別側面から実力を示すのは犯罪じゃない筈です
「成程! それは面白そうだ」
ジャンの研究所で、俺は『ウェストデリア国際博覧会』に派遣するW国の人材募集に、例の最新鋭使い魔を派遣する算段をジャンに持ち掛けていた。
使い魔に関してもあれから、魔導書の質と表紙にもひと工夫する事で改善に向かっている。
紙や表紙にヘルコヴァーラ並みの繊細な繊維で作製し、魔力の処理速度が向上した。
だた、繊細な魔導書を作製するにも技術が必要な訳でより高価なものになる。
また、使用するには『ファミリアー』が必須。
属性ごとに魔導書の価値が変わる。
とくに魔力速度が遅い属性ほど、価値は高価になっていく。
国際的な場という事もあって、ジョサイアは一つだけ叶いにくい要望をジャンに相談する。
「どうせなら……なんですが、全ての属性の使い魔を用意したいんです。光属性は私が担当できますが、闇属性で『ファミリアー』を使用できる方。ジャンさんはご存知ありませんか?」
「うーん……E王国には何人かいるかな。W国国内だと……心当たりはないかなぁ」
「そうですか……一応、役所の方にも確認して貰いますが」
「しかし、これが成功すれば魔導書と魔法陣の認識が世界的にも改められるかもしれない! いやぁ、使い魔用の魔導書の作製も、ジョサイア君の杖で思いついた発想だったんだ。とにかく、ジョサイア君の貢献は大きいよ!!」
「……? そうだったんですか??」
「ホラ! ジョサイア君の杖――ヘルコヴァーラの杖の魔力管を観察してたら、これを魔導書に活かせると舞い降りたのさ!!」
そうだ。
俺の杖――ヘルコヴァーラの杖の研究も続いていて、大分、いや相当だが杖の形状も変化が起きた。
雑に粗削りされてた部分は自然と曲線に。
先端に咲く『杖の花』に合わせた様な太さの柄になった。
『杖の花』も自棄にボロボロ落ちていると思ったが、俺の魔力に合わせて形状を整えようとしていたらしく、今では落ちる事がなくなった。
『杖の花』はシャンデリアを逆さにしたような形状で、俺の魔力で構成された魔石が銀の煌めきを放つ。
『スキャン』で解析すると――
ヘルコヴァーラの杖:C
物理攻撃:350 耐久度:500 魔法攻撃:150
素材:ヘルコヴァーラ(樹齢三年)
効果:魔力を吸収する事で物理攻撃力上昇、耐久度上昇
ランクも上がっているし、相当低かった魔法攻撃の補正も急上昇している。
これも杖の成長だとジャンは言う。
「杖は所有者の魔力の流れを感じ取って、必要でない魔力管を選定したり、逆に必要な魔力管を太くする。魔法攻撃が上昇したのも、君の魔力の流れを良くするよう杖が魔力管を調整始めた証拠さ。どんどん魔法を使ってあげれば、杖のランクも上がるし、魔法攻撃も上昇する筈さ!」
何より! と更にジャンが熱弁する。
「特性上、ヘルコヴァーラそのものの研究が進んでいないからね。それらに関しても様々な解明が進んだよ。ヘルコヴァーラの超吸収した魔力を自身の耐久性に変換する性質=生命エネルギーの貯えだったんだ。元々、ヘルコヴァーラが自生する地域は魔素の少ない乾燥地帯で……」
……まあ。要するにだ。
ジョンが魔導書に活かしたのは、ヘルコヴァーラの貯蔵処理。魔力の貯えだけではなく、使い魔の学習処理にも活かされている部分が術式を見れば分かる。
とにかく……使い魔の出展については役所にも申し出しておいたが、俺自身。何だかモヤモヤした気分だった。
使い魔は俺個人の趣味で術式を考案して、それ以外の術式だって、俺がオリジナルで改良したものばかり。
だけど、結局はあの糞神の意思に従っているじゃないかと。
アレに従ってないと面倒事になるかもしれない不安、よりかはコレが本当に俺自身の意思で行動しているのか不安を覚えている。
……疲れているかもしれないな、俺は。
ギルドに戻ると、平民冒険者が特訓用魔導書を起動して、ダミー相手に特訓している様子が見えた。
その中、ポートも混じっている。
ランディーと話し合って、ミスリル製のナイフに転送の魔法陣を付与しているポート。
ランディーが面白がって考案している。
「コイツをぶっ刺したところにポートの魔法を転送するんだよ。そしたら面白れえ不意打ちになるだろ!」
「な、成程。確かに、そういう攻撃の仕方もありですね……!」
「つーか。物だったら、なんでも転送できるんだろ? 上から岩降らせて足止めとかさぁ出来るじゃん」
「うわ……言われてみると……。Cランクのダンジョンで活かせるでしょうか……」
随分と熱心にダンジョン想定の話題で盛り上がっているようだが、アイツ……
俺と同じ事を考えてたらしいミディアが「先輩」と声をかけてくる。
「ポートは先輩のパーティに入れていくつもりなの」
「……国家配達員を目指してるらしいがな」
「勉強。全然してないみたい」
「………」
面倒くさいが、アイツにはちゃんと話しておくか……




