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一方、A帝国では(6)


「な……これを出展できないとは、どういう事だ!?」


「ですから……何度も説明している通りです。これと同じものは既に存在しているんですよ」


自国の災害を負ってでも、名誉挽回を目指そうとするA帝国。

彼らは『ウェストデリア国際博覧会』で魔道具を披露することで自国の技術発展と、世界全体に冒険者の撲滅を呼び掛けるような有望性を示そうとした矢先。

I連合国との会議で、魔道具の出展を取り下げられたのだ。

彼らが言うに、わざわざ図面を用意して一からA帝国の代表らに説明するI連合国関係者。


「これは、エルフ族が発案した魔法陣で起動する騎乗物です。大型の空を飛行する船から、馬なしの『車』。魔素で浮遊移動する『バイク』なるものまで……その他にも、貴方がたが持ち込んだような魔道具と同じ原理で洗濯や調理をする魔法陣は、既に公表されていまして……もう数百年前に、ですよ?」


「なにを! これは全部()()()を必要としていて、魔法陣崩しが発見されてから亡き文明となった筈! 我々の魔道具は魔法陣を必要としないものばかりだぞ!! 魔法陣崩しを恐れる類ではない!」


もう何度目か分からない溜息をI連合国関係者がつく。


「いいですか。もう一度『ウェストデリア国際博覧会』の条約をお読みください」


「全人型種族が利用できる手段、またはある分野の進歩・将来性あるものを出展・公開ことだろう。その基準が分かって、我々は魔道具を出展して――」


「残念ですが、今回、A帝国の皆様がご用意された魔道具は、それに該当しません。確かに()()()()()でエルフ族と()()()騎乗物を発案されたのは素晴らしいですが偉業でしょう。しかし、あくまで同等の価値であり、彼ら以上の進歩や将来性は現段階では……」


そしたら。一人のI連合国関係者が言う。


「本当に残念ですね。アレでしたら出展可能ですが、アレは所謂『兵器』ですものな」


「アレ……?」


「B共和国では話題になっておりましたよ! 何でも()()()()()()()()()()()()があったとか。しかし……ここにはない、という事は。まあ、そういう事なのでしょうなぁ」


「そ、それなら出展できるのだな!?」


「ええ。あれはエルフ族はおろか、あらゆる種族も発想しなかった文明でしょう。世界七大偉業の『魂ある使い魔』に匹敵する可能性を私は見出しておりますが……ああ、いえ。今のはあくまで第三者視点での話。私が属する()()()では否定的な分野ですがね」


I連合国はあらゆる宗教国家、故な発言をするI連合国関係者の言葉を他所に。

A帝国関係者は、新たな議題を抱える事になる。

唯一、出展が認められた二足歩行型の魔道具。

アレは兵器目的で製造され、兵器関連は出展できないと駄目押しされている事から、どうにか兵器目的ではなく別方面で活用する魔道具として出展しなければならない。


魔道具の研究者と相談した結果、介護用魔道具として出展するよう早急に改造する事になった。





無事、改造が間に合った三か月後……


「おい! どうなっている!! 何故、誰も来ないのだ!」


『ウェストデリア国際博覧会』は無事開催されたというのに、誰も中に入ろうとしない。

A帝国のみならず、他国もざわめきが絶えない。

もう開場時間は、とっくに過ぎているにもかかわらずだ! 誰も会場には入らないのである!!


「何でも、他のものに注目して来賓の方々が誰もこちらに足を進めないらしい!」


「出入口付近は混雑になるから、どの国も出展品を展示していない筈だぞ!?」


「おい、アレを見ろ!!」


人々が、各国の来賓が注目しているのは、長蛇の列の整備や、彼らに飲食を販売しに回ってる宙に浮いた女性たち。それぞれが、彼女らに似合った属性の魔力を放ちながらも、人々と自然な対話を交わし、笑顔で手を振り……アレは何だと出展者らが疑問を持つ中。

彼女らと接触していた人々は、各々騒いでいる。


「本当に生きているみたいだわ!」


「僕に手を振ってくれたぞ……使()()()なんて嘘じゃないか?!」


「術式さえ書けば、俺達にも使えるなんて本当かよ!」


「こ、これは最早、世界七大偉業を為したと言っても過言ではない!!」


「『屍術師(ネクロマンサー)』の私が断言する……魂はない」


「だが、十分だろ! こいつは革命だ! あの使い魔を作った奴は天才だぞ!!」


W国という小国が()()()として派遣兼出展をした最新鋭の使い魔の登場に『ウェストデリア国際博覧会』は既に最高潮の盛り上がりを見せていたのであった。


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