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世界樹の跡-2

●聖地へ


 コポっコポっと音を立てて泥の中から泡が湧き出す。熱気の籠ったこの辺りは、草も木も無い岩と石と砂と泥の風景が続く。


「これって、温泉よね」


 ネルの言葉に案内人のセタは、


「人の子らはそう言うらしいな。


 浸かれば傷が膿むのを防いだり、酷い皮膚病や打ち身などにも効く奇跡の泉だ。

 良く効くので、昔は水路にこびり付いた結晶を売りに行くこともあったくらいだ」

 言ってセタは前方を示す。


「あの彼方に見える巨木の元に、一族の里がある」


「で、安全な道は今の所ここだけ?」


 遥かに遠く、巨木の立つ山の中腹より森が続く。


 腐った卵の臭いを抜けると川は冷たくなる。ぬるぬるした川苔に足を取られながら進んで行くと、水は清らかさを保ったまま生き物の気配が濃くなって行く。

 泳ぐ小魚や水面を走るアメンボ。川岸も緑濃くなり樹が増えて行く。

 樹冠を造る広葉樹の林がいつしか森となり、小鳥の声が飛び交い始め、川筋だけが天然の道路として続いて行く。

 こうして山に辿り着くまで三時間。七曲りの小径(こみち)を貫けて(かずら)の吊り橋を渡ると。ネルの足から降る様に、谷間の樹々から湧いた雲からぽつぽつと、雨の音が谷間に響いた。

 色濃い緑に照り映えて足元の雲は緑に映る。


「ぱっと見ただけで豊かな森ね」


 目を細めるネルの前からセタが、誇る様に胸を張る。


「我ら枝視(えみ)が一族に必要な物は全て、これらの森から賄える。

 食べる物も着る物も、武器も薬も何もかも」


 森と共に在る枝視が一族。その象徴たる巨木は妖しいほど美しい。


「あの樹に見惚れたか。あれは枢機卿殿が世界樹と名付けた樹だ。

 これから、一族の巫女に降った神託に(したが)い、太初の樹の元に連れて行く」


 案内されて森に入る。一見自然のままに見える森の樹々だが、よく見ると色々と人の手の入ったものだ。

 斜面に沿って並ぶ太い幹。刈り取られた下草。枝打ちされた枝。

 そして何よりも、この辺りは同じ種類の樹が固まって生えている。


「栗の木に似てるわね。ひょっとして、農業?」


 ネルの問いにセタは首を傾げ、


「そのノーギョウと言うのは判らんが、一族が植えて世話をして居る餅栗(もちぐり)の樹だ。

 実は味が殆ど無いが、膏や乳の味と馴染みが良い。芽吹きの季節と花の後に、小便を染み込ませた灰を施せば、毎年秋にはたんと実を付ける」


 と答える。つまり枝視が一族は、実質農業で主食を作っていた。


 稜線近い部分には、幹に切れ目を入れて器に樹液を採って居る灌木があり、日陰になりやすい部分には、別の種類の樹が植えられている。


「あれは葡萄の木。あれはアケビの樹。ベリー類もあるし山芋の蔓も! あれは新芽が食べられるウドの木ね」


 ナオミ仕込みで野草に詳しいクリスが指摘する。

 加えて開けた広い場所は、百合・ニラ・ホースラディシュ。沢にはクレソンの群生地。

 あちらもこちらも食べれる野草で埋まっていた。


「まるで、ルーケイ伯の見えない畑のようです」


 シアが驚きの声を上げる。


「畑、そう言われればそのようね」


 合点するネル。

 確かに食べれる植物が不自然なほどに揃って居る事から考えて、ここは管理された場所に違いない。


「意外よね~。エルフって、森や自然に手を付けるのを嫌うから、狩猟採取してる人達だって思ってたけど」


 ネルが漏らした一言に、


「エルフか……。昔我らは、枢機卿殿や邪神様にそう呼ばれたことがある」


 とセタはしみじみと口にした。


「あはは。あたし、本物のエルフって見るの初めてなんだよね。


 でも、夕べの着替え。あれはエルフ上布(じょうふ)とあたしたちが呼んでる、アラクネシルクと並ぶ人間じゃ作れない最高級の布地よ。

 それを惜しげも無く貸してくれるなんて、作ってるエルフくらいでしょ。


 でもあたし、エルフの耳が人間と殆ど変わらないなんて、初めて知ったわ」


「我らは枝視が一族だ。きっと我らの暮らしが、人の子の伝承にあるエルフと言うものに似ているのだろう。

 巫女様からは『えー! 耳が長くないの~』などと珍しがられた伝えが残っているから、伝承のエルフとはウサギの様な耳をしているのだろうな」


「んー。どう言ったらいいのかな? ウサギの耳とはかなり違うけど」


 こんな会話を交わしながら歩いて行く。

 やがて話題も付き掛けた頃、


「ここが、神託で(ひめ)をお連れせよと告げられた場所だ」


 連れて来られたその場所は巨木から大分離れた場所。

 小さな砦が作れる広さに、ぽっかりと空いた大穴。その穴を満たす水が池を作っていた。


暑さが続きます。

私は病院の待合室で熱中症になりました。

皆様、どうかご自愛ください。


それにしても。

「もっと他人の作品を読め」

このアドバイスは無批判に実行してはいけません。

特に普段から他人の作品に目を通している人は絶対に実行してはなりません。


一日は24時間しかないので、人の倍の時間働くことは可能でも3倍の時間働くことは不可能です。

徹夜続きで書こうとしても、目は開かなくなり思考は迷走いたします。

執筆も、積み上げては崩しになってしまうと、いくら時間をかけてもその場で足踏みする様な感じになってしまいます。


所詮は、個々の実態を知らない人のアドバイスなのですから、真に受けないように。

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