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バッカじゃねえの?


……バッカじゃねえの?


俺が受付嬢に、食材運ぶついでに新聞記事も要求しておいた。

その最新記事を読んだ感想がこれである。


例のスタンピードの動向など、周辺諸国の動向を警戒し続けている俺。

最新記事でA帝国が馬鹿やってるのを散々に書かれて、その真意も俺は理解した。


恐らく、A帝国の狙いは冒険者の淘汰。

冒険者の失態を派手にさせる事で、冒険者の信頼を落とし、最終的に「冒険者ではなく魔道具に任せればいいのでは」と結論づけて欲しい。

そんなところだろう。


冒険者の存在意義云々は「強い冒険者は国の騎士団に所属した方がいいのでは?」などなどの討論を経て、終息したのを、まーた別側面から掘り返そうとしている。

世界冒険者機関が黙っちゃいねーし、世界中からバッシングされそうな事を起こそうとしてやがる。


「う~ん! いつ食べても美味しいー!!」


「コレ食わなきゃ一日が始まった気になれねーよなっ」


新聞記事など目もくれない平民冒険者は、呑気に朝食を食べている。

ここ最近から朝食は俺担当ってのが定着した。

運ばれてくる食材で色々作って、バイキング形式にしている。

中でも主食のフレンチトーストが人気だ。ここは異世界なのでフレンチトーストという名称ではなく『フォールファースト』と呼称されてる。


一段落済んで、俺も片隅で新聞を読みつつ、朝食をとっているが……


「ジョサイア! お前の特性ポーション四本頼んだ!!」


「はい。部屋の前に置いておきます」


「ジョサイアさん、そのぉ……衣服が虫に食べられちゃって……」


「修復しておくので置いといて下さい。あとで衣服の虫除け――防虫効果ある薬草袋を部屋の前に置いておきます」


「なんかさぁ! 水が出て来なくなっちまってさぁ」


「あとで修理に伺うので」


「ちょっとジョサイア。リーナの部屋、直してくれる――」


「男性に見られたくないものとか、あるでしょうから。それを運び出したら全てやっておきますとリーナにお伝え下さい」


朝食の時くらい静かに食わせてくれねーか。おい。

異世界のコーヒーもどきの飲み物を口に含んで、一息ついてたら。

まーた、誰かが……今度はポートが血相変えて走って来た。


「ジョサイアさん! ちょっと大変なことに……他の方々が僕達が受注したクエストを引き受けさせろって!!」


「はあ、なんだそりゃ……」


仕方ないのでフレンチトースト兼『フォールファースト』を咥えながら、俺はギルドの受付に向かった。





「……全然話しかけられない。むう」





「平民共! 近頃調子乗ってるようじゃねーか」


「ダンジョン調査の担当はな! 平民じゃなく貴族の俺らなんだよ!」


「僕達がちょ~っと()()してたのをいいことに、困るね! 勝手なことをされちゃ」


どうやら、貴族の冒険者共全員がボイコット状態らしい。

面倒事を避けてたら、自分たちより平民の方が目立ってきたから気に食わなく思ったんだろう。

……まあ。Cランクダンジョン以外は活性化の兆しがないからいいとして。

俺は『フォールファースト』を飲み込んで尋ねた。


「では皆様、ダンジョン調査をして頂けるんですね? でしたら非常に助かります」


なんて言われたら怒声も勢いが弱まった。

俺は話を続ける。


「ダンジョン調査というのは通常、毎日行わなければならない。冒険者にとっては重要な義務任務のようなものです。我々平民だけでは、一日で全てのダンジョンを調査する事が困難でした。皆様のご協力があれば更に調査も捗り、国の平和も保たれるのです」


A帝国冒険者なら余裕でダンジョン十周するけどな。

良い所を述べ終えたところで、俺は一つ聞く。


「しかし、皆様がダンジョン調査を行うとなると……モンスター討伐や採取の依頼は我々が?」


「な、馬鹿言うな! それも私達がやるぞ!!」


ここで割り込んだのが受付嬢だった。


「無茶苦茶な事を仰らないで下さい! この地図をご覧ください!! ギルドから離れた距離にあるダンジョンを行き来するだけでも体力を必要とするのに、調査を行って更にクエストなんて……無理があります!」


「そこの平民は一日何回もダンジョンに行ってるぞ!」


「ジョサイアさんは、その、熟練の冒険者だから出来るのであって……」


「我々はやれると言っているのだ! さっさと手続きをしろ!!」


受付嬢も結局、気圧され、ギルドの所長まで出張って頭下げて。

結局、俺達が向かうダンジョン調査は別の連中に回ってしまった。残されたクエストも、いつもの雑務ばかりになった。


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