いっちゃいなよ!そんなダンジョンなんか!!
ハインツにああ呼び掛けたが、果たしてどう動くのか。
何かを強制して、俺に責任を取らせるような形は勘弁だからな……
俺も俺で特訓を始めている。
ジャンのアドバイス通り、ヘルコヴァーラの杖を使えば使うほど性能が向上しているのを、特訓で実感できた。
ミディアに特訓用魔導書を起動して貰い、ダミーを四方だけでなく八方からも出現する難易度に挑戦。
これはBランクダンジョンの難易度か
だが……
ヘルコヴァーラの杖より放たれる光速解析と魔法が『杖の花』より一斉発射。
ダミーの中でもデカブツがいる。
俺自身に『ホーリークイック』を付与し、デカブツダミーの攻撃を回避、魔力を十分吸収させた杖で薙ぎ倒す。
そんな感じで、ノーダメージクリア。
魔力の消費量もまずまず……もう少し、俺自身がレベルを上げればBランクダンジョンのソロも行ける筈だな。
「先輩。どんどん強くなってる……」
ミディアは無表情ながら危機感を抱いてるのか、そんな事を呟く。
俺が「あれはダミー相手だからの結果だぞ」と一言付け加えるが、ミディアは激しく横に首を振った。
「一緒なら、AランクもSランクのダンジョンも余裕。私も先輩も冒険者機関に認められる。それが一番いい」
「あぁ、年間功績者だっけか。興味ねえな」
「先輩が誰からも認められないのは、ちょっと許せない。ううん、全然許せない」
どうも拗ねた態度のミディア。
女心は……全く分からん。
俺としての心配事は、別にあるってのに……それを誰にどう相談すればいいかも分からん状況だってのに。
面倒になるから、俺は別の話題に変えた。
「他の連中はどうだ」
「ランディーは相変わらず。腹立つけど、魔法陣の使い方は上手い」
ミディアが言うほどとは、相当だな。
本当に俺も嫌らしく感じるが、ランディーの腕前は上達している。
「あと、ウェンディがCランクに上がったから一応、Cランクダンジョンに連れて来れる。他は微妙。クリストフはついて来れるけど、疲れやすい」
「前衛だから仕方ないだろう……体力面か。ポーション多めに持っていけたらいいが、こういう時にアイテムボックス持ちが居ればな……」
「セドオアは無理」
「だろうな。分かってる」
前衛の負担を抑える為に、前衛を増やすべきか。
ミディアがいるとしても……やはり、もう一人前衛が欲しいのと。サポーターが一人欲しいところだ。
☆
俺達がCランクダンジョン攻略を目指していても、M国から冒険者の精鋭があらわれる未来は変わらない。
彼らがこのギルドに滞在する事が決まり、転職された貴族冒険者が利用していた部屋など含め、ギルド全体の構造を鬼人対応にする話が進んでいる。
その際、俺の修復魔法『リペア』を利用する事で大規模改造する事になった。
「……はい。では、構造は建築家の方に正式な設計図を描いていただいて。自分はその通りに『リペア』で構造修復致します」
「はぁ~、分かった! ジョサイア君がいてくれて助かったよ~!!」
話し終えたギルド所長と別れる際。
所長から、預けていた使い魔の事でこんな提案をされた。
「ジョサイア君! 僕、思いついちゃったんだけど~……この子たちって色々記録してくれるじゃない? だからクエストに同行させて、冒険者の皆の行動を記録して貰ったら。ホラ! クエストの報告書とかあるでしょ? あーいうの書く必要とかなるんじゃないかなって!」
……中々なアイディアだが。
俺は色々と所長に確認して貰う。
「ええと……まず、このギルドって国の管轄下にあるので、そこの許可がないと」
「あ、国の許可は降りたよ!」
早いな!?
なんでこういう類だけトントン拍子に進むんだか。
「じゃあ……機関の方はどうでしょうか。報告書を提出する事になる冒険者機関の許可です」
「え。あ、あー……そっちにも確認しなきゃ駄目かぁ~」
「駄目ですね」
「でも逆にそっちで許可降りれば大丈夫ってことだよね! そしたら僕達も大分、楽に……じゃなくてより良いギルドになってくるからね!」
はぁ、やれやれ。
肉体的に疲れてないが、謎に疲れが溜まるな……
所長が立ち去ったかと思えば、次は受付嬢が駆けてきた。
「ジョサイアさん! 緊急で申し訳ないんですが、特製ハイポーション……いえ! この際、ポーションの方でもいいので――」
「いいですけど。治療規模はどの程度ですか」
「B共和国のBランクダンジョンで負傷者多数発生して、重症者が十数名と聞いて――」
「状態異常を負っていなければ、これで十分でしょう。残念ですが、素材不足でこれ以上は作製できませんが」
「ありがとうございますっ!」
『ファミリアー』で自室から運んだ『特製ハイポーション』十数本、『特製ポーション』を数本を受付嬢に渡す。
ギルドの奥にある配達員の転送魔法陣のほうへ急ぐ受付嬢。
俺の『特製ハイポーション』のランクがAだったのに、受付嬢も俺の見方を改め。
どうやら『特製ポーション』もハイポーション並の効力と認知してくれ、需要があるとああして緊急現場に運ばれるようになった。
「ジョサイアさん!」
今度は何だと思ったら、俺に意を決して声をかけてきたのはポートだった。
随分と堅い表情で、真剣な眼差しをしている。
俺は奴と向き合って尋ねる。
「何しに来たんだ」
「僕―――………ダンジョンに往きます。改めて、ジョサイアさんとパーティを組ませて頂けませんか。お願いします!」




