自殺物語 後編
学校は驚くほど静かであった。
しかしながら、落ち着いて考えたら当たり前のことだ。校庭で僕はあれだけアイツと戦いを繰り広げていたのだ。
その時の余波で当たりの雪は散らばり、音も出ていた。
でも誰も反応をしなかった。そんなのは普通は有り得ない。だから何か理由があって静かなのだ。
「まさか、まさか、まさか?」
僕はふと、一つの考えにたどり着き、慌てて走って、一番近くにある1年生の教室に向かった。
するとそこでは、生徒・先生全員が眠っていた。いや、昏睡していた。
「なるほど、生命エネルギー含む霊力を吸い取った影響か。でも感覚的にこれは表面的な物だな。多分1時間もすれば目を覚ますだろう。・・・・・・待て。やろうと思えば全てを吸い尽くすことだってアイツの力ならば出来ただろう。そうすれば力も強化されて僕との戦いも勝てたかもしれないのに。それでもそれをしなかった。生命に問題のない範囲でしか吸収をしなかった。何故だ?いや。答えなんて分かりきっているな、それはきっとアイツの優しさ故だろうな。ああ、お前は本当に良い奴だよ」
気が付くとまた涙が出ていた。あれだけ泣いて涙は枯れたと思ったのにまた、出てしまった。
やっぱり僕の中でアイツが自殺という最悪の形で死んだのは整理出来ていないのだろう。いや、違うな、自分が小学6年の時にアイツの不安に気が付いてやれば、こうはならなかったと後悔してるんだろうな。
ああ、もう過ぎたことだ。未来は変えられないはずだ。一度死んだ命を蘇らすなんて神か。死者の王とかにしか出来ないだろう。人外の力は手に入れたが。まだまだ本当の化け物とは言えない。人の範疇である俺にはどうしようも出来ないんだ。
・・・・・・・・
バン
僕は自分の右手で思いっ切り頬を殴った。
「違うだろう。違うだろう。違うだろう。何しみったれてんだ俺は。アイツの代わりに復讐をするんだろう。動けよ。今全校生徒と全教師が眠っている今が復讐の絶好のチャンスだろ」
僕は気を引き締め直した。
そして僕は復讐対象である。アイツを虐めていたクズ7人とそれを黙認した先生を2人を捕まえて、屋上まで持っていく。
そして、用具室に置いてあるロープを盗み出して、グルグル巻きにする。
グルグル巻きにした後、全員のズボンとパンツを下す。
そして、用具室から取り出したハンマーを持って取り敢えずクズ先生の一物目掛けて振り落とした。
因みに、僕の今の姿は顔を見られても大丈夫なように全身を靄で覆っている。燃費が悪いからあまり使いたくはないが、今はアイツのおかげで人の生命エネルギーを吸って補給が出来るから問題はない。
吸っている相手はもちろん虐めを行ったクズとその先生だ。
かなり吸っているから後遺症が出るかもだが知らん。後はまあこの靄のおかげで指紋とか一切残らないのもありがたい、え?防犯カメラは大丈夫かって?そんなもの全部ぶち壊したさ。
修理費?そんなものは知らん。このクソッタレタ学校を気遣う意味などない。
グチャ
「ああああああああああああああああああああ」
で、僕の振り下ろしたハンマーは簡単にクズ先生の一物をクラッシュした。
その叫び声により近くにいたクズ共が目を覚ます。いきなりの出来事に驚き放心している。
僕はそれをガン無視して隣の先生の一物もクラッシュする。
「あああああああああああああああ、イテエエエエエエエ」
先生の叫び声が響き渡る。
「ヒ、お前は一体何者だ」
怯えながらアイツを虐めたクソガキが言葉を発する。
僕はそれをガン無視してそいつの一物もクラッシュする。
「あああああああああ、えあえあえあえせああああああああああ」
クソガキの叫び声が響き渡る。
「ヒイイイイイ、助けて助けて」「マママママ、ママあああああ」「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い」
「来るな来るな来るな。この化け物ね」「ウエエエ~~~~ン、ウエ~~~ン。怖いよ~~~」「何で俺がこんな目に」
僕の行いを見て怯え泣き叫ぶクソガキども、そんなクソガキどもに対して俺は一切の慈悲なく、一物をクラッシュした。
・・・・・・・・・・・・
1分ほどで全員の一物をクラッシュし終える。
痛みと苦痛に恐怖で全員が気絶した。
「さてと。じゃあコイツ等を社会的に殺すか」
僕はそう独り言を呟くと。気絶したクソ共を一人ずつ引っ張って5、6年生のクラスがある3階の大広間にローブで縛って放置する。
そっから、職員室に入りクズ共の名前を「コイツは虐めを行ったクズです」という言葉を紙に印刷してクズ共の頭にガムテープで張り付ける。
これで良いだろう。
さて。学校に戻るか。
そうして僕は学校に戻った。
学校に戻ったらトイレのドアをさっきやった方法で開けてから何食わぬ顔でここ言いながら教室に入った。
「すみません。凄いお腹痛くて長いこと格闘していました」
と。
「そうか。まあいい。取り敢えず席に戻れ」
先生にそう言われる。うん。特に怪しまれていないな。いやでも20分立っているな。いや逆に言えば20分しか立っていないのか。あれだけのことがあって。
あれ?おかしいな、何か涙出てきた。
また泣けてきたよ。僕のあの行いは正解だったのかな。クズ共の一物クラッシュは正解だったのかな?でもアイツが死んだのは事実だ。そのきっかけを作ったのがあのクズ共なのも事実だ。あの行いがやり過ぎとは思わない。いや思いたくない。でもクズ共にだって家族はいる友達はいる。そいつらは何もしてないだろ、いや、何を馬鹿なことを考えているんだ。
当然の報いだ自業自得だ。それに虐めというのを止められなかった友人もといクラスメートも虐めをするような人間に育てた両親も同罪だ。
だから。何で僕は泣いているんだ。
分からない。本当に分からない。でも涙が溢れて来る。
まだ何かしこりでもあるのか。やり残したことがあるのか?
あ、そうだ。僕はまだアイツの最後の遺言、いや遺言ってのはおかしな話かもしれないが、最後の言葉である、アイツの両親にごめんなさいとありがとうを伝えていないな。
でも、それは今なのか?多分まだアイツが死んだことすら発覚していないだろう。
・・・・・・・・・・・・
そうだ葬式。葬式の日にお邪魔しよう。
喪服に身を包んで土下座しよう。そして遺言?を伝えよう。
そうしよう。ああ。本当に本当に。あああ。なんだろう。急にアイツが死んだのが本当に今日の出来事。いやつい数十分前の出来事なのか分からなくなってきた。
僕が今みたいに授業を受けてて死んだ。
そう死んだんだ。ああ。本当に僕は今なんでこんな所にいるだろう。僕は何で将来役に立つかも分からない授業を受けているのだろうか。
もっと他にやるべきことがあるんじゃないか。例えばそう虐めをこの世界から無くすとか。
いや、何を自惚れてるんだ。僕は別に神じゃないんだぞ。そんなのが出来るわけないじゃないか。
でも、そうだな、自分の身の回り、せめて親しくなった人くらいは守りたいな。
「なあ。お腹大丈夫か?そんな泣くほど苦しいのか?」
そう先生にいきなり声をかけられる。
ヤバ、そういえば今普通に授業中かつ、僕の席先生の目の前だったな。
「いや。大丈夫です。すみません」
「そうか。大丈夫ならいいが。何か辛くなったら早く言えよ」
「はい。分かりました。ありがとうございます」
その後、授業が終わり、普通に学校も終わり部活も終わり家に帰った。
家に帰った後、母親が見ていたテレビにアイツの自殺が報道されていた。ただ内容が呪い、怪奇現象と表現されていた。
まあ、それはそうかもしれない、何故ならアイツが悪霊として人間の生命エネルギー及び霊力を吸って全員の人間を気絶させた上に、僕との戦闘でグラウンドはかなり荒れはて、挙句の果てに俺が監視カメラクラッシュと一物クラッシュ、そしてグルグル巻きを行ったからな。
それはもうガッツリ人の力を超えている。
「あら、お帰り」
お母さんがいつもの様に何気ない感じでそう言ってくれた。それが何故か急に凄く嬉しくありがたく感じて涙が溢れる。
「どうしたの、いきなり泣き出して」
そう言って軽く僕のことを心配してくれるお母さんの胸に僕は飛び込び言った。
「ただいま」
と。
「おかえりなさい。陰晴」
お母さんはそう言って僕の背中を優しく撫でてくれた。