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そういう魔法じゃねえからこれ!


俺が作製したのは『ナトカリの葉』など数種類の植物の油脂に『クリーンウォーター』をぶち込んで完成する液体洗剤だ。

こいつでゴーレムを洗い流すだけで、ゴーレム本体を覆う鉱物が剥がれ落ちてしまう。


そもそも、ゴーレムは軟弱な本体を守る為、周囲を鉱物で覆い、己の魔素で独特に硬化させるモンスター。

なんで、隙間から液体洗剤を流し込むんでしばらくすると、剥がれ落ちてしまう。

ただまあ、これが通用するのは下級・中級のゴーレムだけ。

『キングゴーレム』のような全身鉱物化した奴には、別の対処法が必須だが、それはいつか説明しよう。


とにかく、だ。

鉱物が剥がれ落ちた粘着質な体質のゴーレム本体は、慌てて鉱物で体を覆う為、必死になって逃げ惑ったり、鉱物へ駆け寄ったりする。

鉱物がない分、結構素早いので仕留めそこなう事も多々ある。


ランディーと俺の魔法は速度が優れているので、本体を狩りまくっている。

ゼムは俺の『クイック』で速度上昇させ、一体一体着実に仕留めていた。


「うおおおお! またレベルが上がった!! こんなゴーレムの倒し方あったのかっ!」


興奮気味のゼムだったが『クイック』の強化時間が終わると、途端に悲鳴を上げた。


「い、いたたたっ!? お、おい、ジョサイア。頼む『クイック』をかけ直してくれ……」


「駄目ですよ。それ以上は体を壊します」


ポートに関してもそうだ。

俺とランディーがサポートして、何体かゴーレムを倒し、ある程度レベルを上げさせつつ、ギルドにゴーレムの岩片を転移し続けていたが、頭をかかえている。

過度の魔力使用による頭痛『魔過痛(まかつう)』の症状だ。


俺はまだまだいけるが、他がこの状態では駄目だ。


「ポートとゼムさんの帰りの体力を考慮して、今日はここまでにしましょう」


申し訳なくポートが「すみません」と顔色悪くし、ゼムもうんざりするような疲労の溜息をついた。

一人、ランディーは鉱石を電磁浮遊で運んできて「え。もう帰っちまうの?」と残念そうなリアクションをしてきた。


ポートとゼムは満身創痍で、俺の『シールド』と『ファミリアー』を組み合わせた自動式トロッコの中で項垂れていた。

体力的に疲労感はないランディーは、トロッコでダンジョンの帰路を駆け抜ける中。追ってくるコウモリに似たモンスター『くびれバッド』をカードで射撃して、暇を弄んでいた。

ランディーにとって、ダンジョン攻略もゲーム感覚で楽しんでいるのだろうな。


そしたら、奴はこんな提案してくる。


「なぁ、おっさん。俺に魔法陣教えてくれよ。金払うからさ!」


急にどうした? と言わんばかりのノリようだが、案外夢中になってきたら、とことんいけるタイプなのか。

しかし、今回の鉱石を換金すれば金なんてどーでもいい位に稼げるんだよな。

()()()()()()()


なので俺は言う。


「でしたら……金はいいので、またダンジョン調査やモンスター討伐の依頼を受けて貰えませんか。ステータスを見て分かるように、私はレベルも冒険者としてのランクもまだまだなので……」


「えー。マジで言ってる? 後で文句言うなよ?? おっさん」


仕方ないだろ。

貴族に媚び売らないとダンジョンにも入れねぇんだ。

むしろ、こっちの方が俺にとっちゃ将来的にも重要なんだよ。


そんなこんなでギルドに帰還した矢先、例の受付嬢の悲鳴に場面が戻る。


「す、凄いですけど! こんなに素材があっても困ります!! 置き場も引き取り先もないのに……」


ポートが転移した鉱石・鉱物の量に、通りすがりの冒険者たちもザワザワと騒がしくしている。

当の本人も「こんなにやったんだ…」と呆然気味である。

俺は受付嬢に答えた。


「置き場はともかく引き取り先には困らない筈ですよ」


「え、ええ?」


そしたら、タイミングよくある人物が大量の鉱石を見て歓喜を上げた。


「ワーオ! こいつは助かる!! 『エドラル鉱石』に『ピルーア水晶』! おっとこれはゴーレムの!?」


ソイツは貴族の住居建築に携わっている人間だろう。

案の定、ソイツは困惑している受付嬢に頼みこんで来た。


「ちょ~~ど、ギルドに鉱物採取の依頼をしようと思ったんだが、これだけあれば十分! いや、この先また素材がなくなっても任せられる! 取り合えず、ここにある鉱石全部欲しいんだが――」


「全部ですか!? しょ、少々お待ちください!」


貴族連中が移住しに来てる事、ソイツらは木製なんて安易な素材の住宅を望んでいない事。

事前に仕入れた情報から推測し、俺が狙った通り、鉱石は需要素材として即座になくなってしまった。


次回は久々のA帝国視点の話になります

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