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W国Cランクダンジョン攻略RTA(9:42:01)


しばらくして……俺の経験値稼ぎ兼Cランクダンジョン攻略が本格化してきた。

改めて説明しよう。

まず、俺は早朝には朝食作りとギルド宿舎の清掃、菜園から薬草やポーションの原液を採取し、自室でオート製造。


そこから――今日一日で、Cランクダンジョンを全て攻略する。


現在、Cランクダンジョンは三か所ある。

一つは以前、活性化が発生し、E王国が対処していた渓谷方面にある風系統のダンジョン。

もう一つは、ハインツが特攻した山脈方面にある闇系統のダンジョン。

最後の一つは、街から然程、離れていない位置にある火系統のダンジョン。


午前九時。

最初に向かうのは闇系統のダンジョンだ。

パーティは俺とミディア、以前同行の経験ある火属性の男剣士と土属性の女治療師。

俺が後衛をほぼ受け持ち。

殿とサポートは治療師が担当。

前衛は、ミディアと剣士。

所謂、短期決戦型の陣形だ。特別何か素材を回収したりはせず、調査だけして帰還するだけ。


ここらのモンスターは闇属性で俺の独壇場ではあるし、剣士が疲れて対応できない分は俺が前衛に回りつつ、杖の花からの援護射撃も可能だ。

治療師には、こまめなヒールと周囲の索敵だけに集中して貰い。

邪魔にならない程度、素材を回収して調査終了。

終わった時刻は、ちょうど昼前。

ここから街に降りていけば、いい時間帯で昼食を味わえる。


剣士の男は「いやぁ~……あっという間だったなぁ」と疲労を隠せずも、不思議と爽快感ある顔立ちなのは、まるでジェットコースターを乗り終えたかのような雰囲気だった。

治療師の女が「ジョサイアさんの迅速な対応あっての事です」とお世辞をいう中。

ミディアは、軽いジョギングを終えた感じで尋ねる。


「先輩。次は」


「お前はハインツ……ハンクシュタイン様の指導があるだろ。彼も将来有望な戦力になる。頼んだぞ」


「……むう。分かった」


ミディアもあのレベルのダンジョンなら十周、二十周も余裕だろうな。

ギルドに戻り調査報告。

この次も、次のダンジョンへ向かうべく、休息を取る。

受付嬢は「本気ですか」と驚愕していたのは最初の内、今となっては「少し休まれては……」と謎の心配をされる始末。

「功績を稼いで何が悪いんですか」という俺の言葉に向こうはだんまりだった。


パーティを解散し、俺は昼食で『ミートパイ』もどきを食べながらステータスを確認。

治療師が『ヒール』を全て受け持ってくれたお陰で、俺はほぼ攻撃魔法『ホーリー』を駆使した技しか使用していない。

物理攻撃も組み合わせれば、全くMPは消費されてない訳だ。


次に挑むのは街に近い火系統のダンジョン。

パーティはランディー、水属性の女魔術師、以前同行した土属性の剣士ゼム、そして俺。

前衛にはゼムと俺。

ランディーと女魔術師は後衛。

これもまた短期型の陣形だ。特に水属性の魔術師を連れて行くことは、一見、彼女の独壇場になりやすそうだが、水が火系統の素材を駄目にしてしまうデメリットがあるのだ。


前にも行ったが、今やっているのは経験値稼ぎであり、W国ギルドに所属している冒険者をCランクダンジョンに慣れさせる為でもあった。

このダンジョンは、闇系統のダンジョンに比べ狭く。あそこよりも早く切り上げる事ができた。

それでもゼムと女魔術師は息が上がっていて、俺は彼らにヒールをかけポーションも渡して置いた。

ランディーは手慣れた物で魔素のコントロールで、ゼムや女魔術師のサポートを熟す傍ら、電磁力で素材回収をしてくる。

まあ、手ぶらで帰るのも癪なので、邪魔にならない程度、シールドで作った箱で素材をギルドに運んだりした。


最中、女魔術師がこんな事を尋ねる。


「はぁはぁ……これって活性化って状態じゃないんですか……?」


「いいえ。活性化状態ですと、これの五倍の数になりますね」


「ごっ」


「他のCランクダンジョンが活性化した際は、E王国の方々が対処しておりましたが……大体想像できるくらいの勢いですよ」


これくらいでヒイヒイ言われては、活性化状態のダンジョンに誰も対応できない。

E王国依存だろうに。

以前、魔過痛を起こしたが、それ以降は問題ないランディーは尋ねる。


「なぁ、おっさん。セドオアはまだ連れてけねーの? アイテムボックスは手に入ったらしいぜ」


「まだ駄目です。最低限Cランクダンジョンの難易度での自衛が出来ませんと……」


「え。別にいいじゃん。そんくらい。おっさんがいれば、セドオアが不慣れでも余裕だって!」


「その油断が命取りになりますから」


これは別に異世界に限った話ではない。

誰か一人に任せて、いざソイツがいなくなって職場などが機能しなくなったらどうしようもない。

仕事を引き継げる奴がいなければ無意味なのだから。


……さてと。

最後は予定通り午後三時手前にパーティを結成して渓谷方面にある風系統のダンジョンに向かう。

メンバーは俺とクリストフ、ポートに、ウェンディ。それとミディアを合わせた五人だ。

大人数なのは、こっちは素材回収の納品稼ぎだ。

ウェンディの場合、上手くモンスターを処理したものを俺の『クリーンウォーター』で作った保存液にひたし、一旦ギルドへ転送。それをモンスター食の研究所に渡す目的がある。


目的に反し、ウェンディはバリバリに前衛で活躍してくれるのである意味助かる。


「今回もこんなに沢山、食料化に下ごしらえ出来たモンスター肉を確保できました! これもポート君とジョサイアさんのお陰です!! ありがとうございます!」


「い、いえ。ウェンディさんも凄いご活躍されてますよ……」


と、若干引き気味にポートがウェンディを褒める中。

クリストフは場慣れしてきたようで、息が上がる頻度は減っている。

しかし、俺に相談する。


「あれからハインツと、あまり会話をしてくれなくてな……彼の父――ハンクシュタイン伯爵もクエスト失敗に怒りはなく、深く責任を背負う必要はないと言っているんだが」


俺に聞かれてもな……

一応、ミディアに確認してみる。


「ハンクシュタイン様の様子はどうだ。ミディア」


「攻撃の動作に無駄がなくなった。Dランクダンジョンで練習させて、それからCランクダンジョンに行かせても問題ない」


「いや、そうじゃなくてだな……」


他に気がかり、というか。

何故、ハインツがあんな無茶をしでかしたのか、俺は心当たりがあった。


「何かの文献で見たのですが、火属性の農民の最低基準にCランクダンジョンのソロ攻略というのがありましたね……」


ポートが「ええ!? あそこを一人で!!?」と素っ頓狂な声を上げる。

まあ、普通は無謀な話だが。

その位の対応力がなきゃ、火属性の農民の職場でやっていけないのが現実だ。

ひょっとすれば、将来的に悩んでいるって事かもしれないな……


「農民としての将来を歩むべきか、未だ悩んでいるかもしれませんね。彼は」


「ふむ、そうか……ありがとう。改めてハインツに話をしてみようと思う」


以上でW国内Cランクダンジョン全制覇完了。

昼食時間も含めて、約10時間ちょっとか。別にタイマー記録更新は目指してないから、そこはいいとして。

受付嬢が「お帰りなさいませ」と呆れ気味に言う。


「ジョサイアさん。流石にCランクダンジョンを全て調査……しかも、ここ最近、毎日やるなんてどうかしてますよ!」


「いえいえ。今の内じゃないと、当分Cランクダンジョンは調査できなくなるじゃありませんか。だから、熱をいれているんです」


「当分? できなくなる??」


「鬼人族の――精鋭の冒険者の方々が、Cランクダンジョンを巡るって話になってたじゃないですか」


「あ……そうですね。だからですか………ほどほどにしておいて下さいね?」


そう。

鬼人の冒険者にCランクダンジョンは譲られる。

Bランクダンジョンはともかく、Cランクダンジョンを巡れるのは今の内って事だ。

……あと、鬼人共は大酒飲みが多い連中だ。色々とギルド内が(器物破損的な意味で)荒れるだろうな。まあ、ある意味、俺の経験値稼ぎ所でもあるが。


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