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いいから全員、戦闘に集中だ!


翌日、遂にCランクダンジョンへ。

ランディーとミディアはいつも通りだが、クリストフとポートは緊張感を抱いている。

俺は事前準備と、事前情報を全員に話して置いたが。

「いつも通りだろ」とランディーは楽観している。

ポートは緊張気味で、精神面で不安を感じるが、それでも冒険者を目指す心意気は変わりない。


いよいよギルドから出ようとした矢先。

中年女性がギルドの前で、誰かが出て来るのを待ち構えていた。

あれは……ポートの母親だろうな。

これからダンジョンに入る直前で……パーティのモチベーションにも影響が出るじゃねえか。


ウンザリしながらギルドから出てると、ポートが「あっ」と声を漏らす。

そしたら、女は不安気な声で言う。


「あの! 貴方がパーティのリーダーの方ですか」


「……は?」


ポートではなく俺に話しかけて来た。

パーティのリーダーは、今回だとクリストフになるので奴が女性に反応しようとしたが、俺が静止するよう動作を行って。

女性に対し「どちら様ですか」と確認をする。


「私、ポートの母親です。今回、息子がダンジョンに入ると聞いて……不安で……どうか、どうかポートをよろしくお願いします!!」


厳しいが、残酷な事実を俺は女性に告げた。


「残念ながら冒険者がダンジョンに入る行為は自己責任となります。無論、パーティを組んでいる以上、息子さんと共に生存を心がけますが……その時はその時です。ここは他人ではなく、冒険者の道を志した息子さんを信じるべきでは」


「な、そんな……! ポート!! この人達と一緒に行くのはやめなさい!」


「ジョサイアさんとパーティを組むって決めたのは、僕なんだ!」


そしたら、普段ではありえないほどの大声でポートが言う。


「僕はジョサイアさん達を信用してパーティを組んだんだよ! お母さん!! ……僕達は、ダンジョンに往くから」


「……っ。ごめんね、ポート……頑張って」


感動の親子の絆を見せつけられているが、それよりもダンジョンなのだ。

ポートも母親にひっしり抱きしめられてから、慌てて「すみません!」と俺達と共にダンジョンへ向かう。

どこか緊張感があったのが消え去った気も、しなくもない。


だが……





まずはハインツが躓いた最初の道なりだ。

『杖の花』で光速マッピングを行う俺。奥より、モンスターたちがワラワラ湧き出て来ている。そこ先は二手に別れ、更に双方三手に別れ……という具合。

ダンジョン調査とはモンスターの討伐だけではなく、活性化具合、地形に変化がないか。出現するモンスターのランクに変化がないか……ダンジョン全てを調査する事でクエストクリアとなる。

場所によっては日帰りで終われない規模のダンジョンがあるらしいが、今回はそれほどの規模のもんじゃない。


魔力無力化させるモンスターはクリストフとミディアが担当。

ランディーと俺は後方から支援。

殿はポートが担当。


流石にダミーでの特訓あってか、クリストフは前衛としては問題ない立ち回りをしている。

ポートも殿より、周囲から湧いて出て来るモンスターの位置や数を叫ぶように教えてくれていた。

だが、ランディーが『杖の花』から電磁力を発生させ『スケルトン』の武具を引き寄せたが、そちらを担当する筈のクリストフは呼吸を整えている。


だがポートは自衛に徹底し、ミディアは別方角のゴースト相手に魔法を放ち、更には『グラウドッグ』の対応を励んでいる。

ランディーが「おい!? クリストフ!」と叫ぶが。

クリストフも息絶え絶えに「すまない」と謝罪を述べて、剣で体を支えている。

そうこうしている内に、スケルトンは武器に構わず単身で群れなし、クリストフに襲い掛かる。


俺が瞬時に杖から援護射撃でスケルトンを一掃。

クリストフに『杖の花』を飛ばし『ヒール』をかけて疲労回復させる。

ポートが対応している敵も片付け、俺は段々と怒声を飛ばす。


「ポート! 索敵遅れているぞ!! 四時方向から『グラウドッグ(黒犬)』5と『レクタースターチュ(銅像)』10!!」


「す、すみません!」


「クレジオ様は助けが必要なら大声でお願いします!」


「あ、あぁ」


「ライムバッハー様は援護だけでなく、余裕があれば敵を倒してしまって構いません!」


「いいの? じゃあ、倒すけど――」


「ミディア! そっちはどうだ!!」


「もう片付いた」


「なら四時の方角をやれ!」


無論、モンスターからの素材回収をしてはいるが、あいにくDランクダンジョンほど余裕もって、丁寧に回収できる余裕がない。

ポートの転移魔法陣に素材を放り投げ、ポートが手短に転送する。


俺が『シールド』で結界のような安全地帯を産み出せるが、長く持たない。

僅かに作れたポーションは俺自身が飲み。

ミディアたちは『ヒール』で疲労回復させていく。

全員、無傷なのは幸いとは言え『杖の花』で常時『スキャン』の索敵をしていなければ、気を抜けない勢いだ。

俺は他にもMP回復用の『エリクサール』を飲んだ。こいつを飲んだのは久方ぶりだ。A帝国で過酷労働を熟していた時以来だ。


ランディーが気だるい様子で言う。


「おっさん。ガバガバ飲んでるけど大丈夫?」


「全然大丈夫です。点滴しながら睡眠とってた時代よりは、よっぽど。他に異常はありませんか。特にこのダンジョンは状態異常を起こすモンスターが多いので、些細な事でもいいので教えて下さい。異常がなくともステータスを確認してください」


ミディアは「大丈夫」。ポートも「大丈夫です」と答え。

クリストフは「疲労があるが、まだ戦える」と言う。

そしたら、ランディーが溜息混じりに告げた。


「なーんかよく分かんねーけど、さっきから気持ち悪いんだよなぁ。ステータスには何も出てないけど」


おい、お前がか!?

ランディーの態度的に体調の良し悪しが分かりにくい。

気持ち悪いとぼやくが、顔色が悪い訳でもない……俺が『スキャン』を長くかけて状態確認すると、魔力の乱れがある。


(『魔過痛』か! よりにもよってランディーがか……チィッ! 残りもう少し……ポートに殿任せつつ、ランディーの様子を見て貰って。ランディーは後方待機だな)


念の為、ポートには俺の部屋に転移魔法陣を書いてくれ、そこから『魔過痛』用の薬を転移で呼び寄せて貰う。


「ライムバッハー様。症状は魔法の使いすぎによる『魔過痛』の初期段階のものです。こちらを飲んでください。薬を飲み干して貰わないと三日三晩痛みが続きます」


「ウッソだろ~……うげぇ、マッズ!」


先程、考えた陣形を各自に伝え。

残りの調査を完了してから、俺達は潔くダンジョン内から撤退した。

初挑戦ながら、全員がほぼ無償で済んだのは幸いの結果だ。


とにかく、今はダンジョン内の素材回収はいい。

優先するのは、W国ギルドに所属する冒険者たちがCランクダンジョンに慣れる事。できれば、今回のように無傷で帰還できるまで連携を安定させる事だ。


ちなみにランディーは、その後、『魔過痛』で一日寝込む事になった。

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