ダンジョン調査をやめるな!
ここ一週間、ランディーに魔法陣の勉強をつけるようになってから、ギルド全体が大改革した。
まず、俺とランディーだけではダンジョン調査が出来ない訳で、その穴埋めに平民の冒険者を二名同行させた。
その方が俺自身、平民の冒険者らからヘイトを買わないし、彼らも満足させられる。
なのだが、肝心の連中はダンジョンへ行きたいと大口叩く割に、ダンジョンどころか戦闘も初心者ばかりだった。
しかもダンジョン調査の翌日には、筋肉痛という情けなさ。
取り敢えず、ダンジョン調査に順応させ、筋肉痛にならないよう順番に同行させていく事に。
「あ~~忙しい忙しい。今、郵便局に資料を届けたよ」
慌ただしくギルドの所長が行きすぎると、受付嬢は更新された地図を見て溜息漏らす。
「まさか、こんな事になっているなんて」
こういう事になりうるからダンジョン調査は必須なんだよ。
俺達がダンジョン調査をした結果。
Eランクダンジョンが三か所の内、二か所が消滅。逆に新たなEダンジョンが一か所と、Dランクダンジョンが二か所出現。更に元Dランクダンジョンが二か所、Cランクダンジョンに昇格。
最終的に、現在のW国周辺のダンションは
Bランクダンジョン一か所。
Cランクダンジョン三か所。
Dランクダンジョン四か所。
Eランクダンジョン二か所。
先程の所長が届けに行った資料は、更新されたダンジョン情報を国民に知らせる為、配布されるものだ。
受付嬢が困惑を隠せない感心をしている。
「ダンジョンが消えるなんて事、あるんですね……」
クエスト受注の為にカウンター近くで待機していた俺が答える。
「ダンジョン出現初期段階ではよくある事ですよ。しかし、警戒するべきはCランクに昇格したダンジョン二か所です。昇格するダンジョンは更に昇格する傾向が高いですよ」
「まさか、Bランクダンジョンが二か所とか、三か所に!? それは――」
「近頃、皆さんが一団となって練度を上げています。このままのペースでダンジョンに順応して頂ければ、CランクやBランクダンジョン余裕で対応できるようになりますよ」
「そ、そうですか。ジョサイアさんがそう仰るなら安心です。あっ、あとE王国からBランクダンジョンの調査資料が届きました。頼みましたよっ、ジョサイアさんに言われた通り」
やっとか。
むしろ、普通にそれをやって欲しいんだが。
簡易的に説明すると、Bランクダンジョンには活性化の兆しはなし。定期的に向こうのギルドが調査しているらしい。
……他の冒険者の練度を踏まえても、ここは当面E王国に任せるしかないな。
だが、最終目標はBランクダンジョンの調査だ。
Bランクを四人で攻略するのは厳しい。練度を積んだ冒険者たち――つまり、平民冒険者ら全員とランディーたち全員合わせて攻略する。
平民冒険者たちにも、その目標を伝えると奴らは自然とやる気になってくれた。
夢見るロマンシストな異世界人なだけあって、Bランクダンジョンへ自分が挑むのは心滾るんだろう。
改めて受付嬢は今回のクエストを口頭で述べる。
「本日は山脈方面にあるEランクダンジョン調査。系統は土属性。植物系モンスターが多く出現します。こちらでお間違いありませんか」
「はい」
ここにはゴーレムとかの素材狙いじゃなく、他冒険者の練度目的だ。
俺自身の経験値?
ああ、それに関しても妙で試行錯誤中だ。というのも――
ジョサイア
職業:魔術師 Lv.30
属性:光魔法 Lv.20
HP:500/500
MP:34000/42000
物理攻撃:150
魔法攻撃:514
防御:20
筋力:20
俊敏:53
これが現在のステータスだが……今まで、俺のステータスの変動を見て分かるように変過ぎる。
極端というか、上昇数値に法則がない。
基本的に魔術師は物理攻撃が伸びないと聞くのに、俺だけ自棄に伸びてる。異様だ……少し心当たりはなくもないが。
「おーい、おっさん! 用意できたぜ。やすもんだけど」
そこへランディーが声をかけて来る。
奴が見せつけたのはミスリル製のナイフ数本。
「こんなんで大丈夫?」
「問題ありません。重要なのはミスリル製であることです。ミスリル製の方が普通の物体より多くの術式を描き込めます。より複雑な魔法が発動可能です。今回は同行する火属性の剣士の方のサポートをして貰います」
「へー? どうなるか全然予想できねーわ」
遅れて今日同行する火属性の剣士の青年と、土属性の治癒師の女性と合流した。
この二人は、今回がダンジョン初らしく緊張気味だ。
Eランクダンジョンだから気楽に行って問題ないってのに……気楽に行けるのはEとDだけでもあるが。
むしろ、問題はこの後――
受付嬢が俺に尋ねる。
「あ、あと……本日の午後からCランクダンジョンへ向かわれるのは、本気ですか?」
「ええ。それには俺に加え、クレジオ様達が同行いたします」
「わ、わかりました。お気を付けていってらっしゃいませ」