始まりの物語 3
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そして、まあ、僕はいつもの様に夕飯を食って風呂に入って宿題を嫌々終わらせて寝た。
朝起きたら、窓を開けて外を確認し、まだ降り積もってる雪にうんざりしながらリビングに向かい朝食をとる。朝食を食べながら歩くの面倒だし自転車で行こうかなと思う。
そんなことを考えながら何気なくつけているテレビのニュースで、坂道を自転車で下っていたところ雪で滑って、そのまま激しく転倒し30代の男性が死亡というニュースが流れているのを見てしまう。
こういうのを見ると、一瞬でも面倒やし無理にでも自転車で行こうかな?車道は雪ないし。なんて思った自分を殴ってやりたくなる。普通に安全第一で歩いていきます。
だって怖いもん。滑って死ぬのとか怖いもん。もんもんだもんもん。はいごめんなさいふざけました。
というわけで、少し時間に余裕を持って学校へと向かった。
そうして歩いている途中の事だった。
坂道の所で自転車に乗った靄のような人が現れた。
それは、自転車をフルスピードで漕ぎ僕に向かって突っ込んできた。
僕はそれを見て避けるわけでもガードをするわけでもなく、ただ左腕を前に突き出した。多分それは直感めいた行動だと思った。僕の本能がそう行動しろと僕に行ってきたのだ。
そうしたら、その自転車に乗った靄のような人はあっけなく僕の左腕に吸い込まれた。
そして、また、あの快感が訪れる。自分の中から力が溢れて来る。あの素晴らしい快感が。そう思っていたがしかし、その快感は思ったよりも感じられなかった。
もちろん、少しは気持ちの良い、心地の良い快感は来るがしかし、あの時味わった快感では100%なかった。
ただ、そうただ、身体が強化さている感覚は前の時と同じようにあった。
いや?強化されているというよりかは、あの自転車に乗った靄のような人を吸い込んだことによりその力を無理やり自分で取り込んだような感じだ。
というわけで僕は走った。
理由は何となく強化された気のする身体能力がどれくらいなのか気になったからだ。
で走って、走って、走り抜けて、走り駆けて。
あっという間に学校に着いた。
何というべきなのだろうか。まず、大きな発見が合った。
それは体力の異常なまでの向上だ。
かなり僕は全力で走った。僕の50m走のタイムはパソコン部ではあるが、毎日自転車通学をしているせいか、はたまたおかげか、7秒前半だ。
だけど、走り終えた後、死にますかってくらいきつくなる。吐きそうになる。まあそんなわけで皆薄々察していると思うが、僕のシャトルランの成績は58回という。かなり悲惨な物である。男子の中では最下位だ。
そんな僕なのだが、今は一切疲れていない。普通ならば100%吐きそうになって。死にそうになって。息も耐え耐えの様子で水・・・水・・・水・・・って言う妖怪みたいになっているのに。
そうなるのが正しいはずなのに僕は一切疲れていないのだ。これは異常だ。異常だ。本気で異常だ。
もちろん原因は100%あの靄のような人を左腕で吸い込んだからだろうが、しかし、まさか体力面でここまでハッキリと現れるとは思わなかった。
まあ、でも、見方を変えてみると体力の超増強はかなりありがたい、何故ならば僕の体力不足はそれなりに深刻な問題だったからだ。こうやって体力がついてくれれば、今日みたいに走って学校に向かえるから遅く家を出ても大丈夫だろうし。帰り道も早く帰れる。単純に疲れにくくもなるだろうし。かなり良いこと尽くしだ。
二つ目は、他の人に気ずかれにくいことだ。
もし、僕の身体能力が異常に、それこそ今の僕の体力みたいに強化されていたら、予想、あるいは想像ではあるが。50mを2秒とかで走り、石を持てば握りつぶせる。そんな分かりやすい化け物になっている気がする。そうなったら日ごろの生活に大きく支障が出る。いや、それ所か変な研究員が現れて連れていかれるかもしれない。流石の僕も銃とかで脅されたら大人しく従うしか選択肢がないしな。
うん、こうして考えたら体力の超増強というのはかなりありがたいな。
さて、まあ考えるのはここら辺にして、教室に入ってライトノベルでも読みますか。
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そうして、教室に入ったら、まあ、案の定というべきか女子か楽しそうにキャピキャピとおしゃべりをしていた。僕はそれを横目に鞄を仕舞い机の中からライトノベルを取り出して読み始める。
「よう、相変わらず本好きだな。今この教室で本を読んでいるのはお前と川岸だけだぞ」
本もといライトノベルを読んでいたら、友人である新井が話しかけてきた。
川岸さんというと、まあ、有り体に言えば眼鏡をかけて三つ編みで巨乳で大人しくて成績優秀の品行方正な、クラス委員長って感じの美女だ。いやまあ三つ編み眼鏡だから男子の一部には受けていないが僕は眼鏡外して三つ編みをほどいたら絶世の美女になると思っています。はい。そしてあわよくばその姿を僕にだけ見せてほしいです。まあそんなのはライトノベルの世界か。一応僕でもそれくらいの区別はつきますよ。
で後まあ、実際の所はクラス委員長ではなくクラスの副委員長なのだが。
まあ、しかしそこにあまり大差はない気がする。でも実際の所は川岸さんとはほとんど誰も関りを持っていない。いつも、僕のように本を読んでおり、まあ、僕の読んでいる本は不真面目なライトノベルだったりするのだが。
多分というべきかきっと、まあ、あくまで予想ではあるが川岸のような優等生はライトノベルではなく参考書や文学って感じの凄そうな本を読んでいるだろう。いつもブックカバーをしているから本の内容は分からないけど。これがライトノベルの世界だったら実は趣味が一緒で、そっから始まる恋みたいなのもあると思うのだけどね。
「いや、僕が読んでいるライトノベルと川岸さんの読んでいる本を比べるなよ。絶対違うだろ」
「ハハハ。違いないな、そりゃそうだな」
「ああ、本当だよ。まあ取り敢えず僕はこのライトノベルが中々良い所なので、続きを読むわ」
「おっと、そういえば読書中だったな。これは申し訳ない」
「いや。いいってことよ。気にするな」
そうして、僕はまたライトノベルを読み始めた。
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そっからまあ、うるさい先、ゲフンゲフン、元気で明るい先生が来て、ホームルームが終わり授業が始まり。授業が終わり。部活に向かった。
部活動中
ふと、そうふと今日自分が出会ったあの靄のような人、それは自転車に乗っていた。そして、今日の朝、ニュースで自動車に乗って坂道で滑って死亡した人を思い出した。
そして。さらに言えば、僕があの靄のような人と会った場所は坂道だった。
僕は気になってパソコンを使って調べてみた。
・・・・・・・・
正解だった。
あの靄のような人は今日僕が通った坂道で昨日の夜に死亡したという情報が出てきた。
そして、僕は更に調べた。調べたのはあの一番最初に合った靄のような人のことだ。
あの靄のような人は雪かき用の鉄のシャベルを持っていた。そして、あの靄のような人がいた場所を思い出して、その場所の情報と雪・死亡というワードを入れて検索をしてみた。
・・・・・・・
あった。存在していた。
1週間前に60代の男性が雪かき中に屋根から雪が落下して死亡と出ていた。
・・・・・・・
辻褄があった。否あってしまった。
いや。しかし、これは何というべきなのであろうか。恐ろしい。いや怖い?それとも僕は楽しんでいる?いや、何だろう。何というべきか。
・・・・・・・
分からない。
ただまあ、一つだけ確実な事はある。
あの靄のような人は死んだ人の怨霊のようなものだということだ。まあ、怨霊(仮)と今は呼ぼう。
そして、僕はその死者の怨霊(仮)に襲われて逆に返り討ちにして吸い込んだんだ。吸い込んで強くなった。
その事実を知った今。僕はどういう反応をすればいいのか分からなくなってしまった。
いや違う、僕の感情は分かった。分かってしまった。そう僕は今非常に興奮をしているんだ。ギンギンにビンビンに興奮をしているんだ。
何故って?それは怨霊(仮)を効率よく見つけ、僕のこの左腕で吸い込み僕の力を強化できると思ったからだ。
何故って?それは僕が非日常的世界に足を踏み入れたからだ。
ああ、そうだ、確かに僕は怨霊(仮)というまあ、人の死によって生まれる恐ろしいものを自分の左腕で吸い込む。否取り込み。体力の超増強という形で恩恵を受けている。
それは人によっては恐ろしいと思うであろう。人によっては不安になるだろう。心が弱い人であれば狂ってしまうかもしれない。だって死者の冒涜に近い行いの可能性があるのだから。
もちろん僕は多分、一瞬はそういう感情が出たんだろう。
だがしかし、そう、だがしかし。僕は今興奮しているんだ。喜んでいるんだ。さっきも言ったがこの情報によって僕はより強くなれるのだから。
ああ、そうだ。僕は今部活なんて呑気にやってられないな。
ここら1週間以内で死亡した人を調べてそこに向かい、怨霊(仮)を取り込み身体能力を上げていく。つまり強くなるのだ。ああ、素晴らしい。強くなるっていうのは何といい響きだろうか。
ああ、非日常と何て良い響きなのだろうか。僕の人生に大きな転機が訪れた。
さあ、早速調べて怨霊(仮)狩りにいきますか。
―――――30分後―――――
さて、調べ終わったな。つか落ち着いて考えたら僕は学校のパソコンでしかも部活中に僕は何を調べているんだ。まあ、今日は顧問の先生来ていないしいいけど。というか普段から来ないし良いけど。
さてと、じゃあ、一応メモったし、いくつかまとめてあるサイトはスマホの方にも保存したし。
怨霊(仮)を狩りに行きますか。さあ、僕が強くなる物語の始まりだ。