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ネル様を助けろ-09

本日は0時7時21時の3回更新です。

●願うものは

 誰? 僕を呼ぶのは。

 真っ暗な空間に漂う僕。暑くも寒くも息苦しくも無い。なぜか不安も恐怖も感じていなかった。

 ぼーっとしている意識の中。その真闇の中に響く歌。

――――

(いまし)の願いを叶えんと 誓われ給いしすえの神

 つーゆも背かず朝夕に (いまし)の道をば進めかし♪

――――

 何かの儀式だろうか?

 時代掛った言い回し。ゆったりとした讃美歌の頌栄のような節回し。

 子供達の声、若しくは童ぶりの女の人達の声の歌が聞える。

 耳を澄ますと、歌声の中に火の燃える音や風の音に交じって、ぶつぶつとお経を唱えるような甲高い声が聞こえる。


「見つけた……」

 と言ったのは、幼い女の子の声。声に聞き覚えは無いけれど、なぜか懐かしい気がするよ。

「聞える? お兄ちゃん」

「君は?」

「よかったぁ。やっと答えてくれたねお兄ちゃん。私、ずーっと呼んでいたんだよ」

「ずっと?」

「そう。ずーっと」


 懐かしい気がしているのに、誰なのか全然心当たりがない。だけど向こうが、

「今はお話しか出来ないけれど、逢いたいよ」

 なんて言って来る以上、きっと深い繋がりのあったんだろう。でも、いつ?

 僕の確かな記憶は、檻の中に他の子達と一緒にいた所から。その後ずっとネル様の所だから覚えがない。

 もしも繋がりがあるとしたら……。


「まさか、日本に関係あるの?」

 僕にはもう一つの生々しい記憶があった。

「ちゃんと覚えているんだね? 嬉しい~」

「あ、あのう。僕、自分が誰だったか覚えてないんだけれど」

 えーっと……。考えが纏まらず上手い事言葉が紡げない。

「シャッコウってそう言うのが多いよ。でも、それでも覚えててくれたんだね」

「ごめん、良く判らない。でも今のままじゃどうしようもないよ。今、ネル様が危ないんだ」

「ネル様? ……ああ、あの子ね」

 パッとスポットライトが落ちるように、丸く闇の中に浮かぶネル様のバストアップ映像。

「そう。その子」

「お兄ちゃん。この子を助けたいの?」

「うん」

 でもどうすれば。と僕があわあわしていると。唐突に女の子の声は、テレビの討論でタイムアップしたように遮断された。


 代わりに、まるでチャンネルが切り替わったように、

「ふ……」

 若くはない、だけど年寄りでもない男の人の声が響く。

「どうした? ライディン」

 ライディンって誰? っと言う言葉は押し殺して、

「僕、スジラドだよ」

 と答えると、

「どうした? スジラド」

 ともう一度聞いて来た。

「ネル様がピンチなんだ」

「そうか?」

「僕、助けなきゃ……」

 言葉の途中で、闇は川に塩の塊を投げ入れたかのように、パラリと崩れてから揺らぎと共に消えた。

 痛みとなだれ込むような音が動き出すと、僕の意識は鮮明になった。


 僕は壁に身体を預けて立っていた。お腹が痙攣して息が吸えず、胃がムカついて吐きそうだし、背中もぶつけて痛い。左の肩が疼いて熱を持ち、かーっと身体が熱くなる。

 そんな風に意識ははっきりしているけれど、身体が金縛りに遭っている。動こうとしてもただ脂汗が噴き出るだけで全然僕の思い通りにならないんだ。


 僕の思いとは無関係に、僕の身体は何かを確かめるかのように手を握ったり開いたり、腰がゆらゆらと左右に振れたりしている。

 そして、崩れる兆しのように僅かに姿勢を低くした所で、唐突に僕は前に倒れ込んだ。


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