表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/101

一方、A帝国では(2)


「は~、終わった終わった!」


「お疲れー」


A帝国に所属するCランクの冒険者パーティが、ダンジョンの巡回クエストを終え、帰還していた。

剣士、盾兵、治療師、魔術師。

この四名に加え、()()()サポーターがいた。

コスト削減政策により彼らのサポーターは解雇されてしまったが、彼らは口々に言う。


「コストカット最高! あの鬱陶しいサポーターをクビにしてくれてスッキリしたぜ!!」


「ほんと、サポーターなんていらないのにね」


「モンスターの死骸処理とか、別にしなくたっていいのに。毒素がどーとか騒いでたけど、他の皆が死骸放置しても平気だって言ってるのよ?」


彼らは冒険者にも拘わらず、モンスターの死骸処理の重要さを理解していない。

サポーターが説明しても聞く耳持たないし、彼らの周囲ですらサポーターに死骸処理を任せていたのだ。


唯一、盾兵だけがヒイヒイと悲鳴を漏らしながら鈍足に彼らを追いかけていた。


「ま……待ってくれ! ゴーレムの破片を運ぶの手伝ってくれよぉ~!!」


「自分でこのくらい余裕だって言ってたじゃない」


「私達だって魔石とか討伐部位とか持ってるんだから、手伝えないわよ」


「お前が遅すぎるんだ。俺達は先に行って報告してるからな」


サポーター不在のしわ寄せで、荷物持ちはパーティ全員で分担するハメになっている。

魔石や討伐部位など、数があれば重くなるのは事実。

そして――重量あるものを一人に押し付ける風潮が広まりつつあった。


回収しなければいいという訳にもいかない。


ゴーレム系の破片は現在、A帝国の『壁』建設素材に必須。

故に、期間限定で週のノルマに『ゴーレム系の破片納入』が追加された。

冒険者を続けたければ、嫌でもゴーレム系の破片を回収をしなければならない。


アイテムボックスを持つサポーターを解雇するべきではなかったのでは? 誰もが思うだろう。


しかし、それでもサポーターは戦力にならない者ばかり。

『ゴーレム系の破片納入』も『壁』の建設が完成するまでの限定ノルマ。

多少の辛抱、冒険者なら耐えるだろう。

それが国の考えだった。


冒険者内に不満が募り始め。

冒険者たちが放置したモンスターの死骸から毒素が溢れ、ダンジョン内から帝国周辺まで影響が徐々に露わとなる。

最終的に、動植物や水源に毒素が回り、A帝国の富裕層へ影響が及ぶまで、国は動かないだろう。


否、国はそれ以外の問題に尽力していた。





A帝国の中心に座してる城の一角に、ある緊急対策本部が設置された。

魔道具緊急対策本部である。


「大変です! 郵便局内で出火!! ()()()()()()()()()!」


「またか……!」


人員削減目的で導入された魔道具の不具合と不満。


不具合だと、大多数が魔道具の酷使。

導入されてから二十四時間ぶっ通しで魔道具を起動し続けた結果、機械部分の故障・破損。

魔力のオーバーヒートが発生すると、魔力の属性により出火、水漏れ、突風、土砂が発生する。


不満だと、大多数が魔道具による器物損壊。

洗濯機で衣服が破けた。掃除機で床に傷がついた。食材を調理したら金属が混じった。

魔道具を入手した富裕層の中に器物損壊罪で訴えを申し出た者もチラホラ。


そして、極めつけは――


「郵便局の職員から『安全な魔道具が完成するまでの間、ジョサイアに頼むから奴を連れてこい』とのことです!」


「このパターンは何度目だ!?」


「もう彼は出国しているというのに……」


魔道具を導入し、不満を述べたところから最終的に「ジョサイアを連れてこい」という様式美が幾度もあった。

ジョサイアが既に出国した以外にも、彼らが本腰を入れないのは理由がある。


ある職員がこう報告した


「ギルドに残っていたジョサイアという魔術師の経歴を調査。他にも彼が関わっていた職場も調査しました。結果、彼が優秀な魔術師()()()()との結論になりました」


「というと?」


「まずは彼が関与していたとされるのは壁の建設、下水道の清掃、衣服の洗濯、郵便局での仕分け、物品の修復、料理店での食材切りなどなど、主に誰でも可能な雑務。関与した数もありえませんが……それらに使用した推定MP量は、当時のジョサイアのMPの()()()()


「魔力薬によるMP回復込みを想定しても、彼には不可能です」


「そうでなくとも凡そ二年間、極限まで魔力を消費続ければ過労死は免れないかと」


「しかし、彼は至って健康であったとギルドからは報告を受けています」


そもそもの話……


「ジョサイアが働いていたという証拠は? 給料を貰っていたなら職務経歴書や給料明細があがって来ないのは何故だ??」


「無くしたと言われました」


「明らかに筆跡が異なる偽造の書類を渡されましたよ」


「なんでも無給で働いていたとか」


「慈善活動だから無給で病院に関与していたならまだしも、他の職場でそれはないだろう! ましてやCランクの冒険者だぞ? 給料も少ない。そんな奴が無給な訳あるか!」


「でしたら。何故、無能の烙印を押された魔術師の名が挙げられるのですか?」


「国の混乱を狙っているのでは?」


「一応、ジョサイアの名を挙げる方々を検査しましたが、呪いの類は受けておりません」


「上の方はなんと?」


「魔道具の性能自体に問題がある。改良に努めよ、だそうだ」


「最もですね」


ジョサイアの評価は良くも悪くもならず。

彼の功績はギルドでの評価と信憑性が不確定なのが相まって、水に流された。


何より、根本的な問題はジョサイアが不在になったからではなく、魔道具にある。


彼らは新たな不具合を、魔道具製造工場へ報告するのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ