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常識に囚われない以前に、常識を知らない


クリストフが「待ってくれ」と言う。


「農民のスキルレベル? ハ、ハインツは冒険者ではなく農民をやりたいのか??」


そこからかよ!?


「彼から何か聞いておりませんか? それか彼のご両親――ハンクシュタイン子爵から」


「あ、ああ……そもそも彼の両親からハインツを俺のパーティに入れてくれと頼まれたんだ。謝礼は必ずすると言われたが」


やっぱりな……俺は再度、ギルドから渡された書類を確認した。



ハインツ・ハンクシュタイン

職業:農民 Lv.32

属性:火魔法 Lv.4


職業スキル:農業 Lv.1

      飼育 Lv.1

      林業 Lv.1

      漁業 Lv.1


HP:5500/5500

MP:400/400



レベル32……そこそこ頑張ってるが、()()()職業スキルはレベル1。これじゃあ駄目だろうな。

職業スキルは職業スキルで経験値獲得するアクションをしないとレベルは上がらない。


前にステータスを公開した通り、魔術師の俺に職業スキルはない。

魔術師が魔法に補正がかかっているだけのように、特定の何かに補正があるだけの職業はない。


ランディーが不思議そうに聞く。


「でもさぁ、ハインツは火属性だぜ? 農民に向いてないじゃん」


「……需要があるんです。火属性の――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


素人でも想像できる通り、農民は基本『水』か『土』属性が多い。

故に火属性の農民は()()

ハインツの両親は、それを理解した上でまずは冒険者でレベル上げ、そこから貴重な火属性の農民として売りに出す魂胆なのだ。


「『クリムゾンベリー』や『火炎種』はご存知かと思います。それらも数少ない火属性の農民が手塩に掛けて育てているのです」


「そ、そうだったのか。『クリムゾンベリー』は父から取り扱いを厳しく言い聞かせられてきたから知ってはいたが、火属性の農民が関わっているとは……」


「ええ。今、仰られた通り『クリムゾンベリー』は繊細な果実です。その為、冒険者など知識がない者に畑の警護を任せる訳にもいかず。モンスターと盗人の対処は火属性の農民が全て担う事になります」


セドオアが「盗人って」と困惑している。

そりゃそうだろう。作り手が少ないうえ、難病の薬に用いられる『クリムゾンベリー』。

金儲けで狙われない方がおかしい。


「加えて、火山地帯にはサラマンダー、マグマゴーレムや……上級モンスターとなると、ドラゴンやフェニックスも相手にしなければなりません。やる気がなくなった、という意味合いがあるなら、彼らと生死を渡り合うのに気が引けたのかもしれません」


クリストフとセドオアは、だんまりになったが。

ランディーは他人事のように「やっば、死ねるじゃん」と口にしている。


皮肉だが、これまた異世界あるある四つ目『貴重な職業(ジョブ)の理解が少ない』。


火属性の農民のように、職業とは不釣り合いな属性だから馬鹿にされる。

見たことない職業だから期待したのに、何の需要もなく無能扱い。本人も真価を理解できておらず、時間を無駄に消費してました。


ってのが昔の話。

当時の人間が散々痛い目を見た歴史が積み上がった結果、近年は『いかなる職業も長所がある』と認知され、特に貴重な職業(ユニークジョブ)は当人の為にも慎重に研究する姿勢となった。


けど、これも先進国で徐々に広がりつつある認識で、先進国の国民全てに広まってはいない。

コイツらのように、認知ができてなかったり。馬鹿にする奴らの割合が多い。


しかし、ハインツの両親が火属性の農民に理解があったのを考えるに、息子へ事情を説明していない訳が無い。

恐らく、ハインツもサボっちゃいないだろう。

俺は提案した。


「早めにクエストを終わらせて、彼を探しに行きましょう」


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