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魔法陣術式普及計画


『どうも、お久しぶりです』


『世界的な博覧会で最新鋭の使い魔を公開した事で、魔法陣の認知が改められたのは大いな進展でしょう』


『しかしながら、主要各国の人種だけが認めただけで、世界全体の割合としては、ほんの一部』


『貴方が冒険者としてではなく、教員として次世代に知識を広めれば――』


『………はあ、そうですか』


『貴方が忌み嫌う教員制度で派遣される学園は一つだけ。不特定多数の学園に幾度も派遣される類ではないから効率的ではない、と』


『これだから人類種は非効率的なんですよね……』


『とはいえ』


『I連合国に目をつけたのは良いですね。ここは他国との貿易が最も盛んな国家。人材も豊富。この調子で魔法陣の普及に尽くしてください』


『ああ、無論。Aランクに昇格し教員として魔法陣を普及させる事も忘れずに』





冗談じゃねえぞ、ほんと。


久々の最悪な寝起きをした俺に「おはようございます」と挨拶したのは、魔導書の使い魔。

狐の姿に設定した使い魔は、ポストに入っていた新聞を俺に届けつつ、テレビのニュースキャスターが如く喋り始める。


「本日の天候は一日中快晴と予測。今朝の新聞にてウェスカー地区にて大型商業施設の建設計画が発表されました。鉱物系の素材の貢献ポイントに加算されるとの事です。イースター地区にて非合法組織の抗争が活発化。また、先日、ご主人が解決された土地に温泉が発掘され、観光地化の話題があります」


薬草サラダにはドレッシングをかけ、湿っぽいパンを乳製品で濃厚にしたスープに浸して食べる。

クソ神にあれこれ言われたのは、久しぶりだったな。

Aランクに昇格しろってなあ……

簡単には出来ねえんだよ。貢献ポイントのこと計算してんのか?


使い魔には部屋の清掃を命じ、防犯結界を張ってから外出。

時折、ミディアと鉢合わせたりしなかったりだが、ここ最近はめっきり会っていない。

心配している訳じゃないものの、何をしているんだろうと思う時がある。


まあ……それより。


I連合国の外観整備は、俺の元居た世界でいうアメリカンスタイルで割と整備されてるところは整備されている。

俺が住むキャメロン地区は割と整備されてて、治安もいい。

所属しているギルドも広く、貢献ポイントのランキング表示板まである。


とにかく、俺は緊急クエストがあるかどうか確認する。割と緊急クエストはポイントを稼げる。

午前中に緊急クエスト。

午後はダンジョン調査。

週二回は休みを取る……というのが、俺が狙うルーティーンだ。

取り合えず、まだCランクだからBランクに昇格するまでのポイントは稼いでおきたいんだが――


「聞こえなかったのか! 今日でテメェはクビっつってんだよ!!」


……おい。

昨日といい、追放ブームでも起きているのか?

周囲の見せしめにするかのように、数人で構成されたパーティの代表らしき男が、一人の女性を突き飛ばしていた。

彼女は冒険者の割に軽装で、武器も持っていない。何の職業なのか……


「そんなぁ……! 私、皆さんの荷物持ちとか回復薬を作ったりしたじゃないですかぁ!」


「薬剤師なんてポーションとか作っておけばいいのによ」


「それだけど、新しい治療師がパーティに加入する事になったから」


「一々、薬を作る為~とか言っておいて、面倒事増やしやがって」


「大体。薬剤師が冒険者やるのも変って常識的に考えたら分かるだろ! それに薬剤師の癖して火属性なんだぜ! コイツ!!」


は……? なんだと、おい。

火属性の薬剤師なら『火薬』の作製が楽にできるじゃねーか。

あと農民ほどじゃないが、火属性の植物の育成をする補正も得られる……ついでに薬剤師はアイテムボックス持ち。

荷物持ちしてたってなら……よし。


所持していた荷物を渡すよう脅され、えぐえぐ涙ぐみながら荷物を渡す薬剤師の女に俺は話しかけた。


「すみません。大丈夫ですか」


「うう……はい。私、一生懸命頑張ってたつもりなのに」


「先程の話を聞くに貴方はアイテムボックス持ちの薬剤師ですか? 貴方にその気があればですが、この後、ダンジョン調査に行くつもりなんです。ご一緒にどうでしょう」


「え……でも、私」


悪印象を押し付けたいのか、先程、追放宣告してきたパーティの男がせせ笑って言う。


「おいおい。そいつを勧誘するのはやめとけよ。アイテムボックス持ち以外、取り柄はないんだぜ。薬剤師の癖して火属性で、魔法だってへなちょこだぜ?」


「感覚で魔法が使えないタイプの方という訳ですね。魔法陣で補えるので問題ありません。それと、彼女にはポーションではなく火薬など作って貰えるので」


「……え?」


「使えない人材は存在しないという訳です。ああ、あちらにいるのが加入される治療師の方ですか。なるほど。どうも貴方好みの女性でパーティを構成したいようで」


「な、勝手な事いいやがって――」


「いえいえ。どのようなパーティを組もうが貴方の自由です。しかし、それと彼女の才能に需要があるか否かは別問題です」


あんなの放っておきましょうと、俺は薬剤師の女とダンジョン調査のクエストを受けた。


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