やめとけやめとけ!あのギルドの評判はよくないんだ
昼食後、俺は残りの仕事を片付けた。
途中、街中で遠目ながらクリストフ達の姿を確認できた。
先程のパーティメンバーにはいなかった中肉中背の赤髪の男が一人、加わった状態で。
恐らく、奴がハインツ。
雰囲気的に意気投合しているようで、円満なのが分かる。
話を聞く限り、アイツら全員が同級生っぽいし、顔見知り同士だから隔たりは少ないんだろう。
やはり、俺がいなくても問題ない。
この世界で発生する事態は、大体そんなものばかりだ。
さて――俺は町中で副業もどきの修復・清掃活動をしながら、聞き込みを行った。
例のギルドについて、である。
すると、疑問は解決された。話を聞けば、誰も彼もがこう口を開く。
「あのギルドに所属するのだけはやめとけ、やめとけ! 冒険者として活躍したいなら、別の国のギルドに所属しな!!」
「一応、理由を聞かせて貰っても?」
「うーん。そうだな。あそこは国が関わってる事もあって、サポートが手厚いのは確かなんだが。如何せん、クエストのほとんどは国が面倒で対応しない雑用ばかりだ」
「俺は貴族の方々の臨時サポートとして、モンスター討伐のクエストを受注できましたが……」
「あー。そのやり方なら受けられるな。モンスター討伐やダンジョン調査のクエストは、全部貴族連中にまわっちまうのさ」
成程な。
俺はある意味、運が良かった方か。
ギルドの糞さを理解したその後の動向は、人それぞれだ。
資金に余裕ある奴はギルドを辞めて、さっさと出国。
資金がない奴もギルドを辞めて、他の職でアルバイトし、金を稼いでから出国。
ギルドに居座ってる平民の冒険者たちは、地道にクエストをこなせばランクも上がるし、モンスター討伐やダンジョン攻略もできると信じて疑わないらしい。
貴族共に功績を奪われている以上、そんな日は来ないと言うのに。
ちなみに。
この国に移住してる連中のほとんどが各国の貴族。
狭いギルドで過ごすより、自分で家を建ててしまった方が快適だからと大移住時代が裏で繰り広げられる。
つまり……意外(?)だが、あのギルドに所属する貴族は結構な数になるそうだ。
W国の現状を把握した俺は、もう一つ尋ねた。
「ちなみに、国からの依頼とは具体的にどのようなものでしたか?」
「ん? ホントーに大した事ないもんばかりさ。人手が足りない荷物運びとか、住人の悩み相談とか」
「国に関わる重要なクエスト、というのは一切ない訳ですね?」
「ないっつーか。重要なもんを冒険者に任せるか?」
「ああ、いえ。偶にあるものですから、念の為です」
尋ねた男から頼まれた物の修復を終えて、別れてから俺は悩む。
普通だと国家に関わる重要なクエストを冒険者に任せるのはよっぽど切羽詰まった時だけだ。
しかし……俺は『光属性』。
珍しい属性。しかも、回復に特化した『光属性』だからと依頼が来るかもしれない。
自意識過剰だ?
……実際にA帝国時代にもあったんだよ。
『光属性』だからって理由で、国からご指名の依頼が。
だけど、俺が治療師じゃないと知るや否や、あれこれ一方的なクレームを吹っ掛けて、一銭も払わずに帰れと追いはられる始末。
これがクエスト受注前にやられるならともかく。
クエスト受注完了し、現場についた矢先にやられたからタチが悪い。
ジョブの事は事前に知らされていないのか?
光属性ってだけで安易に指名されるのか?
把握しておけばトラブルにも、ならないような事じゃないか。おかしいだろう。
……なんて突っ込みが聞こえる。
でも、あるんだよ。
馬鹿馬鹿しい可笑しな話が。