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小国の王子、大国に打って出る  作者: Zero
第壱章  幼少編
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第7話【奴隷】

第壱章 第7話【奴隷】



エーデル大陸歴1512年5月06日 朝 ~タニア王国 王城 ラザド城 図書室~



「おはようございます。エルニア殿下」


「おはよう、ホースキー」


ホースキー・レジン・ハワード・フォンタニア。タニア王国の王城で司書をしてる貴族だ。一応、王立図書館の掛け持ちもしているがこの国の王立図書館はほとんど本が置いていないので本屋のような感じの小さな建物だ。なので、どちらかというと王城での司書がメインとなって活動しているため、こちらの知識の穴を埋めるために利用した際に良く話した。


「本日のご用件は?」


「これから、座学が始まる事になるから歴史書や参考書をすべて借りていきたいんだ」


「おや、普通よりも早いですね」


まぁ、小学生くらいでいきなり中学生の勉強を始めるような感じだろうからな。ただ、おじいちゃんはそれが可能だと判断したようだ。本来、今の年代ならば社交の勉強や簡単な他国の力関係などの話くらいでがっつり座学をやるというのは10歳から15歳で入る中立学園都市アロンに入る前の1~2年ほどだ。


中立学園都市アロンとは、大陸中央に位置し、大陸全土の国々が不干渉とし学園を中心とした都市が広がっている。歴史、文化すべてを記録し戦争が起こったとしても干渉しない。そのため、終戦のための条約締結などにはここが会場とされることが多く存在する。もし、ここが襲われたとしても、学園を運営しているハイ・エルフにして学園長である。『大賢者』エシィラや卒業生で国では手に負えない英雄レベルの者たちがいるため返り討ちにあうだろう。


そんな高レベルな学園のため、あらゆる国から学生が集まり、その中には王族も存在する。しかし、学園では爵位などは関係ない実力主義の為、金のある者はその入学前からある程度勉強を始めるのだ。


如何に王族が英才教育とはいえ、5歳ではまともに読み書きもできないので読み書きから始めるところをすでに出来る俺は最初から勉強が開始されたというわけだ。


「この辺りの本がおすすめなので読み終わったら教えてください」


「わかった。失礼する」


恭しく見送るホースキーを後ろに部屋を出る。荷物の本は側付きの侍女が運んでくれるので楽だが、筋トレなどにならないと考えると少し残念に思ってしまう。


そこから、昼まで勉強をして昼食を取ろうかと思ったらノックの音が響いた。


「初めまして、エルニア殿下。私、外務大臣を任されております。ババロデア・レジン・シュナイフ・タニアでございます」


「あぁ、おじいさまから話は聞いてる。昼食は前に終わるか?」


「いえ、昼食をお持ちいたしましたので昼食後向かいましょう」


貴族のゴテゴテとした装飾品のついた服を華麗に着こなす初老のダンディなババロデアはそういって侍女に食事を持ってこさせていた。さすがに、外務大臣なだけあって非常に優秀そうだ。



エーデル大陸歴1512年5月06日 昼 ~タニア王国 王城 ラザド城 応接室~



昼食を取り終え、ババデロアと共に応接室に入るとそこにはエメラルドグリーンのきれいな長い髪を持つ少女とその横に立つ貴族服の太った男性貴族が居た。


「これはこれは! 初めまして、エルニア殿下。私、隣国エイジス王国の外務大臣、ネルバ・フォン・レオレオニ・エイジスと申します」


「よろしくたのむ」


俺に近づいてきて握手してくるネルバに護衛の騎士が深いそうな顔をするが、貴族同士の会話に割いることはできないので何もしない。油まみれのおっさんに手を握られても何も嬉しくはないが貴族として必要な事だと割り切る。


「レオレオニ卿、お座りください。そして本日の本題をお教え願えますかな?」


そこに、救いの手をババデロアが差し伸べてくれる。笑顔だが鋭い視線がネルバを射抜き、それに反応することなく笑顔でゆっくりと椅子に座る。


「いや、遠路はるばるこんな国に来ましたが殿下のような高貴なお方と出会えて恐悦至極であります。本日は、こちらの奴隷を殿下にプレゼントさせていただきたく参上したのです」


奴隷と言って見せた少女は耳が長いエルフの特徴を持つ少女だ。エメラルドグリーンの長い髪を持ち、美しく整った顔立ち。幼い少女でありながらどんな男も魅了しそうな美しさを持つ。そんな他種族の奴隷…。


奴隷、この世界ではごく普通に流通している。他種族を奴隷にしたりすることは違法だが、貴族などはそういった違法な品を取り扱うこともある。基本的に、奴隷は一般奴隷、戦争奴隷、犯罪奴隷に分けられる。一般奴隷は何かしらの理由で身売りをした人間で、人道的な条件での雇用という形になる。ただ、購入費と生活費のみで良く機密の保持にもってこいなので利用されることは多々ある。また、戦争奴隷は戦争で敗戦国や捕虜として捕まったものが身代金を払えなかった場合などになるもので、安く自国民ではない為流通しやすい。復興などの労働力として使われる。犯罪奴隷は、犯罪を犯したもので死刑にならないような者たちが使われ罪状により奴隷としてのランクが大きく分けられる。ひどいものは鉱山で死ぬまで働かされたり薬などの人体実験に用いられる。


さて、ここで問題なのが、他種族を勝手に奴隷にすることは違法なのだがそれを合法化する手段が存在する。それが一般奴隷と犯罪奴隷だ。基本的に戦争で捕虜となった人間以外の他種族はすべて中立学園都市アロンが一度引き取る。そのため、戦争捕虜での他種族は一部を横流しする闇奴隷以外はあり得ない。しかし、こう堂々と持ってくるという事は闇奴隷ではない。そうなると、合法化する手段である。


一般奴隷か犯罪奴隷かだ。犯罪を犯せば他種族でも捕まるのは当たり前だ。そのため、罪をでっちあげて捕まえる。しかし、これは権力者の力が必要だ。これは国際問題になりかねないので普通はそんな事は許容しない。しかし、末端であればそういった者を商品とする者もいる。また、本人が望んで奴隷になる場合はもちろん奴隷にしても良い。これは、他種族を勝手に奴隷にしたわけではなく個人の意思を尊重して奴隷になったのだからだ。しかし、一般奴隷では期限付きとなるためそうそう買い手が付くわけがない。


それらの理由から彼女は犯罪奴隷だろう。なんの罪でかは知らないが…。


「このエルフの奴隷はとある貴族を襲った為、奴隷にされましたところを私が買い上げ、しっかりと調教したのでなんでもいう事を聞くでしょう。もちろん、手を付けていませんので殿下が初めてです。殿下のような高貴な殿方は皆こういった物を持っているのが当たり前なのです。田舎臭いこのような場所では中々に手に入らない物でしょうから私が殿下のためにプレゼントとしてご用意させていただきました」


やっぱりか。それに、5歳児に何を期待しているんだ? 性欲なんてまだ湧いてくる年頃ではないだろう。いや、なるほど? これは俺を使ってこの国を傀儡にするための試みという事か。


基本的にこの国では奴隷は扱っていない。もちろん、犯罪奴隷などは存在するが一般奴隷などは出ないように対策をしている。そのため、奴隷などは見る事がない。だからこそ、贅沢として王子である俺に贅沢を教え隣国の力添えが無ければダメな状態にしたいんだろうな。しかし、それを外務大臣であるババロデアもとめないとは…。


いや、ババロデアのこいつに対する視線からするとおじいちゃんが裏で糸を引いてそうな気はするな。まぁ、ここでの答えは決まっているがな。


「おぉ! ありがとう! 余のためにこのような物を大儀であるぞ。ネルバと言ったか。うむ。お主は気に入ったぞ!」


「おぉ! ありがとうございます。殿下! 大使館におりますので、何なりとお申し付けください」


ネルバは嫌らしい笑みを浮かべてババデロアを挑発するようにしているが、俺には滑稽にしか見えなかった。子供だからと侮ると痛い目を見る事になるぞ…。

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