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小国の王子、大国に打って出る  作者: Zero
第壱章  幼少編
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第8話【エルフの少女?】

第壱章 第8話【エルフの少女?】



エーデル大陸歴1512年5月06日 昼 ~タニア王国 王城 ラザド城 エルニア私室~


「殿下どういうおつもりですか?」


ババデロアは、応接室から帰ってきて第一声で確認してきた。ババデロアからすると俺はあれを拒絶すると思って俺に一任していたのだろう。それを、受け入れられてしまったので理解が追いついていなかったようだ。少し怒ったように感情的に問いかけてくる。


「簡単だよ。自分から差し出してきたんだ。骨の髄までしゃぶらせてもらおうと思っただけさ」


「このような形では、借りを作るだけですぞ!」


そう、今回奴らは合法的とはいえほぼ黒よりの方法で手に入れた奴隷だ。それを貰ったとなれば弱みになる。そういう風に付け込んでくるだろう。普通の奴隷として扱えば…。


「しかも、奴隷をきれいにしてこいなどと」


「これからお楽しみでもあるかのような事子供がするんじゃないって?」


ババデロアにかぶせるように言い放ち、笑顔を向ける。ババデロアは困惑した顔を浮かべ何かを言うおうとして口を噤む。おそらく、言おうとしていることがわかっているならなぜ? とでもいいたかったのだろう。


「そう今から、お楽しみだよ。ただ、お前たちが思っているようなゲスな事ではないけどな」


俺は侍女に奴隷をきれいにしてこいという命令と共に一枚の紙をおじいちゃんに渡すように指示した。それは…。


「お待たせいたしました。この老いぼれに何か御用でしょうか。殿下」


このタニア王国宮廷魔法使いジバゴ。本来であれば名前の後に様々な意味を持つ言葉が付け加えられるがそれをこの男は魔法を極めるためだけに亡くした。ただのジバゴで良いならと宮廷魔法使いになってくれた男で、おじいちゃんの切り札的な存在だ。老い先は長くないだろうが、実力はあるだろう。この男については魔法を習うか迷っていた為に色々と調べていた。


「お待たせいたしました。準備ができました」


そういって侍女がタイミングよく奴隷としてもらい受けた少女を連れてくる。


「よし、準備は整った。ジバゴのじいちゃん。この子の奴隷契約を解除してくれ」


その言葉で辺りは静まり返る。子供がなぜそのことを知っているのか、何故その考えに至るのか思いつかないのだろう。


「儂は魔法使いで奴隷商人ではないのじゃがのう」


「奴隷も契約魔法だ。じいちゃんの得意な魔法は召喚魔法。召喚魔法士は必ず契約魔法も使えなければならない。だから、普通は取得していないであろう。契約魔法も取得しているのが当たり前。違う?」


そう、このおじいちゃんは強力な召喚魔法士で通常の魔法はからっきしだが召喚魔法でとある強大な魔物と契約を交わしている。だからこそ、契約魔法が使えるはずなのだ。


「ふむ…ちと聡過ぎる子のようじゃが悪い子ではないようじゃの。よかろう。しかし、襲い掛かってくるやも知れんぞ?」


「女の子一人くらいならババデロアや騎士が守ってくれるでしょ」


如何にエルフが魔法的に優れた存在だとはいえ、護衛の騎士や貴族として鍛えているはずのババデロアがいる中ではまともに抗えるはずがない。


「エルフをなめんほうが良い」


そういっておじいちゃんは詠唱をはじめ5分ほどかかってエルフの首輪についていた水晶玉がゆっくりと落ちる。


「これで喋れるはずじゃぞ」


「なんのつもりだ人間」


そういって近場にあった装飾品を取りこちらを警戒するエルフ。明らかな敵意をこちらに向けている。じいちゃんはまぁ、そうじゃろうなといった風にあっけらかんとしており、他は危険が及ばないように警戒をしている。


「話がしたい。対等な関係でいたい。この国で他種族を奴隷にするつもりがないという証明がほしい、色々と理由はある。だが、目の前に、助けられるところに君がいたから助けた」


「偽善者が…私を奴隷にしたのも人間だ」


恨みが籠った目をこちらに向けてくる。そりゃあそうだろう。自分を奴隷にしたやつらと同じようなのが救ってやるなどと言ってきているのだ。勝手だ。理不尽だ。不合理だろう。


「君の言う通りだ。でも、全部が同じではない。エルフにもエルフによって性格があるように人間にも人間の性格がある。やらない善よりやる偽善。救える可能性があり、救える手段があるから君を救った」


俺は目を背けない。彼女の目は怖い。俺に対して怒りを抱いている目、直視するだけで呪われそうなその目を見るのが怖い。当たり前だ。だが、背けるわけにはいかない。何かのヒーローのような加護を貰った。生まれ変わった意味はいまだわからない。この国をどうすれば良くなるのかはわからない。


わからないことだらけだから、手当たり次第に助ける。助けを求められたからではない。助けたいから助ける。前世ではできなかったが、わざわざ記憶を引き継いだのだ。それを少しでも有効活用して多くを助けてみようと思うだけでも出来るはずだ。


「…確かにお前のいう事も一理ある。ならば、今すぐ私を開放しエルフの森に戻せ」


「わかった…と言いたいところだが、後数年待ってほしい。まず、君の住んでいた場所はここから遠い。この国それほどの余裕はない。だから、手紙などで迎えに来てもらえない場合は送ることになるが、送るとしたら俺が中立学園都市アロンに向かう時になるだろう。そうなれば数年後になる」


彼女は装飾品を一度置き、こちらを見つめる。嘘はつかない。ただ真実だけを述べる。


「…ははは! お前は余裕がないのに私を救ったというのか? ハイ・エルフならまだしもエルフの私を送り返したところで難癖をつけられて金を払わされる可能性もあるというのに?」


「なら、君はあのまま誰とも知らぬものに買われて命を落とすことがよかったと?」


彼女は、初めてしかめっ面から激しくおかしそうに笑った。しかし、馬鹿だと言われているようで少しむきになる。まぁ、言われているのは正論なので良い訳のようなものでしかないが…。


「いやいや、わしはな? お前さんより長く生きておる。だから、助けてもらった恩は返させてもらおう」


そうか。エルフは長命種。100歳で成人し500歳ほどで老いはじめ、800歳ほどで死ぬ。そのため、幼い彼女は少女だと思っていたが、普通に俺よりも年上だったのか…。


「一つ言っておくがわしはエルフで成人しておるからの。見た目がこれなのでよく間違えられるが」


…。どうやら心も読めるようだ。訂正しよう彼女はどうやら少女ではなく普通にエルフの美女だったようだ。

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