特訓×作製×清掃
「本気なんだろうな。母親にも伝えたのか」
「い、いえ。お母さんにはまだ……」
そこは言え! と俺が突っ込みたくなかったが、ポートからは本心で満ち溢れている。
「ひょっとしたら……ジョサイアさんの言う通り、勉強が苦手で、そこから逃げる為の口実になるんじゃないかって。自分自身分からないというか」
……俺も人の事、言えないからそれはな。
「でも、ジョサイアさんとパーティが組めずに、ダンジョンを諦めたら……何か、上手く言えないんですけど、後悔する気がして。たとえ、国家配達員になっても忘れられそうにないくらいに」
「……」
「だから! 自分自身で決めました。お父さんの事も恐れずに、僕は冒険者として生涯を尽くします!!」
「……分かった。だが、母親には言え」
「でも、お母さんはきっと……反対します」
「それでも言え。取り合えず、いつも通りミディア達と特訓をしろ」
「は、はい!」
親子関係がギクシャクなろうが隠し通せるもんじゃない。
優柔不断じゃ困るんだ。割り切って、真剣に話し合うべきって所だ。
さて、俺にもやる事がある。予定を振り返った。
Cランクダンジョンの準備だ。
今回向かう予定のダンジョンは前回撤退した闇系統のダンジョンになる。
闇、と聞いたら俺の十八番じゃないかと思われるが、案外そうでもなかったりする。
スケルトン系は盾や剣の武具を装備しているので電磁力で一気に身動きを封じられる。
ランディーの為に、術式を書き込んだ小道具を用意する。
闇の魔石に覆われた『マジックゴーレム』の表面にある鉱石をはぐ液体洗剤と。
とにかく、状態異常を連発するゴースト系統対策に、状態異常の耐性を付ける薬を作製。
俺自身、状態異常を回復させる『クリア』があるが、それだけで対応しては魔力が底を尽きる。
それとMP回復用のドリンク『エリクサール』と治癒効力を上昇させる薬と、ああ、あと砥石。
刃こぼれした際の応急措置。
後で、ミディアの剣を頼んだドワーフの工房にも尋ねて、ついでにそこの清掃と……
「特訓……特訓って、なんだ」
「!?」
あまり聞き覚えない声だと思い振り返ると、ハインツの姿があるので俺自身、驚いた自信がある。
気だるい態度を隠さずとも、適応武器になってる鍬を手にするハインツ。
将来をどう考えたのかは分からないが、このままでは駄目になる位、自覚したんだろう。
俺はポート達が行っている特訓の説明をした。
「あちらの広場にクレジオ様もいらっしゃいます。お声かけしては――」
「いい。……訓練は受けたいが」
「でしたら、同じ火属性の勇者に指導をお願いしましょう」
「勇者? はは……勇者か」
何故か浮かない表情していたハインツだったが、俺が呼んで来たミディアの姿に驚きを隠せずにいた。
「まだ子供だろ……勇者なのか?」
「ええ。彼女はミディア。職業は勇者です。これでもA帝国では元Aランクでして……上司に不満を申した事で降格してしまいましたが」
「やっぱりA帝国って変だな……」
ミディアはハインツの武器に注目して、ジロジロと観察した後。
「ステータスは」と無礼も構わず聞いたので、俺が「失礼がないようにしろ」と忠告挟んで説明した。
「魔法レベルは5に到達している。基本は鍬で前衛を担当している。……いいか、言葉使いには気を付けろよ」
「先輩、冒険者に身分なんて関係ない」
ハインツの武器を確認しつつ、ミディアは淡々とハインツに確認する。
「魔法は感覚でやれるの」
「あ、あぁ」
「じゃあ、私と同じ事して。鍬は大振りになりやすいから、魔法で補う」
問答無用に鍬を借りるミディアは特訓場ではなく裏手に出ると、そこでハインツの鍬に微弱な『フレイムアロー』を付与して見せる。
振り下ろす際、所謂、攻撃する際に『フレイムアロー』で速度を付ける事で、攻撃効率を上昇させる。更に言えば、魔法攻撃も同時に出来る。
ハインツが久方ぶりに肉体を動かしたせいでか、ぎこちない挙動で『フレイムアロー』付与の鍬を振るう。
多少、それを観察してからミディアが特訓用魔導書を取り出す。
「まずはⅮランクダンジョンの難易度。敵想定の使い魔が出て来るから、攻撃回避と倒して。慣れてきたら難易度をCランクダンジョンの難易度にする」
「あ、あぁ」
ダミーを使った特訓が始まったが、Dランクダンジョンの難易度でも、辛うじてな具合のハインツ。
戦線復帰には時間がかかるし……同行させるクリストフとも、何かいざこざあったのか。顔を合わせようとしない。
幸いにもポートの方は整っている。
今回の調査は、俺とミディア、ランディー、クリストフ、ポート。
以上で向かう事になった、




