(威力が)デカすぎるだろ…
翌日、いつもルーティーンから始まる。
早朝は配達作業。
遅めの朝食を終えて『どぶさらい』、建設現場でゴンドラとトロッコの追加設置。
病院に薬品の納品。
それを終えて、ようやく討伐クエストを受注した。
受付嬢は「攻撃できない魔術師ですよね?貴方……ああ、やっと『ホーリー』を取得できたんですか」と呆れた対応をしてきた。
腹立たない訳が無いが、まずは『ホーリー』の実験と経験値稼ぎがてらEランク、Dランクのダンジョンに入ってからだ。
ダンジョン。
理屈はさっぱりだが、世界各地にはゲームによくあるモンスターが湧き出たり、アイテムが出現するダンジョンが点在する。
放っておくと、ダンジョンからモンスターが溢れ、外を徘徊してしまうので冒険者たちが定期的に巡回するのが義務だ。
さてと。
俺のいた世界では『ホーリー』は最強の光魔法なイメージがあるだろう。
だが、この異世界においてはステータスの魔法攻撃が高くなければ、俺のいた世界の理想的『ホーリー』のレベルに到達しない。
現在の俺のステータスは――
ジョサイア
職業:魔術師 Lv.8
属性:光魔法 Lv.10
HP:50/50
MP:1500/5000
物理攻撃:12
魔法攻撃:35
防御:5
筋力:5
俊敏:12
スキル
・ヒール
・クリーンウォーター
・シールド
・クリア
・スキャン
・ファミリアー
・クイック
・リペア
・ディスペル
・ホーリー
魔法のバリエーション豊富さに対し、ステータスがゴミ糞なのは仕方ない。
ステータスは職業レベルで増える。
職業レベルはモンスターを倒した経験値であがる。
つまり、俺は杖でスライムやホーンラビット、ゴブリンを撲殺しまくって、漸くこのレベルという。
一時期『撲殺魔術師』とか馬鹿にされてたな……杖が壊れて辞めたが。
Eランクのダンジョンに入り早々、液体状のモンスター・スライムが現れる。
「よし、まずは……」
『ホーリーボール』から試そう。
スライムは動きが遅いので、攻撃魔法の素人でも当てられる筈。
――ジュッ
当たったらスライムが蒸発したがな……
相手が駄目だったな。所詮はスライムだ。
次はポイズンフロッグ。中型サイズの毒カエルだ。毒の液体を吐いて攻撃する。
――ジュッ
いや、灰も残らんのだが。
「ギギッ!」
ゴブリン。
おっと、こいつらは群れで行動する知能が高い奴だ。
新米冒険者が洗礼を浴びることで有名だな。
使い魔の『ファミリアー』に『スキャン』を付与した偵察を向かわせると、やはり隠れてるゴブリンがいた。
『ファミリアー』と『ホーリー』、『スキャン』、加速魔法『クイック』を組み合わせた追尾型ホーリー弾。
少々魔力は食うが『クイック』で加速した攻撃からは、ホーンラビットの俊敏さを持ってしても回避が困難。
確実に仕留められる……
ドゴン! ドゴン!! ドゴン!!!
おい!? 小型爆弾みてーな威力してんな!!!
「どういうことだ!? 俺の計算が間違ってる……!??」
不味い不味い不味い!
何が不味いって……案の定、ゴブリンたちは灰も残らず死んでて、俺は職業レベルが上がっている。
やっぱ、討伐部位が残らねーじゃねぇかッ! 意味ねぇ!!
経験値は溜まっても、ギルドの功績が溜まらねぇ!
待て待て待て!
俺は再度計算をしようとしたが
「ん?」
何らか不穏な足音が聞こえるので、『ファミリアー』を偵察に向かわせると。
奥の方にDランクモンスター、オークがいた。普通はいない筈。いや、偶に少し上のランクのモンスターが湧く事もあるな。
放置は不味い。
新米冒険者がオークを相手にできる訳ない。ギルドには一応報告しておくとして……
俺は強力な水弾『ホーリーカロン』を『クイック』で加速させ、衝突威力を高め、オークのいる方角へ放つ。
「ォ」
メキメキメキィ!
……なんつーか。アレだ。水弾の威力で全身骨折、臓器破裂した音が聞こえる。
少し遅れてホーリー特有の派手な白き爆発が発生。
オークがいた場所は隕石が衝突したかの如く、陥没していた。
「って、討伐部位!」
オークの死骸も残っていないんだが!!?