分身物語
ドッペルゲンガーを皆は一度はというよりもかなりの回数聞いたことがあると思う。
ドッペルゲンガーそれは自分と全く同じ姿形をした者、見たものは自己が分からなくなるのを防ぐため殺し合いを始めるとかなんとか言われたりすれば、見た瞬間に死ぬと言われたり、逆に便利な駒として扱えるという人いたり等々。まあ色々な逸話はあれど。結局は物語の中の存在だ。ドッペルゲンガーという物が実際に目の前に現れるのは普通の人生を送っているのならばあり得ない話だ。
そう。普通の人生を送っているのならば。
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僕の学校というか僕の住む街全体でとある噂が広がった。
内容は簡単で簡潔でとても分かりやすい。
・夜中に一人で出歩いていると、急に目の前にガラスが現れて自分と全く同じ姿形をした者が現れるという物だ。
因みにそうやって現れた者をそれぞれ、皆、ドッペルゲンガーだの分身だと鏡の向こうの自分だの好き勝手に言っている。まあ最近ではドッペルゲンガーが一番よく言われているのだが。
そんなドッペルゲンガーなんだが、別に現れて悪さをしたり本人と成り済ましたりするわけではない。むしろその人を助ける行いをするのだ。
例えば宿題を終わらせてくれたり。喉が渇いたなと思たら水筒を取ってきてくれていたり。会社の仕事を代わりにやってくれたり、ゲームのレベリングを勝手に終わらせたり。
等々。
ただここで大切なのが一つ。
そのドッペルゲンガーは最初の鏡での邂逅以外は絶対に姿を現さないのだ。
理由はまあ、ドッペルゲンガーだからだで終わっている。
特に誰も深くは考えようとしないし。確認をしようともしない。
そんな噂だ。
まあ。酷くふざけた噂だと今までの僕ならば思った。
しかし。そうだがしかし。今の僕が違う。この左腕に死霊や怨霊や怪異に概念的な物、非日常的存在を吸収する吸収王と呼ばれる存在の残滓を宿し。実際に多くの非日常的存在を吸収してきた僕だ。この噂は何らかの形で死霊・怨霊・怪異・概念的存在。もしくはそれに準ずるものが関与していると考えた。
もちろん、この世界にはそう言ったものを解決してくれる陰陽連という組織がある。だけどその人たちはボランティア家ではない。報酬を貰わないと動かない人達だ。まあでもそれは当たり前の話だと思う。だって人間は誰しも食ってかないと死ぬからだ。お金がないと。まあ一部の例外を除き死んでしまう。飢えてしまう。だからお金を得て動く。当たり前の話だ。労働にはそれ相応の対価が必要だ。実際僕も情報を貰うために1万円を要求されたわけだしね。
そんなわけで僕はその噂となっているドッペルゲンガーに会いに行くことにした。
ん?何だって?さっき労働の対価とか偉そうに行って無償で行くのかって?いやそういうわけではない。今から僕がドッペルゲンガーに会いに行くのは僕の為だ。僕が会ってみたいから、可能ならばこの左腕で吸収してやりたいから行くんだ。だって吸収したら僕は自分の分身を自由に出す能力を得れそうなんだよ。これはもう行くしかないやろ。
ん?それは川岸のお兄ちゃんもとい。そういう怨霊や死霊を解決する人の食い扶持を減らす行為じゃないかって?別に僕はそういうのは気にしない人間なんでな。それにもし噂されているドッペルゲンガーが実はじわじわとその本人となり替わるすり替わる系統の恐ろしい物だったら危ないしな。そういう。俗に言う仕事でやっている人達が仕事で来たころには犠牲者いっぱいとか洒落にならんって話だろ。だからまあ、僕は行くのだ。
僕がより強くなるために。
そうして夜まで待った。
夜7時、冬という事もあり辺りは真っ暗だ。
両親にはコンビニでジュースを買うと言って出た。特に引き止められはしなかった。まあ、もう高校二年生であるからな。流石に両親もそこまで過保護ではないか。
というわけで僕は噂されているドッペルゲンガーに出会いたいと望みながらぶらぶらと歩いた。
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テクテク
10分程フラフラとそしてひたすらに家の近くをグルグルテクテクテクテク歩いた。
その時だった。
目の前に鏡があった。
僕はドッペルゲンガーが来るそう確信した。
その確認は見事に的中した。
中から僕と全く同じ姿形をしたドッペルゲンガーが現れた。
そうしてそのドッペルゲンガーが現れるや否や僕は霊力を使い人間を軽く止めている身体能力を使い一気に加速してドッペルゲンガーに左腕で触れた。
一瞬でドッペルゲンガーは左腕に吸い込まれた。しかし、さほど力は湧いてこなかった。というよりも何か霧を触ったような感じがした。
そうその感覚はまるであの忍者漫画の分身の術のような感じだ。
そうしてふと思った。あれ?もしかしてこれはドッペルゲンガーが本体ではなくあの鏡が本体で、あの鏡が写しだしたものと全く同じ姿形の物を生み出している、死霊・悪霊?いや違うな。あの川岸のお兄ちゃんの言葉で言うと、想像的で幻想的で空想的で創造的で妄想的なあやふやでありつつしっかりと人の思い、願い、祈り、思い、欲望なんかにより存在する。俗に言う怪異という物ではないだろうか?
いや。そうに違いない。多分だけどこれはドッペルゲンガーの噂が広まり生まれた?いや?存在が認知されるようになった怪異だ。
まあ。僕自身怪異という物にはこれを入れても1回しか遭遇したことが無いから偉そうなことを言えたものではないがな。
でも一つだけ確かなことはある、それは、そうそれは怪異は美味しいという事だ。能力的にも快感的にも。まあ、もちろん怪異を吸収したら副作用でその怪異にそった行動をとるというのがあるが。まあドッペルゲンガーもとい鏡から分身を生み出すの怪異だ、変なことにはならないだろう。
というわけで俺の今出した結論はただ一つだ。
「絶対にこの左腕で吸収してやる」
そうと決まれば僕はまた歩き出す。
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テク
しかしいくら歩けどドッペルゲンガーことあの鏡は姿を現さない。
もしかしたら一度僕は出会ってしまったからもう出会えないという可能性があるな。というか噂ではそうなってるし。
・・・・・・・・・・・・
それってヤバくね?
ぶっちゃけこの鏡の怪異は凄く吸収したい。絶対に吸収したい。
それは確定事項だ。しかし今現在僕が立てた仮説通りならば絶対に僕は絶対に会う事は出来ない。
それは非常に不味い。よろしくない。
どうすればいい?専門家である川岸のお兄ちゃん合って情報を貰うか。いや駄目だ。いくら請求されるか分からないし。退治に向かわれても困る。
じゃあどうする?どうすればいい?考えろ、考えろ、考えろ。思考をしろ。
・・・・・・・・・・・・
「そうだ。良いことを思いついた。ドッペルゲンガーを探している人を探してその人の後を決して気が付かれないように付ければいいのだ」
我ながら名案だと思う。
僕の前には姿を現さなくても、新しく探している人の前には姿を現すであろう。それにドッペルゲンガーの噂が広まってるおかげで結構ドッペルゲンガー探しの為に歩いている人はいる。
というか何人かすれ違っている。
だからそういう人たちに気が付かれないように後を付けよう。
まあ何だ一応これはストーカーと犯罪に当たるかもだが、バレなければ大丈夫だろう。それに僕としてはドッペルゲンガーもとい鏡が見つかればそれでいい、危害を加えるつもりも個人情報を盗むつもりもない。うん大丈夫だ。
というわけでドッペルゲンガーを探している人を探し始める。
3分後
ありがたいことに簡単に見つけれた。
まあ、結構広まってる噂やし、僕みたいに探そうと考える人は、そりゃいるわな。僕の動機は他の人とは違うけど。
さてと、じゃあこの人にバレないようにストーキングしてあの鏡が出るのを待ちますか。
つか。この人美女やな。年齢は20代後半くらいの大人の色気ムンムンの感じのエロいお姉さんですな。
・・・・・・・・・
あれ?僕犯罪者じゃね?
こんな真夜中にあんな美女をストーキングするって、結構ヤバくね。
・・・・・・・・・・
まいっか、絶対にバレないつもりだし。それに僕の目的はあくまでドッペルゲンガーもといあの鏡の怪異だ。
あの女性じゃない。
だから大丈夫、問題はなし。
というわけでエロいお姉さんをストーキングすること30分後。
ドッペルゲンガーではなく不良が現れました。
そりゃもう。絵に描いたような不良3人組が現れました。
「おいおい。お姉さんこんな真夜中にナニをしてるんですか?」
「そうだぜ。お姉さん。危ないよう。僕らみたいな危ない人に襲われても知らないぞ」
「ハハハ。そうだぜ。というわけでちょっとホテル行こうか」
何だろう。うん凄く絵に描いたようなテンプレセリフを吐きだす不良。もはや一周回って好感度持てるぞ。いやまあ人間の屑ではあるんだけどさ。
「あのう。やめてください。今私忙しいので」
お姉さんは意外なことに物怖じせずにそうキッパリと言って立ち去ろうとする。
でまあ、そんなのが許されるはずもなく簡単に手首を不良に掴まれる。
「おいおい。お姉さん、どこに行こうってんだい。俺達と遊ぼうぜ」
「ちょっと。話してください。警察を呼びますよ」
お姉さんは強気な態度を崩さずにそう言う。
うわ。何だろう。カッコいいっちゃあ、カッコいいけど、普通に危ないぞ。馬鹿なのか?警察を呼ぶっても、こう3人に囲まれている状況でスマホとか使って警察を呼ぶの無理やろ。
「おいおい。お姉さんは馬鹿なのか。こんな状況でどうやって警察を呼ぶってんだい。お姉さんがスマホを取り出し瞬間に奪って終わりよ」
うん。流石に不良も僕と同じ考えなのかそう言う。そりゃそうだ。
「そうだぜ。お姉さんというわけで俺らと楽しいことしようぜ」
「しませんから。というか貴方達は何ですか?こんな事をして許されると思ってるのですか?」
いや。この状況でもこんな啖呵切れるか普通?凄いなこのお姉さん。もう尊敬しかできんわ。
「お前、あまりふざけた口を聞くと。痛い目にあわすぞ。コラ」
不良が分かりやすく怒鳴る。
うん。そろそろ助けてあげるか。
「おいおい。お前ら今時恥ずかしくないのか。そんな絵に描いたような不良やって」
僕はそう言って不良3人に近づく。
「何だガキが?とっとと失せな。失せなきゃ殺すぞ」
殺すぞか。うわ。何だろう。こうやって簡単に人を殺すとかいう人間が人を虐めて自殺に追い込むんだろうな。
・・・・・・・・・
僕は自殺してしまった彼の事を思い出した。
「お前?ぶち殺されたいのか?」
僕は恐ろしく低い声でそう言った。
ついでに大量の殺気も添えてだ。
「ヒ」
一人はそう言って失禁した。
「命だけは命だけは助けてください」
もう一人は失禁はしなかったものの、怯えて足がガクガクに震えており。土下座しながら僕にそう懇願してくる。
「お前。何だ。何だこの化け物かよ。クソクソクソふざけるな殺してやる」
一人は頭のネジが飛んでいったのか。懐から携帯ナイフを取り出して僕に向かって突き刺そうとしてくる。
僕はそれを避けつつ、手首を掴み捻り、頭を掴んで地面に叩きつける。
一応手加減はしたから血は出てないが、気を失って倒れる。
「さてと、一応気絶してないお前。その馬鹿二人を連れていけ。次見かけたら殺す」
僕はたっぷりの殺気を出しながらそう脅した。多分この不良の中で僕という存在が恐ろしい化け物として記憶されることだろう。
「は。はい」
気絶してない奴は僕の言葉に敬礼をし、気絶してる不良二人を引っ張りながら走ってた。
うん。よくあの二人を引っ張て走れたな。火事場の馬鹿力って奴ですかね?知らんけど。
「さてと。大丈夫ですかお姉さん」
僕がそうお姉さんに言おうとした時だった。
お姉さんが二人いた。
そしてその後ろに鏡が合った。
僕はそれを見た瞬間に走った。
鏡に向かって猛ダッシュをする。
そして鏡に触れた。
その瞬間にかなりの快楽が襲ってくる。
ただ。前程ではない。前の飛行の活気を吸収した時よりかはかなり少ない快楽だ。それでも強い快楽ではある。
僕は必死に声を押し殺してそれを耐える。
「あのう。大丈夫ですか」
お姉さんが僕を心配して声を掛けてくれる。
その瞬間だったいきなり僕にこのお姉さんの分身をドッペルゲンガーを作りたいという欲が思いが湧き出た。
そしてぐっとそれをこらえた。何故なら今この瞬間僕がお姉さんの分身・ドッペルゲンガーを作るのは流石にリスクの塊であるし不自然極まりないからだ。
だから僕はその場でうずくまりながらも、ぐっとこらえてこらえてこらえてたら。急にその欲は思いは消えた。
「あのう。さっきからうずくまって本当に大丈夫ですか?」
お姉さんに心配される。
「あ。はい。大丈夫です。あ。では僕はこれで」
僕はそう言ってあくまで人間の走れるレベルの速さに調整しながら家に帰るために走り去った。
というわけで今回の落ち。
ドッペルゲンガーこと鏡を探した結果。コンビニに行くとかいって家を出たのにメチャクチャ時間がかかった具体的には1時間程。流石にお母さんもお父さんも心配して遅くなるなら連絡を入れないと至って普通に叱られた。
一応元々用意していた言い訳として、コンビニで友人と出会い、そのまま長く話し込んでしまったを使って。何とかごまかせた。
これからは今回の手に入れたドッペルゲンガーを使えるから、まあ同じようなことは起きないだろうが。いやはやドッペルゲンガーの怪異手に入れられて良かったです。
そんなわけで部屋に着いたら。怪異を吸収した影響というわけで。案の定急激な睡魔に襲われて。そのまま眠ってしまいました。
起きたら7時30分で慌てて学校に行く準備をして学校に向かったので、ドッペルゲンガーの怪異の力は一切試せていません。
まあ、学校が終わって試せばいいか。