お前は魔法陣の凄さを分かっていない
衣服類のクリーニング、整理整頓ができない汚部屋の清掃、使い魔を使った新聞などの配達……
おっと。忘れちゃいけないのは、ギルドのクエスト。
俺のギルドランクはCだが、攻撃魔法の使えない魔術師にCランクモンスターの討伐クエストなんて無謀。
ほとんど、低ランクの雑用クエストの残りもの処理、運良ければDかCランクの採取クエストだけやっている。
追放されるのも時間の問題だ。
さて、多くは疑問を抱くだろう。
コスパを良くしても、魔力は尽きないのか?と。
問題ない。
光属性は攻撃手段が少ない分、魔力量だけは豊富。
更に職業が魔術師だから尚高い。
更に更に一日三回、魔力薬を飲んで魔力回復。
睡眠中も独自に配合した点滴をつけ、魔法陣を通して魔力を送り続ける。
これだけやっても駄目か……
俺が手を出してない残る相手は富裕層だけ。
だが、連中が移民の奴を信用し、雇ってくれるとは思えないうえ、王族と直接繋がりがある名家も混じっている。逆に何か嫌がらせを受けそうだ。
……こうなったらA帝国から出国するか?
この異世界における帝国への進出=上京みたいな出世ステータスがあったんだが、住めば住むほど、帝国そのものがガバ多い無法地帯のブラック職場のテーマパーク状態だった。
無法地帯過ぎたので「お、丁度いい位の経験値の稼ぎ場があるじゃねーか」なノリで、経験値稼ぎしたら、もうやれる事がない。
『どぶさらい』の次に稼げる壁の建設が終了したら、いよいよだな。
冒険者だけに固執するならA帝国以外のギルドに所属したって構わない。
そう思った矢先だった。
久しぶりに聞いた天より響く特徴的な音色と声。
―――光魔法のレベルが10になりました。
―――『ホーリー』を取得しました。
俺が半信半疑でステータスを確認できる半透明の窓を出現させ、文字を目に通し、認知したことで雄たけびを上げた。
「おっしゃああああああああああああああああああ! これからだああああああああああ!!」
一か月後……否! 一週間以内に戦闘慣れするぞ!!
☆
俺はギルドの宿舎の自室で、以前から研究していた『ホーリー』の魔法陣を再度確認、頭に叩き込んだ。
球体状に成型した魔法陣を宙に出現させ、その中央に光魔法のエネルギーが発生。
これが『ホーリー』……を球体に留めてる奴。
使いやすいように火魔法の『ファイヤーボール』を参考にした『ホーリーボール』だ。
消費魔力は5。
計算上、威力はEランクモンスターを一撃程度。
威力の低さは魔法レベルのせいだ。レベルが上がれば上がるほど威力は高くなる、筈。
洗浄作業でよく使う『クリーンウォーター』と『クイック』を組み合わせたウォータージェット。
誰もが「威力高めたらウォーターカッターが出来るじゃん?」と考えるだろう。
これが出来ない。
『クリーンウォーター』自体が攻撃魔法ではないからダメージに換算されないらしい。
しかし! 『ホーリー』を組み込めば……飛ぶ水斬撃『ホーリースラッシュ』になる。
消費魔力は15。
計算上、威力はDランクモンスターのドスイーグルは一撃の筈。
更に『クリーンウォーター』と『ホーリー』を組み込んだ強力な水弾『ホーリーカロン』。
消費魔力は30。
こいつは硬いゴーレム系のモンスターを想定して編み出した技。威力も高い。
……以上を含めた魔法陣の再確認は終えた。
残るは実戦だけ。
なんであれ攻撃魔法があれば、モンスターを倒せる。討伐クエストも受注できる。
俺はこれからだ。
今に見てろよ、ギルドの屑共。