やっぱり、やる事が多過ぎる
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数日後。
受付嬢に確認すると、やはり俺の嫌な予感は的中していたようだ。
彼女に対し、俺は少々無理難題を提案する。
彼女は困惑することなく「ジョサイアさんでしたら……一応、所長に確認しますね?」と少し席を外す。
居心地がいいのか、今日も厭きる事なく現れた鬼人の王族のお嬢様――『キチョウ』という名――が元気よくギルドに現れた。
従者の大柄な鬼人――ヨシナも、すっかり顔馴染みになった。
何か察知したのか、キチョウが「むむ!」と俺に対し険しい表情で聞く。
「なんじゃ、陰陽師。今日はどこか行くのか?」
「ええ。あと俺は陰陽師ではなく冒険者か魔術師とお呼び下さい。王族、貴族に使えている訳ではないので」
「うーむ? 意味がわからぬ!」
ヨシナが慌ててフォローをした。
「お嬢。我々のシマじゃ、ノナガ様に仕えてる妖術師を特別扱いで陰陽師と呼称しているんでして、こちらじゃ全員がただの妖術師って訳です」
「なんじゃ。こ奴は誰にも仕えておらぬのか! なら、とと様に仕えるよう妾が推薦とやらをやるぞ!!」
「いや、コイツはこの国の人間ですから無理じゃ、ありませんかね……」
などと会話を繰り広げている間に、受付嬢が戻る。
俺が指摘して以来、記録を取るようになった彼女は、記録簿に目を通しながら何かを記入する。
「流石に全ては無理があるとの事なので、調査日が最も古いEランクダンジョン二か所と近場にあるDランクダンジョン二か所の調査をお願いいただけますか。残りの二か所のDランクダンジョンは後日、という事で」
「わかりました。メンバーは俺とミディア、ポート、ウェンディ、ライムバッハー様の五名で登録お願いします」
そう。
平民冒険者たちは鬼人共と仲良くなったが、その代わり、彼らとCランクダンジョンばかり巡り。
残りのEランク、Dランクのダンジョン調査に足を運ばなくなってしまった。
彼らとの周回が、良いレベリングになれば問題ないのものの。
まさか、戦闘のほとんどを彼ら任せに。
……しているとは考えたくないのを願うしかないな。
一先ず、価値ありそうな素材を回収する程度の軽い調査をした。
モンスター食の研究を兼ねた、毒素の下処理を完璧に終えたものの回収も安全に終え、ウェンディも満足そうだ。
ポートも「低ランクだと、忙しくなくて気が落ち着かない位ですねー」とぼやく。
ミディアは退屈そうだった。
それもそうだろう。レベルなら1000単位を越してる、元Aランク……否、通常基準だとSランクに相当する実力者。
幼稚園レベルのEランクダンジョン調査などは、廃れた遊園地並に簡素感を覚えるだろう。
一方のランディーは……
「お~! 出来た出来た! やっぱり水系統のダンジョンだと水の魔素が集まり易いし、余裕だわ」
なんと水の魔法を使っていた。
正しくは、魔法っぽく装った疑似魔法。
『杖の花』で水の魔素を集め、水属性の初期魔法『ウォールター』っぽいものを作っているだけ。
風属性の魔法の原理だけでなく、恐らく『ナナトロワ』の特性を利用したのだろう。
ランディーの杖……『ナナトロワ』の木は様々な魔素を吸収し、成長する特性がある。
実際、水の疑似魔法を発動させてる『杖の花』は青色に彩られており。
俺もランディーがやる事に納得している。
全ての属性を操作してみたい、というのが狙いだろう。
「おっさん! なんかさ~光属性っぽいアイテムねぇか? 光の魔石って中々ないんだよ」
「……俺の『クリーンウォーター』でしたら、簡単に用意できますよ」
「ん~。それでいけるか? ま、試しにやってみるって感じで」
何事もなく四か所のダンジョン調査は終了。
俺は昼食を挟んで、今度こそ使い魔の最終調整に挑もうと試みていた。
だが、パーティ解散後。
適当な飲食店を探そうとしていた俺を受付で待ち構えていたらしい、キチョウが声かけてくる。
「やっと帰って来たか陰陽師! 実はな昼に河原で宴をする事になったのじゃ! お主も来るのじゃ!!」
「いえ、それは出来ません。私はあまりに部外者ですから」
思わず即答してしまった俺。
先の事を考えると、呑気に宴会を楽しんでいる場合じゃないのだ。
拗ねているキチョウと共に、ヨシナが訴えて来る。
「お嬢は手前が帰ってくるのをわざわざ待ってたんだぞ! なんだ、その態度は!!」
「先輩にも先輩の用事があるから」
冷静にミディアが反論するが、面倒事を荒立たせても仕方ないので「居ても良いなら、少しの間だけでしたら構いません」と答えた。
キチョウもご機嫌になったのはいいとして。
宴会と聞いて、俺は試しに「Cランクダンジョンに行った精鋭の方々との宴会ですか」と尋ねたら、ヨシナが「おうよ」と応える。
不安だったので、少々様子見がてらと思ったんだがな……




