが一般人に危害を加える可能性もあるしね、危ないしね。全然オッケーだから」
「なるほどね。分かりました。では僕はいつも通り生活していいと」
「ああ。そうだよって、また話がずれたな。で本題に、いや本情報に戻すと、君のその左腕の力は物凄く簡単な言い方をすればありとあらゆる全ての非日常的存在を吸収して自分の力にする力だ。そして一部莫大な力を持った非日常的存在を吸収した場合はその非日常的存在が持つ能力を使用できるようになったりする。因みに今の所は吸収上限とかはない。君は非日常的存在を吸収すればするほどに強くなれるという事だ」
なるほどね。納得したわ。さてとじゃあ次は非日常的存在もとい死霊やら怨霊について説明をしてもら得る感じかな?
「ああ、そうだよ次は非日常的存在もとい死霊やら怨霊についての説明だ。非日常的存在というのは、簡単にいえば本来普通の人間が認知できない存在の事を表す言葉だ。それを認知できるのは君みたいな特殊な力を宿した人間や俺みたいな陰陽師や聖なる力を身体に宿す特別な人間。その他悪魔付きの人間とか。臨死体験を何回かした人間とか。元々ある程度才能を持った人間とかとか。まあ。ようは超絶限られているという訳さ」
「なるほど。確かにこの力を得てから僕は死霊というか非日常的存在が見えるようになりましたからね」
「そう。そういうことさ。で、そんな非日常的存在には幾つか種類がある。大まかに分けたら四つだ。一つ目は死霊・二つ目は怨霊・三つ目は概念的存在・そんで最後が特殊的存在だ。まず一つ目の死霊はそのまんまで死んだ人の無念やら怨念が形を作った存在。基本的には弱く、非日常的存在を認知できる人間にしか危害は加えられないというか危害を加えないザコだ。多少は物理干渉力も持っているが、言ってもそこまでない。まあ遇にとんでもない化け物になったりするのだが。それはレアケースだ置いておこう。そんで二つ目の怨霊、これはようは人の思いの集合体だ。といっても怨みや呪いといった悪い思いの集合体だが。例えばもクソも君が前夜の学校で襲われて吸収した存在みたいなものさ。アレは学校にいる女子の悪口や嘘といった悪い思いが積み重なって出来た怨霊だ。この怨霊というのは程度の差はあれど基本的には厄介な存在で物理干渉能力も高いし、怨みとかの悪しき感情から出来てるだけあって非日常的存在を感知できない一般人にもガンガン危害を与えられる。ようは速攻で除去しなければならない存在だ。ほんで三つ目概念的存在。これはまあ一言で言えば不可侵略だ。アンタッチャブル。絶対に関わってはいけない存在だ。つまりどんな存在かというとトイレの花子さんとか口裂け女とか七つの大罪悪魔とかそういう人間の中で概念として存在する物だ。この概念的存在はまあ強い。強いというか倒すというのがほぼ不可能だ。だって概念なのだから。人がその存在を思う限り決して消えない化け物だ。まあ、しかしこの概念的存在は基本的に大きな悪事を働くことはない。何故なら人がそれを望んでいないからだ。むしろ良いことをしたり、人を楽しませたりする。何故なら人がそれを望んでいるからだ。だから基本は不可侵略で関わらないという感じだ。というわけで最後にあたる特殊存在。これは簡単に言えば君だ。もしくは吸収王だったり、俺だったりする。後はその他諸々だ。ようはさっきあげた三つに当てはまらない存在をぶち込む枠だ。といっても特殊存在の数は非常に少ないし。人に危害を加えるタイプも少ない。そこまで気にしなくてもいいだろう。というわけで以上説明は終わりだ。分かったかな?」
「はい。一応何となく分かりました。今日は色々と教えて下さりありがとうございます」
僕はそう言って頭を下げる。
「何良いってことよ。さてとじゃあまたね、一応君に何か依頼がある時は俺の妹を使うからよろしくね。というわけでまたね。あ、それと帰るの面倒だろうしこれはサービスだ」
川岸さんのお兄ちゃんがそう言って手を叩いた。
その瞬間気が付いたら僕は自分の部屋にいた。
「空間転移が凄いな。マジで凄いな、ハハハハハハハハハ。いつか僕も空間転移出来るような力を手に入れたいな」
僕は部屋に戻った後一人そう呟いた。