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ざまぁした後のこと、考えていますか?


ある昔話をしよう。


むかしむかし、ある所に擬人化師という聞いた事もない職業、擬人化という誰も知らないユニークスキルを持つ少年がいました。

擬人化とは、自我のないものに自我を与え、人の形にするという少年にしかない特別なスキル。

武器も、家具も、鉱物も、自我がなければ何でも擬人化できました。

そんな少年を出来損ないだと、周囲の人々はあっという間に忌み嫌いました。


昔の人々は、未知なる職業とスキルを持つものを村八分にする事が多かったのです。

未知のものに対する恐れ、ではなく。

自分達とは違う異物という蔑みの対応でした。


両親からも「お前を生むんじゃなかった」と罵倒され、両親は少年が眠っている内に村から逃げ去ってしまい、少年だけが村に取り残され、孤独になりました。

孤独の穴を埋める為、彼は色んなものを擬人化しました。

擬人化した物の力を生かし、嫌がらせなどに耐えていきました。


ですが、それでも村の皆は少年の力を認めずに、蔑み続けるのでした。

中には少年の力を理解したものも、少なからずいたようですが、ここまでやって後には引けず。自分達も村八分されるのを恐れ、結局、少年は村を出ていく決心をしました。


その際、少年に擬人化され、彼の優しさを知る物達は、村に天罰を与える事にしました。

少年に擬人化されたものは川のゴミ拾いで運よく拾った伝説の樹木・ユクドラシルの断片など高貴かつ希少な物ばかり。

彼らは力を合わせ、村の土地を不毛の土地へと変貌させてしまったのです。


少年は擬人化した仲間と幸せな生活に恵まれ。

少年を村八分にした村人たちは、土地と共に死に絶えていったのでした。


めでたしめでたし……





「って~のが昔の話。だけど、これ見てどうよ? 君の主様はどんな反応する?? 多少、反省しちゃったり? それとも、皆の力で何とかするって解決しちゃいそうだなぁ~」


「……もういい。聞きとうない」


愉快そうなランディーに対し、スリンゲルラントことルラは浮かない表情で答える。

昼間は灼熱地獄なのに、夜は極寒地獄になる砂漠地帯。

意外にも、ここらはI連合国の隣・Z国。

実は、前述の昔話の舞台になった村があった土地の一部である。


かつて、偉大な擬人化師と崇められたルラの主も、今となっては評価が様変わりしている。

彼が擬人化した産物は、ほとんど危険指定因子・災害指定など受けており、ルラもその一種であった。

彼自身と周囲が幸福で豊かになったのに対し、彼に歯向かった因子は軒並み不遇の道を辿った。


土地も、国も、何もかもが彼を中心に動いていたような順々巡り。

彼の為に世界があると言っても過言ではなく。

彼が無礼な振る舞いをしようと、王族は許すか許さないか次第で懐の広さが試される。


あの擬人化師はある意味で、神の使いだったのか。

彼が擬人化する物が何でもかんでも美しい女性や少女ばかりだったので、良くも悪くも、子供らしさが抜けないロクでなしの男とも評価されたり。

少なくとも……ルラは現状を見て、項垂れている。


不毛の土地が徐々に広まり、今では広大な砂漠化が進行中。

Z国内でも砂漠化の被害が甚大。隣国のI連合国もうかうかできない状態だ。


辛うじてここら一帯が、砂嵐に襲われても被害が抑えられているのは、辛うじて水源があるからだ。

これもI連合国の山脈から流れる源流が湧き出るようになったから。

近頃、地熱エネルギーと共に山脈からの源流・浸透水が注目されるようになったのも、ジョサイアがその辺りの解説をしまくって、I連合国全体に認知されている為だ。


ランディーは現状を踏まえてルラに宣言した。


「今から君の仲間たちの伝説を台無しにさせて貰うぜ。不毛の土地になったっていうが、正しくは水の魔素を極端に取っ払って、水源も枯渇させ、大地からも土の魔素を吸い上げた結果。草木の根が生えにくい土質になっちまったってオチだろ?」


「うむ……その時は、ワシはまだ主……いや、奴に仕えておらんかったからな。多分、としか言えん」


「今回、盗むのは地熱エネルギー……つーか。地下のマグマ?っての? 山から流れる自然のエネルギー。それを砂漠地帯へ流し込む」


「聞けば聞くほど想像がつかぬ……そのような事が出来るのか?」


「君の主とは違って、俺って言うほど魔力はないから、自然の魔力で魔法を発動する魔法陣を利用する。今回の魔法陣は糞程、頑張って描いたんだぜ」


肩を鳴らしながら、ランディーは各所に敷いた魔法陣を眺める。

魔法陣は地中にある為、表面上では何とも言えない。

だが、ランディーは「ただし!」と一つ付け加えるのだった。


「これもこれで君の主とやってる事は同じなワケ。だって砂漠にだって自生する動植物とかいるだろ? その辺りが変化しちまえば、ソイツらにとっては迷惑じゃねーの」


「し、しかし! 砂漠がなくなれば……いや………難しい話じゃな」


「あと。あそこら辺って、屍術師(ネクロマンサー)にとっちゃ聖地だったりするんだよなー。君の主に執着して恨み続けてる怨霊とか、まだいるらしいし? 砂漠って事もあって、死者も多い地帯だからなぁ~~……地域改善されて怨霊が勝手に成仏しちまったら屍術師(ネクロマンサー)にキレられるかも?」


なーんて、と。ランディーが廃墟で寝そべりながら、ナナトロワの杖を操作する。

あとは……ルラが意を決して、廃墟から飛び出す。

彼女は上空より水の魔素をかき集めながら、砂漠地帯の上空まで電磁浮遊で駆けていく。

そして、砂漠のあちこちに雨を降らせるのだった。


やがて……ランディーの魔法陣の操作により、軌道変動し、発生した湧き水も湧きたち。

土壌の変化による根づいた雑草程度の植物。

それだけの光景を目にしただけでも、その地に留まっていた怨霊が救われ、成仏した事で屍術師(ネクロマンサー)が嘆いたという。


元々、砂漠地帯だった場所に怪盗Rのカード……もとい看板があったらしい。


『この地に留まっていた怨霊を成仏させたり、生態系を潰してしまいました。

 砂漠化が収まったのでプラマイゼロってことで、よろしく 怪盗R』

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