探索1
「でも、探すとは言ってもどうやって?」
「それだよな」
俺たちが考え込んでいると茜が話しかけてきた。
「そう言えば図書館開いてたよ。言ったら何か分かるかも」
「図書館か」
「夜に図書館が開いてるって、なんか違和感あるな」
「確かにね」
俺たちは図書館の前にいた。
「とりあえず入ってみようぜ」
将也を先頭に図書館に入っていく。
「あら、いらっしゃい」
声がしてそちらを見てみると、司書の人だろうか、女性が一人、カウンターに座っていた。
「貴女は?」
「私はここで司書をしているの」
俺の質問に女性はそう答えた。
「ゆっくりしていってね」
そう言うと司書の女性はカウンターに座って動かなくなった。
「まるでNPCみたいだな」
「そうだね」
将也の言葉に俺は同意した。
「とりあえず、何か情報がないか探してみよう」
図書館は一階建ての図書館で棚にはたくさんの本がおいてある。俺も使ったことのある三星市の図書館そのままだ。
「うーん」
俺は本棚を物色していたが、これと言ってこの世界についての情報はなかなか見つからなかった。
「ん?なんだこれ」
背表紙に何も書かれていない本があった。
「表紙にも、何も書いてない」
開いてみても、何も書いていなかった。
「うわ!」
突然、青色のホロウィンドウが出現した。
この世界について(チュートリアル)
このゲームは仮想の三星市を舞台に繰り広げられる。
リアルで出来ることは全て出来る。
この世界ではHPMPがありそれは左手を上下に振ることで確認できる。
この世界でのHP0は現実の死を意味する。
このゲームを攻略したプレイヤーには何でもひとつ願いが叶えられる。どんな願いでも。
「なんだ、これ、チュートリアル?ゲーム?」
俺は試しに左手を上下に振る。すると、目の前に先ほどのようなホロウィンドウが現れる。そこにはHPとMPの表記がある。
「HP11、MP13。これ、多いのか少ないのか分かんないな。ていうかMPって魔法でも使えるのか?」
魔法の書でもないかと探してみたが見つけられなかった。
「おい、優斗」
「ん?」
将也がなぜか静かな声で俺を呼んだ。
「どうした?なんか見つけたか?」
「これ見てみろよ」
将也が見せてきた本を見た俺は息をのんだ。
「おい、これ」
そこに写っていたのは女性の裸、つまりはエロ本だ。
「なんでこんなものが図書館にあるんだよ」
「さあ?」
将也は顔をにやけさせながらページをめくっていく。ふと、背後から気配を感じた。
「お二人さん?」
怒気を孕んだ女性の声がする。確認するまでもなく玲花ねえだ。
本は玲花ねえに取り上げられ、俺たちは仲良く拳骨を食らった。
「どう、何かみつかった?」
俺たちは4人用のテーブルに集まった。俺、玲花ねえ、将也が1冊ずつ本を持っている。
「じゃあ、俺から」
俺は本を開く、すると先ほどと同じようにホロウィンドウが現れる。茜以外は驚かなったところを見ると、どうやら残り二人の本も同じような仕様なのだろう。
「チュートリアル、ゲームって?」
「じゃあ、なんだ。俺たちはこのゲームに無理矢理招待されたってことだろうな」
「多分ね」
少しの間、沈黙が落ちる。
「次は俺だな」
将也が沈黙を破って本を広げる。
このゲームのクリア条件
宝玉を3つ見つけ出し祭壇に捧げ、そのさきにいる者に願いを告げる。
「この宝玉ってのを見つけて、祭壇に行けば出られるんじゃないか」
「多分ね、まあそれって、このゲームをクリアするってことになるけど」
「でも、とりあえずは希望が見えたね」
そう言うと玲花ねえも本を開く。
「私が見つけたのはこれね」
プレイヤー同士の戦闘ではHPが0にならない。
「プレイヤーって意味が分からなかったけど、ここはゲームの中だと思えば分かるわね」
「プレイヤー同士ではHPが0にならないってことは、他の方法で死ぬ可能性があるってことか」
「3つの情報を総合するとそうなるのかな」
俺たちは本をそれぞれ元の場所に戻して図書館を後にした。