そんな都合のいい話があると思うのか?
……おい。
目覚めの悪い起床をした俺は、何とも言えない心情だった。
確かに分かっちゃいたが……いたが………あの、名前がよく聞き取れない、ブ……ブ、ブルツーム?とかいう糞野郎。
人の心ってのが――いや神だからねーのか。
それにしちゃ糞過ぎるだろうが! なんだアイツは!!
調査し終わったら新たに転生しろとか、最高に理解が追い付かない。
一方的に話を押し付け、嵐のように過ぎ去った出来事。
悪夢の一種であれば幸せだったが、残念ながら俺自身が悪夢ではない事を理解している。
冷静になる為にも、軽い清掃と朝食の準備を始めた俺。
まぁ、そんな都合のいい話がある訳ないと分かっていた。
前世で非業の死を遂げたら、別世界に転生して、ハッピーになれました……って陳腐な話。一体何百何千あると思ってるんだ。
むしろ、何等かの理由があって転生した方が腑に落ちるというか。
何の意味もない神様の気まぐれだとか薄っぺらい転生理由の方が納得できない奴が多い……いや、今回のケースも、強ち似た動機か。
だけど、生ハム並に薄っぺらく、味の無い理由よりかはマシに感じるのは、俺が糞野郎の落とし子が故なんだろうか。
自身の価値観も懐疑的になりつつある。
しかし……調査。調査ねぇ。
例の交信が真実だとして、冥府神がなんで惑星の実態調査に積極的なんだ。
冥府神ってあれだろ。ハデスとか、サタンだとか……ああ、いや、サタンは悪魔か。まあ、なんでもいい。とにかく死後の世界を支配する神で、現世に関心を持ったところで……じゃねえのか。
人間だから細かい所を気にしないと思われている可能性もありうるな。
「……最初はこんなものだな」
冒険者どもに俺が要求したカーテンなどの布類の洗濯を終えると、俺は整備した菜園で薬草の葉の裏から滲み出る液を回収。
こいつがポーションの原液になる。
ポーションの原液と『クリーンウォーター』とを調合した特製ポーションを十数本だけ完成させた。
菜園に植えた他の薬草の成分を調合すれば、更に効力あるポーションを製造可能だが……薬草の成長具合を見るに、まだまだ先の話だ。
一先ず、ギルドの受付でポーションの納品をしておく。
こういう活動も冒険者としてポイント加算されるのでマメにやらねぇとな。
すっかり、顔馴染みになった受付嬢は、俺が納品したポーションを見て複雑な表情を浮かべた。
「え……これ、ジョサイアさんが作られたのですか……?」
「はい。裏にあった菜園の薬草を使わせていただきました」
「そ、そうなんですか」
「……あの、どうかされましたか?」
「いえ。その、私『鑑定』スキル持ちなのでポーションの品質が分かるんですけど……」
「低品質過ぎましたか」
「う、うーん。良くも悪くもない『C』ランクの品質ですね……」
「ここでは高品質なポーションしか納品を受け付けない、と」
「い、いえ! ここで余るようなら他の需要があるギルドに渡す事も可能なので問題はありません。ただ……ジョサイアさんが作る割に、低ランク過ぎて驚いたというか」
……何いってんだ、コイツ?
光魔法の使い手なんだから大物に違いないと過度な期待をしてるのか??
期待されても肩透かしになるんだから、無駄だってのに。
しょうがない。別のギルドでダンジョンに潜って稼ぎまくるまでの辛抱だ。向こうは勝手に期待するだけしておけだ。
俺は昨日予告した通り、書庫の清掃にとりかかった。




