20話「メンバーの二人」
ダイヤモンド以来のポケモンにハマってしまった。
次回遅れたらポケモンのせいだと思って許して。
数日してのログイン。
実はこの数日の間に、このゲーム内での公式イベントがあったらしい。
悲しいことに、知らずに過ぎ去ってしまっていた。
いや、前もって知ってはいたんだけど、完全に忘れてた。
悲しいかな、自業自得だ。
それはそれとして。
今回は待ち合わせをしてのログインとなっている。
前に言っていた、同グループのメンバーがこのゲームを始めるとのこと。
んで、その人が始めるならってことで付いてきた人。
その二人と、この街で待ち合わせと言うことになっている。
まぁ、待ち合わせと言っても、以前も言ったゲームハードのフレンド登録のやつ。
それで俺と相互登録してあるから、スタート地点が近くになるはず。
そんなわけで、街の中心の広場で、ベンチに座って待っている。
すると。
「こんにちは、ハジメ君」
こちらに歩いてきた女性がそう言ってきた。
ハジメ、実は前のプレイヤーネームで、ゲームやる時の普段遣いの名前。
そう言えば名前、今はカンメルだが、それを言ったか言ってなかったか。
たぶん見た目で俺だと判断したんだろうかな。
そんな変えてないし。
まぁどちらにしろ、ハードの垢名はハジメのままにしてたし、間違えてもしょうがないか。
「こんにちは、カズサさん。あと今はカンメルって言います」
「カンメル?どういう意味でしょうか、それ」
「ランダム命名で」
「なるほど」
この女性が同グループの先輩の一人、カズサさん。
好きなゲームジャンルは音ゲーと三人称アクション。
髪型はセミロングの髪を、後ろの低い位置で一つ結びにしていて、顔は少し童顔だろうか。
身長は女性の中では高めで、全体的にスラっとしている。
普段と違う点としては、髪が白色、目が水色になっており、右目が作り変わっている。
と言っても、おかしな改造がされてるとかではなく、怪我をしている右目が、左目と同じように綺麗になっていると言うだけの話だ。
普段眼帯をしているから、こうして見るのは新鮮ではある。
VRってすごいよな。
「俺は普段ソロで、プレイヤーから隠れる感じでコソコソゲームしてるんですが、カズサさんはどうしますか」
「カンメル君……何をしたのですか」
「いや、息抜きに来てんのに、別のプレイヤーに付き合って右往左往するのも面倒なんで絡まれないようにと。んで?」
「私もソロで適当に遊びましょうかね。ログインできる時間も違ってくるでしょうし」
「そうっすねー。んじゃ、時間合ったらパーティ組む感じで」
「普段はソロ、揃ったらパーティ、ね?」
そう言って、話に割り込んできた女性。
彼女がもう一人の同グルメンで、俺と同い年のウラネ。
髪はサバサバしたウルフカット?の青髪。
背は、カズサさんに比べると低め。
目は少し釣り目で、リアルと同じような黒目だ。
得意なゲームジャンルはFPSやTPS、メインはツースティックシューティング系だが、VRもそれなりに楽しむ。
ダジャレが好きで、隙有らばダジャレを突っ込んでくる。
とりあえず俺はそれに「はい」と返す。
それが何故かいつもの定番となっている。
今回もそう返す。
「はい」
「……カズサ姉さん、ハジメのやつが適当です」
「心ちゃんがダジャレを言うからだと思いますよ?」
「ウラネ、カズサさんも、流石にゲーム内なんでプレイヤーネームで呼びましょう」
「あ、それもそうでしたね」
「え、私も?」
「俺、カンメル」
「誰それ」
「俺だっつってんだろ」
とにかく、三人揃ったな。
さてどうするか。
……腹減ったな。
「すまん、満腹度回復すんの忘れてた」
「え、私たちの分も払ってくれるの?やーさしー」
「はーん?まぁいいか、始めたばっかじゃ金も無いか」
「私一応3000G有りますが」
「あ、それは装備とかポーションに使うんで取っておいてください。今回は、今回は、俺が払いますよ」
「すごい『今回だけ』感主張してきますねカンメル君……」
「カンメル、私イクラ食べたい」
「お前、こっちもさっき大金使ったばっかで金欠なんだから少しは遠慮しろよ……?魚介系は南東エリアに美味い店あるからそっち行くか。カズサさんもそれで良いですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
以前ぶらついた時に、満腹度回復で適当な店に入ったりもした。
今回はその中の一つに行くことに。
三人分となると重いが、まぁ今回くらいは先駆者として金を払うのも良いだろう。
何かあったらコレをネタに少し協力してもらおうか。
なんてな。
◆◆◆
少しして着いた飲食店。
海鮮丼がメインの店で、マグロの漬け丼が美味かった。
今回俺はチラシ海鮮丼、カズサさんとウラネは鮭の親子丼を注文。
「すごい、イクラいっぱい。サーモンも美味しそう。いただきます!」
「「いただきます」」
「リアルだとあんまイクラとか食べないしなー、ゲームだと簡単に食べれて良いよな」
「こんな量のイクラ、リアルだといったいおイクラするのでしょうねー」
「はいはい」
「……そもそも、イクラ食べたくなったの、カンメルが送ってきたスジコから漬けイクラにして、丼で食べる動画のせいなんだけど」
「いやぁ、俺もリツイートで流れてきたんでさ、美味そうだったからついな。しゃーないしゃーない」
「あれは美味しそうでしたね。私もやってみたいです」
「やってみようってなるのは流石っすよな。それに比べて……」
「ん、何?料理できない男子はモテないよー」
「お前だよお前。俺はやれば出来るから」
「はー、やってやろうじゃん、食わせてやろうじゃん」
「こちとら『焦げた何か』なんて錬金術の失敗作みたいなもん食わされたくないんでなあ」
「いつの話よ」
「相変わらず、仲が良いですね」
「「何処が」」
ウラネは姉が家事万能過ぎて、そう言ったことはほぼ出来ない。
砂糖と塩を間違える。
ゴムベラを溶かす。
電子レンジを爆発させる。
みたいなベタなやつも、すでに一通り終えている。
練習して上達したならともかく、そう言った話は全く聞かない。
正直、今作られても、何が出てくるか分かったものではない。
いつの話よ、じゃないんだよ。
こう言い合ってるが、別に仲が悪いわけじゃない。
けど、今の言い合いからどこに仲の良さがあったんだか。
「ごちそうさまです。さて、この後どうしましょうか、先駆者さん?」
「この後は……宿でリスポン地点の更新、武器防具薬屋とかの確認をしておくべきっすかね。案内します」
「何か買っておくべき?」
「回復スキルが全然出ないからHPポーションは買っとくべきか。近接なら。遠距離は逆にMPポーションだな。スキル無いと殴るしか無くなる。そもそも二人、スキルとステータスと武器ってどんな感じっすか?」
「私は自己強化スキル【霧隠】、STRが6でINTが1、他は何か普通、武器は手甲だから殴りだね。魔法は使えそうにないや」
「私はINTが6でAGIは1、他が普通ですね。武器は長剣ですが、使えるスキルはありません」
「ん?」
「ユニークスキル【世界分ノ一人】。『一つのスキルを選択し、そのスキルの限界を解放する。変更不可』」
「んんん???」
ユニークは今のところ10個くらい考えてあるけど、枠を分けて確率計算してるから……えーっと、確かカズサの中の人にダイス振ってもらった時は1/10×1/5×1/10×1/5×2/10×1/5だっけな。
文字にするとわからんな。
ユニークと言っても一人しか手に入らないとかではなく、不可逆の選択を強いるタイプ。
代償はスキルポイントなスキルが大半。
結果的に独特になるスキル、かね。
主人公にもどれか手に入れて欲しい。