魔法のお勉強-07
●リベンジ
「カーイサーイ! ……コミ☆ケット!」
前と同様に現れた傀儡兵。戦場は足を取られやすい砂丘。
僕達はあの時の僕達じゃない。腕も知識も上げている。
ほぼ一直線だった前とは異なり、自分に都合よい間合いを保ちつつも、三人で傀儡兵を囲んだ。
「その生を観、我が生を観て進退す。鎮めよ風の地。浮遊歩行」
「ネル様ナイス!」
確りとした足場を確保するために、ネル様は中級魔法を唱えた。さらに準備の魔法を重ねて掛ける。
「あるべきようは孚なり。而じて閑ぎて家を有て。
護れよ風の火。風盾」
「凄ぇ! 上級魔法だ。よーし俺も」
デレックは前のようにおざなりの突出をせず、支援魔法の恩恵を受けてから動き出す。
「未だ済まずとも孚有り。今希う伏衆たまえ。
伏せよ火の水。小消火」
さらに剣に小消火の魔法を纏わせた。
「スジラド!」
「うん!」
デレックの立てる親指に、僕は最近覚えた中級の魔法を発現。
「恒は亨る。終わりて始まる輪の内に。
理に巽いて動き、剛柔皆応ぜよ。
目覚めよ雷の風。軽肉体制御 全!」
所謂身体強化魔法だ。
「一緒に盾をなんとかするぞ!」
デレックの誘いに僕は乗る。
ネル様の放つ矢を大盾で防ぐ傀儡。その隙にちょうど反対側に移動を図る僕と、正面から突っ込んで行くデレック。だけど今度は無謀じゃない。
ドドドドッ! 傀儡の吐き出す火の玉を、シュシュシュン! と小消火の付与された剣でデレックが斬り祓う。彼にとても厄介な火の玉を引き受けて貰っている内に、僕はネル様の斜向かいとへ位置取りした。
十字に組んだ構えからマジックアイテムの腕輪を打ち合わせ、プラズマのスピアを大盾の裏から投げつけた。
閃光と轟音に包まれるのは前回と同じ、アニメだとバンクシステムが有効に使える再現だ。
でも当たったのは盾の裏側。腕から盾が千切れ飛んで遠くまで飛んで行く。その軌跡に誰も居ないから問題ない。しかも、直撃した左腕が損傷している。前回には無かった戦果だ。
「えーい!」
強化された肉体と、ネル様がくれた固い足場。それで傀儡の膝の裏に身体ごと打ち当てる。
揺らぐ巨体。悪い足場が体勢の立て直しをもたつかせる。そこへ、
「きぇぇぇぇぇ!」
怪鳥の啼くが如く斬り着けるデレックのグラディウスは、桜色に光を放つ。
「取ったぁ!」
コトリと落ちる傀儡の右腕。
「それまで!」
サンドラ先生の声に。僕達はリベンジを果たした事を実感した。
「シミュレーションも模擬戦闘も取り敢えず合格点を上げれるわ。仔犬ちゃん。新宇佐村に行く事を許可します」





