悩める乙女の理不尽な距離感
東海林加奈は悩んでいた。
もともと頭のいい方ではなく、どちらかといえば悪い方、いや、もっといえば成績はクラスのメガネのデブとワーストワンを争っているレベルの人間だった。それなのに一生懸命に眉の間に3本の線を刻み、なんとかこの問題を解決しよう、そう努力していた。
普通、頭が悪いというのは三種類に分類できるだろう。
一つ目は努力をしていない。改善しようとする気がないというタイプの頭の悪さ。彼女の場合はこれには該当しない。すごく頑張って勉強して、勉強して、勉強しても成績が上がらないのだ。
二つ目は努力はしているが、その方法に問題があるというタイプ。つまり、ノートにいっぱい英文を肉筆で埋め込むような、効果の薄いとされているやり方で学力を向上させるべく邁進するような人間達。彼女の場合はこれにも該当しない。娘のあまりの出来の悪さに、彼女の親達は金を出し通信教育を受けさせている。学力をあげる方法もこれであっているのだ。
そして3つ目、これに彼女は該当する。簡単な話だが、地頭が悪いのである。ひたぶるに鉛筆を動かし、誰かに言う通りにやってもまったくうまくいかない。記憶力と応用力、一回やったことを二度やれないタイプなのだ。
日に焼けた肌と運動部特有の筋肉質な足を彼女はもっていたが、スクールカースト上位のグループには入っていなかった。活発な方ではあったが、命を削ってまで人と関わりたい人間ではないのだ。
さて、それはそれとして彼女は悩んでいた。文字通りどうしたらいいものかと頭を抱えていた。抱え終わって上を眺めると、天井の木目がなんとなく目に人の顔っぽく見えて何にも考えずに言った。
「人の顔っぽいな…。」
言った後彼女は寝そべって、横にゴロゴロと回転した身体をじっとさせておくのが苦手なのだ。
そんな彼女はとてもとてもとても、それはもうとっても悩みに悩んでいた。
始めて告白されたのである。
相手はよく知らない男子で、髪の毛は長めだった。この場合どうしたらいいのかを彼女は知らない。相談するのもなんか恥ずかしい。了承したとしても関係性を維持するのは難しいのではないだろうか、いや、まあ、根拠はないけれどなんとなく。
彼女はそれに、とっても悩んでいた。