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飛行物語

 僕は学校の帰り道、不思議な存在と出会った。

 それは死霊でもなく怨霊でもなく概念的存在でもなさそうな不思議な存在であった。

 それは僕に一切の敵意も悪意も向けてはこなかった。

 それは全身靄のような形の人型で背中に大きな翼を生やしていた。

 そしてそれはその大きな翼をはためかせて空を飛んだ。


 飛んだ?


 ・・・・・・・・・・


 飛んだ?

 飛んだ?

 飛んだ?


「え?何今の?」

 僕は素でそう呟いていた。


 そしてその不思議な存在はそのまま翼をはためかせて何処か遠くへ消えてしまった。


「マジで何だったんだ今の?死霊でもなさそうだし。怨霊でもなさそうだし。かといって全身靄の人型で翼が生えてるなんて概念的存在が存在するとも思えない。ただ、そうただ一つ分かることがあるとすれば確実に非日常的存在であり僕の左腕で吸収できそうだといことかな?」

「そうなると吸収したい。でもこのまま追いかけても分からなそうだし。かといって探すのも馬鹿らしいというか無理だし。後は山岸さんのお兄ちゃんに頼るという手もあるが。あまり借りを作りたくはないし。どうしようか?うん。決めた諦めるか。といわけで諦めます。まあ何か何処かで会えるか。その時に吸収してみましょう」

 僕はそう一人でぶつぶつと喋って結論を出すといつも通り家に帰った。

 そして家に着いたら2階にある自分の部屋に行き服を着替えてゲームをする。いつもと変わらぬ毎日であり日常だ。

 暫くゲームをしていたらお母さんから夕ご飯が出来たよと伝えられて。一階に降りて夕ご飯を食べる。

 食べ終わったら家族で誰が風呂を洗うかじゃんけんをして負けたので風呂を洗いに2階に上がる。洗い終わった自分の部屋に戻りゲームをしたりラノベを読む。

 そうこうしてたら風呂が沸いたので入り、上がったらまたゲームをしてラノベを読む。

 そして12時になったら更新された漫画を読み。また。ゲームしたりラノベを読む。

 いつもの毎日だ。

 そうしてふと。何か気配がしたので、夜12時過ぎの1時頃に窓の外を見たら。今日というか昨日見た。あの全身靄人型で翼生えた非現実的存在が空を飛んでいた。


 敢えてもう一度言う空を飛んでいた。


 しかも結構近くで。


「いや。まさかもう出会えた。運良すぎんか。これは絶対に吸収してやる」

 そして僕はパジャマ姿のまま霊力を使って空中に足場を作って空を飛んだ。

 飛んで。そして結構近くにいた全身靄人型の翼生えた非現実的を左腕で触れた。


 その瞬間恐ろしい程の快楽が襲いかかって来る。

 僕はその快楽に溺れて霊力で作っていた足場を解除してしまい。重力という絶対的なる存在に従って落下していく。

 そしてコンクリートの地面に激突しかけた、


 そうしかけたのだ。


 つまり言い換えると激突しなかったのだ。何故激突しなかったか?そんなものは簡単だ。だけど簡単じゃない。不思議な感じだ。

 ようは僕の背中に翼が生えたのだ。

 何を言ってるのだと思うかもしれないが。その通りなのだ。背中に翼が生えたメチャクチャに非現実的かもしれないがそうなのだ。僕の背中に翼が生えたのだ。

 何故そんなことが分かるかって。その翼は非常に大きく俺の視界に端っこの方が映り込んでいるのだ。何より背中から翼が生えているという感覚がある。

 いや。どんな感覚だよと思うかもしれないが。そうだな。例えていうなら。耳があるのは当たり前だろ。でも耳は見えない。でも耳があるというのは分かるし、耳に風が当たれば分かるし。耳が温かかったら分かる。寒かった分かる。そんな感じで今僕に生えている翼にもしっかりとした感覚が存在し。そしてあるというのが理解できるのだ。


 というわけで今僕は翼を、それも大きな白い翼を生やして空を飛んでいる。

 いや正確に言えば低空飛行をしている。

 地面と僕との距離はわずか20センチ程だ。

 この翼が出るのが後1秒でも遅ければ完璧にコンクリートとキスをすることになっていただろう。

 まあ、僕はこれでも結構頑丈になったし、霊力で自分の体を強化出来るから、まあ怪我はしただろうが。命に別状とかは一切ないと思うが。まあ怪我がないに越したことはない。


 そんなくだらない事を考えていた時だった、また快楽が襲ってくる。それもさっきよりも強い快楽が。僕は飛びながら声を出さないように気をつけて快楽に耐える。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁ」

 耐えきれなくて少しだけ声が漏れる。

 それくらい凄い快楽だ。

 例え、例えを出すなら。そうだな身体中に軽く心地の良い電撃が流れ続けるような。そんな感じだ。メチャクチャに気持ちが良い。

 そうして僕はその快楽を享受していた時だった。いきなり僕の頭に思いが流れ込んできた。その思いは空を自由に飛びたいという思い。願い。欲望。

 大きな白い翼を持って青々とした空を駆け巡りたいという思い。願いがひたすらに頭の中を駆け巡り。僕の中に大きな大きな欲望として渦巻く。


「ああ。空を飛びたい」

 僕は気が付いたらそう呟いて、空を飛んだ。

 空を飛んで、飛んで。飛びまわった。

 大きな白い翼をはためかせて空を優雅に雄大に激しく飛んでった。

 この何処までも続く夜空を飛んでいった。ビュンビュンと加速していき、夜空を飛び回る。

 飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで、ひたすらに飛んでいく。特に何も考えずに。ただ空を飛びたいという欲に従って飛ぶ。飛ぶ。飛ぶ。


「ああ。月が綺麗だ」

 僕は空に浮かぶ綺麗な月を見てそう呟いた。


「ハハハハハハハハハ」

 僕は笑って空を飛んだ。

 煌びやかに輝くお星様と月を見上げながら空を飛んだ。

 空を飛んで僕はふと我に返る。


 何で今空を飛んでいるんだろう。


 と。


 僕は今空を飛んだ。

 それはもうメチャクチャ飛んだ。

 飛んで飛んで飛び回った。月が綺麗だとか夜空が綺麗だとか星が綺麗と思いながら空を飛んだ。

 自分の中に渦巻く空を飛びたいという欲求に欲望に思いに願いに忠実に行動して僕に生えた大きく白い翼を持ってして空を飛んだ。 

 一目とかそういうのを一切気にせずに飛んだ。


 ・・・・・・・・・・・・


 おい待て待て待て待て待て。

 ヤバくない。そうヤバくない。だって僕は一目を気にせずに飛び回ったんだよ。

 そんなことをしたら白い翼を持って空を飛ぶ僕が確実に世間にバレるじゃん。

 100%不味いじゃん。

 それは不味い。本当に不味い。だって僕は非日常的存在だ。左腕に吸収王という化け物の残滓を宿し、霊力という力を宿し人の身の限界に近い身体能力と人の身を超える体力を宿し。そして人に強制的に真実を話させるという力を持った存在。

 確実にヤバい。

 というか。それ以前にこの翼を広げて空を飛び回る、僕という人型の何かが世間様にバレるのがマジでヤバい。明らかにテレビに出演しちゃうレベルの問題だ。

 それで確実に僕の顔がバレてネット民の力によって住所に名前に学校名等々が晒されて最終的には政府の機関が来て解剖とか。


 ・・・・・・・・・・・・


 いや。流石にそれはないと思うけど。思うけど。でももしかしたらそういう未来はあるかもしれない。有り得る未来だ。予想できる未来だ。

 怖い怖い怖い怖い怖い。やらかした。やらかしたらやらかした。僕は完璧にやらかした。というか何だあの空をひたすら飛び回るという行為はマジで僕らしくない。

 本当に僕らしくない。

 まさか。いやまさかじゃない。確実にあの全身靄人型の翼生えた非日常的存在を吸収したせいだ。さてこれからどうしようか。どうしなければならないのだろうか。


「別にどうもしなくてもいいよ。俺が全部解決させといた。というか俺が陰晴君にへまをしても大丈夫なように簡易的な隠密結界を身体に張ってるし。本当に俺に感謝してよね」

 僕の目の前に山岸さんのお兄ちゃんがいた。

 山岸さんのお兄ちゃん神かよ。マジでメチャクチャありがたい。


「本当にありがとうございます」

「いや。何良いってことよ。それに今回のはかなり不可抗力に近いしね。まあ、怪異を吸収したんだ。それは仕方がないという物だ?」

「怪異?怪異って何ですか」

「ああ。そう言えば怪異の説明していなかったね。そうだね。怪異というのは怨霊とも死霊とも概念的存在とも違う非日常的存在、言うなら想像的で幻想的で空想的で創造的で妄想的なあやふやな存在さ。まあ。そう言うのはややこしいし、そうだね純粋たる思い願い祈り欲望といった人の純粋たるる感情によって生まれる存在さ」

「なるほど。純粋たるですか」

「そう。純粋たるさ。怨霊というのは基本的に悪しき思いによって生まれたりする。だけど怪異は純粋たる思い願い欲望、祈りから生まれる存在であり基本的にその思い願い欲望、祈りに従って生きる存在」

「なるほど、それじゃあ今回の怪異は空を飛びたいという皆の思い願い欲望、祈りが詰まって生まれた存在といわけですか」

「そう。そういうこと。それで今回の怪異、名前を付けるなら飛行の怪異を吸収した陰晴君は飛行の力を獲得すると共に更に強い身体能力を得たというわけさ。いやはやおめでとう、また最強に一歩近づいたね。では俺は今から仕事があるからもう行くわ。あ、それと家に帰って睡眠をとりな。飛行の怪異というかなり力の強い非日常的存在を吸収したからきっと眠くなるはずだよ。というわけで転移」

 そして俺は気が付いたらベットの上にいた。相変わらず山岸さんのお兄ちゃんは凄いなそう思いながらいたら急に疲れが襲ってきて久しぶりに睡眠をとった。

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