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多分、これが一番早いです(更新待ち)


渓谷に入って一時間でクエストは完了した。

今朝の罠に『しびれフォックス』が軒並み引っ掛かってくれたのだ。

貴族連中は冒険者の常識を知らない。

クリストフ達は、今朝はった俺の罠に否定的ではなく「こういうやり方もあるのか」と納得していた。


その道中。事前に俺が考案したものが役に立った。


一つ目は、鑑定士のセドオアに与えた魔法陣。


水魔法の基礎と鑑定の魔法陣で、それを発動させると空気中の水の魔素をハッキング、広範囲の鑑定によるマッピングが実現する。


セドオアは初対面のオドオドしさの欠片なく、興奮気味に言う。


「凄いじゃないですか、これ! 鑑定士はポーターとして荷物持ちとか、落ちている物に呪いがかかっているか確かめるだけって聞いたんですけど。鑑定の魔法陣なんてあったんですか!?」


あるんだよ……一世紀前まで教科書に載ってたんだけどな。

ついでの情報も教えておく。


「火山地帯のような水の魔素が少ない場所は、魔法陣を付与した水の魔石を操作して把握すると聞きました」


「な、成程! 水の魔石なら安価で入手しやすいので練習してみます!!」


鑑定スキルの使い方は、これだけでいい。これ以降、鑑定スキルをどう生かすかは本人次第だ。


ただ、セドオアは職業レベルが足りない。


サポーター役に必須なのが『アイテムボックス』。

物体であれば、どんなものでも収納可能な別次元空間を所有するスキル。

つまり、重量の負荷がかからない。

硬度のある素材として求められる『ゴーレムの岩片』すら他愛なく収納できてしまうのだ。流石はファンタジー世界。


鑑定士の場合、職業レベル10で『アイテムボックス』が解禁されると教えて置いた。



次はクリストフだ。

奴の魔法は、土属性。

奴自身の職業が『剣士』なのもあって魔法の攻撃力自体が乏しいのだが……


「剣士とは言え、ある程度は魔法を使いこなしたいんだが、どうすればいいのだろうか?」


異世界あるある……ではないな。今回のは。

苦手な分野を補いたいのは、異世界だろうが俺の元居た世界だろうが共通の感覚らしい。


少し疑念を覚えながら、言葉を飲んで俺は告げた。


「そうですね。まず、クリストフ様は才能に恵まれています。『剣士』は土属性である方が良いのです」


「うん? 何故なんだ」


「剣を長持ちさせられるからです。どんなに素晴らしい剣でも、モンスターを攻撃し続ければ摩耗する。なので、剣士がいるパーティのサポーターが予備の剣を複数所持するのは珍しくありません」


新米冒険者がよく躓く問題だ。

案外、剣は壊れやすい。

鑑定士に耐久度をチェックして貰ったり、刃を研いだり、定期的に鍛冶師のメンテナンスを受けたりとしなければならない。

その点、土に纏わるものを硬化させる『土属性』の剣士は、剣の寿命を延ばしやすい。


クリストフが気づいた。


「土魔法の硬化補助『土の加護』は剣に付与した方がいい訳だな」


「はい。鉱物を素材にしている剣であれば、より土属性の補助技の恩恵を得られます。そして、剣を通して土魔法を発動すれば、土の魔素が集中しやすくなります」


本当に基礎中の基礎技術なんだが……クリストフは冒険者として起つ前に、事前知識も習得しなかったのか?と首を傾げるくらいだ。

まあ、俺の話を真摯に聞いてくれるだけマシだ。早速、実践している。


そうこうしているうちに、俺は手元の作業が終わったので、完成した品をランディーへ渡す。


「こちらをどうぞ。今まで通りの感覚でシャッフルしてみて下さい」


「へ~。こんなんで魔法が使えちまうの?」


俺が作業していたのは、ランディーが愛用していた『カード』。俺の元いた世界でいうトランプ的なカードに風の魔法陣を描き記す事。


何故こんなものを持っているか。

それはランディーの職業が『道化師』だからだ。


カードを投げてモンスターを倒す、なんてファンタジーな事をのたまう。

が、存外間違いではない。

『道化師』には小道具の攻撃補正がついており、更に投擲精度にも補正がかかっている。

割と小さなスライムも、的確にカードで貫けるのだ。


攻撃手段が小道具ありき、また魔法が不得意な職業。

ただ、手先は器用なので――見惚れるようなカードシャッフルができる。


ランディーがカードをシャッフルすれば、それだけで電撃が走った。

奴は子供みたいに感動している。


「おぉ、マジ? カードに魔力ついてんの!?」


「カードシャッフルの摩擦が風の魔力を活性化させるんです。これだけで威力も速度も変わりますよ」


「あー? 原理がよく分かんないけど、強くなったって事? 試しにモンスター倒してみていい??」


セドオアにモンスターを発見して貰い、遠距離から魔力が付与されたカードを投げれば。

雷撃のような衝撃と、音とが響き渡る。

威力も凄まじく、巨体のイノシシ型のモンスター『ボスボア』がひび割れたように裂かれた。


冒険者をお遊び感覚にやってるランディーだが。

ある程度、戦闘の感覚が分かれば、そのままの勢いでどうにかなる部類でもある。


とにかく、コイツみたいな性格は「やる気になればヨシ」だ。


……で。何でコイツらに色々教えてるかって?

よく言うだろ。長い物には巻かれろ。

冒険者ってのは、同じ冒険者だったり、依頼者だったり、恩の一つや二つ作っておくべきなんだよ。

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