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いざBランクダンジョンへ


I連合国へ……否、W国に出国する前にいよいよBランクダンジョンへ向かう話になった。

少なくとも平民冒険者は、Cランクダンジョンを周回できるレベルになっている。

貴族冒険者だが、ランディー含めた一部の人間ならいける。


今日これまで全員が特訓に励み、レベル上げも専念し、実力は十分。あとは精神面くらいといったところ。

BランクダンジョンはCランクと比較すると、出現するモンスター量はほぼ同じ。

ただ、モンスターの強さはグンと高まる。

徹底してモンスター討伐の攻略に関する講習を夜の勉強会で行って来たし、その予習としてCランクダンジョンの周回も彼らにさせた。


……が。

ここで鬼人族らが、自分たちも俺達に同行すると名乗り出たのだ。

有難迷惑よりか、河原の一件もあり俺達の実力に対する不安があるのだろう。

何だか、自分たちが舐められていると平民冒険者達も不満を胸に秘め始めていた。


だが、ここは穏便に俺が対処した。


「同行して貰いましょう。その方が生存率が高まるのは事実ですし……我々も今回、Bランクダンジョンを始めて攻略します。CランクとBランクとではモンスターの強さが大きく変わります。サポートがあっても悪くありません」


Cランクに慣れているからこそBランクで躓く冒険者も多い。

そういった事実も交えて伝え、全員が一応の納得をしたところで土系統のBランクダンジョンへ向かう。


ポートやゼムを含めた平民冒険者ら十数名。

クリストフ達……今回はハインツも含めて貴族冒険者は三名。(セドオアは廃嫡されたので貴族じゃないから)

同行する鬼人族は、どいつも高身長の近接武器・鋼鉄の棍棒や鋼を何重も製鉄した刀的な刃物を所有している。

そして、俺とミディア。


鬼人がいるだけでも案外安心だ。

取り合えず、いざって時の退路をとって貰えるように、彼らに殿を任せ。

いつも通り、セドオアとポートは索敵と素材回収、治療師たちは索敵と前衛のスタミナ回復。

前衛はミディアたちに任せ、後衛担当の俺やランディーは前衛のサポートと遠距離攻撃。

基本中の基本の陣形だが、これらを徹底するよう気持ち改めて、いざ向かった。


「ニ時方向『ワールウルフ』17! 八時方向から『キュマイラ』30! 十一時方向から『レインボースライム』凡そ4、50! 来ます!!」


セドオアが索敵し叫ぶ。


「素材はこちらに投げ込んで下さい! 素材は僕とゼムさん防衛します!!」


ポートが素材確保。

鉱石系のでかいものはセドオアに渡し、電磁力で武器や鉱物を運ぶランディーは、レインボースライス相手に派手な魔法を杖の花と魔法陣とを展開させ、放つ。


命名するなら『フレイムトルネード』……火属性の魔素を風魔法のトルネードに組み込んだ二種属性魔法。

ナナトロワが特殊な杖だから出来る芸当なのだろう。


接近担当のウェンディ、ミディア、クリストフ達は合成獣(キメラ)っぽい中型のモンスター『キュマイラ』と『ワールウルフ』を処理。

ミディアは流れるようにそれぞれの急所を捌くが、ウェンディ達は中々上手くいかない。


序盤はミディアと同じよう『ワールウルフ』のワンパターンな大振り攻撃を回避、攻撃を繰り返しつつ、周囲の『キュマイラ』による蛇の尾の噛みつきにも対処できた。アレは毒があるから非常に危険だ。


だが、やはり途中で息切れが始まる。

ミディアに関しては問題なく、むしろ普段通りの感覚を取り戻すかのように動きは機敏に。

追加で湧き出てきた『キュマイラ』の尾から、率先して威力高めの『フレイムアロー』で焼き潰す。


治療師が前衛のスタミナをヒールで回復させる間は、俺が『キュマイラ』と『ワールウルフ』を処理。

『ワールウルフ』は毛皮と爪が、『キュマイラ』は毒や牙が素材で重宝されるが、勿体無いの関係なしに俺は『ホーリーボール』(威力:中)をヘルコヴァーラの杖の花から放出し、一掃した。


全員がモンスターの強さに集中してしまっているので、俺が代わりに叫ぶ。


「索敵をやめるな! 四時方角から来る『エタルゴーレム』はライムバッハー様が対処して下さい! 数は13体!! 三時方向にいる『レインボースライム』は俺が片付ける!」


セドオアとポートの「すみません!」という謝罪が聞こえるが、今はそれどころじゃない。

ランディーが『エタルゴーレム』の対処……纏っている鉱石の属性と相性悪い攻撃をぶつける事で、表面

の鉱石が崩落・本体も死滅する。


新たに湧き出てくる『レインボースライム』をホーリーとクリーンウォーターによる濁流『ホーリーフロート』で一掃。

だが、ポートが『エタルゴーレム』の素材を回収しようとしてたので「今は素材はいい! 前衛の援護に回れ!!」と俺が叫ぶ。


「前衛! 十二時方角から『ワールウルフ』……34!! 整えられないなら、俺がやる!」


「た、頼む」


何とか前衛にいた盾兵が言う。

まだ前衛を保ち続けているのは、ハインツとミディアだけだった。

クリストフが息を絶え絶えに「無理をするな……!」と叫ぶが『フレイムアロー』を付与して振り上げ速度を上昇させた鍬を手に、ハインツは言う。


「農民は体力だけは取り柄があるんだよ……ッ!」


ハインツは職業の長所を理解した上で前線で長くいるつもりか。

しかし、本当に農民は持久力が取り柄なのだ。決定打が魔法しかない。農民としての攻撃系スキルは取得しないのだ。

まあ、ある意味では助かる。時間稼ぎをしてくれれば、未だ光速接近戦に慣れてない俺でもモンスターを討伐できる。

ハインツが抑えていた『ワールウルフ』を『ホーリークイック』の光速接近攻撃で一掃した俺は、更に索敵を――……


どうやら。モンスターの波は収まったようだ。

『シールド』で周囲に結界を張り、全員に呼び掛ける。


「モンスターの出現が収まりました。一旦、休憩しましょう。ハンクシュタイン様はモンスターの群れを抑えて頂きありがとうございました」


「……俺は俺の役割をやったまでだ」


そう、農民は持久力の良さを活かし、モンスターたちと渡り合い続け、向こうが諦めるのを待つという根性ありきな戦法を取る。

だから、ハインツの戦法は何一つ間違っていない。

前衛に対して、俺は言う。


「前衛が崩れそうになった場合は、盾兵かハンクシュタイン様の持久力で持ち堪えます。その間、俺が援護に回れますので、疲れた皆様はしっかり治療師に回復して貰ってください」


最初、Bランクのモンスターの強さに退いた連中も、少しずつだが前進し、上手い具合にパーティの連携が取れるようになった。

セドオアとポート達の索敵が遅れる事はなくなったし。

俺が援護に回る機会も減って来た。


同行していた鬼人達も、俺達の連携を見て、少しは納得してくれたようだ。

素材も確保し、調査も終え、死傷者もない。

完璧にBランクダンジョンの調査は終了した。


そして、これが実質、俺がW国で最後に調査するダンジョンだった。

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