Q、モンスターの行動は何故パターン化されているのか?
前回の更新が二年前だったのですが…長々とお待たせしてしまい申し訳ございません。
細々と始動します。
想定外の展開は既に起きているに等しいが、それ以上の想定外が起きるとは思わなかった。
俺が学園内を巡回させていた杖の花の一つから『キュア』の反応が、たった今、発生したのである。
即座にランディーの線を狙って『スキャン』の索敵も行ったが……引っ掛からない。
何事かと思えば、遠方より騒音が響き渡っている。
「まさか……冗談だろ」
サックウィル学園近くで活性化していたAランクダンジョン。
冒険者たちが抑え込んでいたが、どうやら限界を迎えたようで獣の胴体と人に近い顔立ちのモンスター『マンティコア』が数体、確実にこちらへ近づいてくる。
だが……
『マンティコア』は雑魚だ。
行動パターンが決まってて攻略も、実は楽だ。抑え込みで漏れたのは『マンティコア』だけか?
状況が状況だが、仕方ない。
ランディーよりも『マンティコア』を優先させる。
ついでに、その場に留まっていたリッカルダに粗方説明して、俺はヘルコヴァーラの杖を手にする。
「恐らく学園長も把握され判断なさるかもしれませんが、刻一刻を争います。私がこちらに接近する『マンティコア』を一掃しに向かいます」
ゼッキロが「いやいや」と突っ込んでくる。
「Aランクモンスターをアッサリ片付けるなんて無茶にもほどがありますぞ!?」
リッカルダは別の要素で俺を心配する。
「外には新聞社の方々が待ち構えていて、もしジョサイア先生が出てくるようなものなら――」
俺は二人の不安を一蹴した。
「大丈夫ですよ。すぐに帰ってきます。十分もかかりません」
一応、冒険者として活性化の抑え込みをしている連中が不穏でもあるから、そっちも様子見したい。
ヘルコヴァーラの杖でホーリーを放出。
光速で現場へ飛来すると、図体のでかい『マンティコア』に視線が向かっていた為、見落としていた『エレラルドバッド』約五十匹に『レインウルフ』の群れ――大凡八匹の方が俺に反応し襲撃。
速すぎる俺に攻撃は届かないが、『エレラルドバッド』も『レインウルフ』も基礎的な身体能力が高い上級モンスター。
加えて『エレラルドバッド』が吐き散らす糞に痰は厄介な細菌の温床だ。
清掃魔法『クリーンウォーター』、状態異常回復魔法『クリア』、そして『ホーリー』を組み合わせた広範囲攻撃『ホーリーウェーブ』……ビッグウェーブさながらの光の大津波が後方にも続いていたモンスターも巻き込み、飲み込んでいく。
しかし、だ。
『マンティコア』はこの大波にビクともしない。
図体の頑丈さだけは一人前である。
『マンティコア』の一体が俺に突進する手前、俺はヘルコヴァーラの花である一点を狙う。『マンティコア』の頭に生えている左右対称の角。その一本を。この場合、どちらを狙っても構わない。
『ホーリー』と加速魔法『クイック』で最高速にした花で角を一本破壊。
破壊された衝撃で『マンティコア』は突進をやめ、急停止するのだ。
完全に無防備となった『マンティコア』の腹部に一発。ヘルコヴァーラの杖を叩き込んだ。
第一段階の『マンティコア』は魔力耐性がある為、物理戦になる。
普通なら接近戦タイプが集中砲火のように攻撃しまくるんだが……俺自身接近戦に不慣れなもんで、ヘルコヴァーラの圧倒的攻撃力に任せ、適当に叩きつける。
この怯みの間に『マンティコア』へ一定ダメージを与えれば、次の段階になる。
『マンティコア』が角に風の魔力を集中させ、広範囲に雷柱を複数放出。それらはランダムにぐるぐる動き回る。
通常、この段階が多くの冒険者を絶望させるのだが――俺は全く動いていない。
そう……さっき、角を一本破壊しただろ?
アレで角からの放出攻撃にも変化が起きる。折れた角の側には放出攻撃が届かなくなる。
左右の角を合わせて三六〇度の広範囲攻撃を可能としてた訳だ。
俺の立っている方は安置。
そして――第二段階の『マンティコア』は肉体の魔力耐性エネルギーを魔力に変換し、攻撃を行う。
この状態なら、『マンティコア』の肉体に魔法で攻撃可能となる。
俺がぶちかますのはシンプルだが『ホーリー』一発だ。速攻かつ小細工なし最大威力を『マンティコア』の体に放てば、あまりの一瞬さにただ、刹那の間に『マンティコア』へ光の柱が差し込まれたような状況で。
『マンティコア』自身も死に気づく事なく、狂乱状態の表情のまま倒れた。
……よし。
この調子で残りも片付けるか。
だが、俺はこの光景を想定外の連中に観察されているとは知らなかった。




