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少女来る


出国から約一週間。

赤髪ツインテールの少女が向かう方角がE王国――正確にはW国だったのが幸いして、大量廃棄された魔道具を発見した。

どれも乱雑で適当に置かれ、周囲の草木が魔道具の何等かの影響で腐食状態にある。

赤髪の少女は火の感知魔法を発動した。


「……『熱感知(ヒートセンサー)』」


結果を見て、少女は少々関心する。

微弱だが魔力以外の熱を感知できた。廃棄魔道具の内部に小さな道具が忍ばされている。

ジョサイアのいた世界で言う『盗聴器』と呼ばれる類の道具。


どうやら、わざと適当な放置をしE王国に回収させ、内部情報を収集。

しかし、微弱な熱があるだけで魔力は感知できない。A帝国の最新鋭技術によるものなのか。恐らく魔力感知で引っ掛からなければ、エルフの検問も突破できるだろう。

少女は感知で発見したその『盗聴器』を捻り潰す。


「こんな大きな道具……これを作るコストの方がよっぽど()()。何より『先輩』をクビにしたのも()鹿()


所謂、八つ当たりだった。


だが、潜伏していたらしいA帝国の部隊が黙っておらず、数名が少女を取り囲み。

潜伏していた運搬魔道具が先行して逃走する。

しかし、先程の『ヒートセンサー』で少女は彼らの存在をとっくに捕捉していた。他にも潜伏している魔道兵器が数台、カモフラージュされた状態で周辺に待機しているのも。


「『フレイムピラー』」


これは火魔法の『フレイムアロー』の変則型だ。

『ヒートセンサー』で感知した魔道具兵器の位置に的確に魔法陣を展開。地面から通常の十倍の威力と速度を誇る『フレイムアロー』が放たれ、そこそこ重量ある魔道具兵器のどれもが吹き飛んだ。それらの魔法は最早『フレイムアロー(火の矢)』ではなく『フレイムピラー(炎の柱)』。

威力を高める調整などの術式は、魔法陣が得意な少女の『先輩』によって発見されたものである。


呆気にとられたA帝国の兵士だったが、直ぐに調子を取り戻す。


「馬鹿が! あれは魔力を無力化させるモンスターの素材を合成した特殊な金属で製造された最新鋭兵器だ!! あの程度で壊れる訳――」


ドゴォン!


派手な効果音立てて落下していく魔道具兵器たち。

急落下したことによる衝撃で、どれもが凹んだりひっくり返って動けなくなったり、内部では操縦者が押しつぶされてたり……ある程度、走れるように一部軽量化した部分に衝撃を受け、操縦者席まで炎が押し入り爆破したものまで。


つまり、魔力対策はしてても耐久度諸々が甘かった訳だ。


その結果を唖然として見届けた兵士たちの隙を少女は見逃さず。『フレイムアロー』で的確に頭部を狙い撃ち。


「……『フレイムジャベリン』」


最後に逃走していた運搬魔道具を『フレイムアロー』を速度強化した魔法で撃ち燃やした。





死闘が終わり一時間後、赤髪の少女の視界にW国の明かりが広がった。

それくらい日が暮れている。

まずは、ギルドへ向かおうと少女は思う。


ギルドがあって、A帝国出身者を謙遜しないであろう国は数が知れている。

W国はその候補の一つ。

少女はここに『先輩』がいるのではと目星をつけた。


しかし、調べる間も無く出国手続きをしていると職員から、こんな話をされた。


「A帝国出身者ですか? なんかそれっぽい雰囲気というか。国民の皆様全員、貴方のような感じなんですかね? 入国されてるA帝国の方も――」


「!? それ、どんな人」


「若いのに白髪交じりで老け顔の男性でしたね。あれで二十歳ってのは正直驚きましたよ」


そんな特徴、少女の知る『先輩』で間違いない。

個人情報をベラベラ喋る職員は問題だが。

『先輩』が無事にW国へ入国出来た事に少女は安堵し「良かった」と呟く。


手短に入国手続きを済ませ、早速ギルドへ向かった頃には、もうギルドが閉まる間近だった。

受付嬢が少女の申請手続きを済ませてくれるや否や。

少女は唐突に問う。


「ジョサイアって人、どこにいるの」


「え? あ、A帝国の方ですからジョサイアさんとお知り合いだったんですね。ええ、ジョサイアさんはここに所属されてて、最近相当なご活躍をされてるんですよ」


そんなの当然。

A帝国なんかじゃなく普通の国だったら、こうなる。

以上が、少女の抱いた感想である。


今日はもう遅いから明日、挨拶されてはと受付嬢に言われ、今日のところは少女も体を休める事にした。

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