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愛情は紙一重、ってか?


翌日の休暇日。

昨日の土砂降りが嘘のように快晴となって、ミディアの容態も変わりない頃。


……完成してしまった。

簡単に、というか……俺も適当に雑学知識を薬学知識を溜め込んで、寿命が縮まる程、A帝国で生き延びた訳じゃない。俺にしか使用できない『サイクル』を活用した薬の調合に没頭しただけだ。


副作用だとか色々問題視されてる危険な調合薬。

その副作用を『サイクル』で排除する。

ちょっとした消去法。俺の元居た世界でいう『チート』だな。他に手段があってこの調合が可能になるだろうとしても、面倒だから『サイクル』でショートカットするという。


一つ、問題があるとすれば手元で育成してたり、持ち運んでいた薬の素材がなくなってしまった事。

肝心の完成した新薬を継続的に飲むには、素材がない。

バジーリが管理する植物園で素材は確保できなくもないが……個人的な使用だからな。

素直に他から取り寄せよう。金だけは腐るほどある。


さてと。

『スキャン』で新薬の情報を確認。

色は随分と半透明で、光にかざせば七色に輝く……一周まわって不味そうな雰囲気あるドロッとした液体。

意を決して飲むと――


「…………………………………………うっ」


不味い、じゃなくて。なんだ。味がしない。無味無臭。だから余計に飲み込みにくい奴だ。

取り合えず、まずは飲み込んで……直ぐに効果はないと思ったら、鏡に映る俺の髪がジワジワと黒くなった。心なしか視界もクリアになっている。

結構、劇的に変化は見られたが――薬は継続的に飲んでいかないと、体内に効力が蓄積しないもんだ。これからの経過観察次第だ。


()()は、この薬で使用する薬草類や、()()試す薬の材料をギルドに依頼するか。


ああ、そうだ。

完成させた薬は一つだけじゃない。新薬も含め複数ある。今回、飲んだのはその一つってだけで。

今後も暇つぶしがてら、新薬の開発をしていくつもりだ。


一先ず、時間的にも頃合いと見て、俺はミディアの所へ向かおう。

としたら、俺の部屋をノックする音が。

扉越しから「先輩」とミディアの声が聞こえて、思わず溜息をついてしまう。

杖の花で確認したら、俺の杖の花をわざわざ運んできて、ミディアは相変わらずの表情筋を動かさない顔立ちだ。


渋々、俺が扉を開けるとミディアが杖の花を俺に差し出しながら言う。


「先輩……今回の事は、本当にごめんなさい」


「……全くだ」


「あれ。髪の毛……」


「色々試すって言っただろ。……ああ、そうだ。今回の謝罪料として、このリストの素材。俺のところに送れ」


「うん………先輩。私、少し考えたんだけど」


なんだ。もう帰ってくれ。余計な事は言わなくていいから。


「私……先輩のこと」


あぁ、面倒くさいなホント――


「家族みたいに思ってるかも」


――なんだそりゃ?

俺は少し力を抜かしてしまった。

いやでも、……まぁコイツ。確かに。俺の事を恋愛対象には見てないって宣言してたのは間違いなくて。

浮浪者になってたのを、引き抜いて育てたって意味じゃ。

……そういう感覚になるのか。コイツ視点じゃ、ある意味、俺は育ての親になるもんな。

俺も変に高を括ってたんじゃないが、仮にそうだったら糞面倒だなと思った程度だ。


不思議そうなミディアに、俺は素材リストを押し付けて言う。


「だったら尚更、今回と同じ真似は繰り返すんじゃねーぞ。分かったな」


ミディアは無表情で頷くが、奴なりに納得したようで。

立ち去る足並みは軽快なものだった。

一難去って、俺は息抜きがてら新聞記事などを参考に、I連合国の動向を確認する。


ニャンナとも最新の情勢を確認し合った結果。

I連合国全体の情勢が落ち着いたら落ち着いたで、今度は政治情勢が混沌としているらしい。

何でも賊を雇って襲撃だとか、それに対抗するべく冒険者を護衛に雇ったりしているとか。

どういう時代の話なんだと頭を抱え込みたくなる。


だが、ここにランディーが介入するとしたら、一目置かれている政治家などのスキャンダルを義賊らしく公開したりするんだろうな。

……時と場合による。

少なくとも、I連合国の政治家は屑だ。屑の中でも、まともな屑を選べって奴だ。

だから、スキャンダルされる屑よりロクでもない屑が上に立ったら、元も子もない。


その辺りの判断が出来てりゃいいが……

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