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ネル先生-03

●準備室

「点いたぁ~!」

 男の子の弾ける声が教室に響く。マジックアイテムのスタンドライトが点った瞬間である。

「ネル先生。今の何かが吸われて行ったようなのが……」

「そう。必要な魔力が使われたの。マジックアイテムを使えば、誰だって魔法が使えるのよ」

 こちらに集まる子供の殆どが男の子。今も昔も男の子と言う奴は、動いてピカピカ光る物が大好きだ。


「火で炙らなくても、熱くなってる」

 服の皺を伸ばしながら、瞳を輝かせる女の子。こう言った家事を援けるマジックアイテムには、女の子達が食いついて来る。


「頑張ってお仕事して行けば、(みんな)も同じ物が手に入るよ」

 ネルが促すと、子供達の歓声が煩いくらい教室に響いた。


 鐘が鳴って休み時間。

 ネルは隣の準備室でほっと一息。


「疲れたぁ~」

 リンデンのお茶を淹れ、クッキーを一つ抓む。

 手早くエネルギーを補充しながら、ネルは指導書を開き、

「どこまで話せばいいのかな?」

 と呟き、子供達があっと言う間に自分を追い越しちゃったらどうしよう? と心配する。

 身近に居たスジラドがそうだったから。


 にっこり浮かんだスジラドの顔。

 ぶんぶんと首を振り、

「あれは特別、あれは特別。あんなのが沢山居てたまるもんですか!」

 脳裡からスジラドの姿を掻き消した。


「物差しにするのはデレックあたりよね」

 こちらも笑った顔が浮かんだが、


「チカン? そう言うのは出るとこ出てから言うもんだぜ」

 笑いは笑いでも鼻で笑う奴だ。

 ムカと来た勢いでポンと足蹴にする。


「あれはあれで問題児ね。だけど子供達ってばまだまだ初学だから」

 と呟き、

「決めた! デレックにも解る程度にしとく」


 さらりと教えると決めた部分の教科書は、概説と良く知られた魔法リストでまとめられていた。


――――

・魔法体系


 魔法とは光・闇・天・沢・火・雷・風・水・山・地の十柱(とおはしら)の神の力を借りて顕現される物を言う。


 世のいとたか御誕生(みあれ)の時、御身坐(みみまし)しき太初(はじめ)の神は(あざな)産霊(むすび)の神と申される。

 産霊は独り神で光と闇のニ柱(ふたはしら)の神を生んだ。この二柱を二極(にきょく)と言う。

 二極の神は交わりて四柱(よはしら)(もと)なる神を生んだ。

 産霊の神の名付けられた(あざな)()(すい)()(ふう)。この四柱を四大(しだい)と言う。


 光を上の頂点とした火と風の三角形。闇を下の頂点とした水と土の三角形。この二つを組み合わせた、二極四大の六芒星(ろくぼうせい)が魔法を支える力の根源となる。


 その後。四大の神も交わりて四柱(よはしら)の神を生んだ。これを四法(しほう)と言う。

 この時、産霊(むすび)の神は四法様にも(あざな)を与えられた。

――――

・四法の字

 産霊の神は、

 風と火の交わりによって生じた、風の震わす火を(らい)と名付け、

 火と水の交わりによって生じた、火に拠りて水乾き昇る所を(てん)と銘打ち、

 水と地の交わりによって生じた、水貯えて地を(よろこ)ばす地を(たく)と言い、

 地と風の交わりによって生じた、地に拠りて風を(とど)むるものを(さん)と呼ぶよう、

 いと(たか)御名(みな)によって定められた。

――――

挿絵(By みてみん)

 かくて世の(ことわ)りの成った後、海の中よりクオンを始めとする国々が生まれた。

 国々の(あが)(とよ)みの聞える時代。国の(いま)だ固まらず(わか)き時に。

 地より萌え出る神、天より降りし神、海の水沫凝(みなわこ)りし神。数多の神が現れて、人の子を導かれた。

 今、クオンの大神(おおかみ)()すイズヤ大神は、天降りし神の一柱であらせられる。


 純粋な十種の力の魔法は使用者の想像力に依存し、大変応用が利くけれど扱い難い。そこでイズヤ大神が二極の神を除く八柱の神と契約を結び、八種(やくさ)の力のいずれかを加護に持つ者ならば平易に使える様、(のり)の神イクイェヂ・ホート・マーメィに命じて二つの八種の力を組み合わせた魔法を編纂させた。

 これが今日、万人が学ぶことの可能な魔法である。


 なお、魔法は素質がなければ使う事は出来ないが、肩代わりするマジックアイテムは高価であるものの既に開発されている。

 また、(ことわり)を極めし者や信の強き者は、編纂された魔法を純粋魔法程ではないが少し違う効果に変化させることが出来る事も確認されている。


・魔法一覧

――――

【.α:確定効果魔法 >β:効果選択可能魔法】


・天

.α:天の天 雨止め

.α:天の天 天啓

.α:天の沢 雨乞い

.α:天の火 小光源

>β:天の火 光源

.α:天の雷 閃光

.α:天の風 小転移

.α:天の風 転移

.α:天の水 暗転

>β:天の山 白兎

>β:天の山 銀兎

.α:天の土 逆行回復


・沢

.α:沢の天 願い

.α:沢の天 隕石落し

>β:沢の沢 (たま)降ろし

>β:沢の沢 神降ろし

.α:沢の火 錯乱

.α:沢の雷 精神感応(初・中・上)

.α:沢の風 夢中旅行

.α:沢の水 鎮め

>β:沢の山 記憶剥奪

.α:沢の土 招集

.α:沢の土 探査


・火

.α:火の天 幸運付与

>β:火の沢 熱視力

.α:火の火 焔撃

.α:火の火 小着火

>β:火の火 着火

>β:火の雷 熱線

>β:火の風 火焔制御

.α:火の水 冷撃

>β:火の水 小消火

>β:火の水 消火

.α:火の山 焔熱防御

.α:火の土 気配遮断


・雷

.α:雷の天 加速

.α:雷の沢 光学迷彩

>β:雷の沢 記憶操作

.α:雷の火 雷撃

>β:雷の雷 軽電磁撃

>β:雷の雷 電磁撃

.α:雷の雷 通信

>β:雷の風 軽肉体制御

>β:雷の風 肉体制御

>β:雷の水 麻痺

>β:雷の水 麻酔

>β:雷の水 軽自己治療

>β:雷の水 自己治療

.α:雷の山 魔法解除

.α:雷の土 快復


・風

.α:風の天 風盾

.α:風の沢 集音

.α:風の沢 風話

.α:風の火 風撃

.α:風の火 飛行

.α:風の雷 拡声

.α:風の風 射撃誘導

.α:風の水 沈黙

.α:風の山 凪

.α:風の土 浮遊歩行


・水

.α:水の天 水遁

.α:水の沢 水鏡

.α:水の火 水撃

.α:水の雷 噴水

>β:水の風 流体制御

.α:水の水 治癒

.α:水の水 浄水

>β:水の水 解毒

.α:水の水 睡眠

.α:水の山 氷結

.α:水の土 水影記録


・山

>β:山の天 錬金

.α:山の天 模倣変身

>β:山の沢 山彦

.α:山の火 間欠泉

.α:山の雷 地滑り

>β:山の風 簡易傀儡

>β:山の風 傀儡

>β:山の水 再生

>β:山の水 超再生

>β:山の山 壁創造

.α:山の土 強奪

.α:山の土 能力強奪


・土

.α:土の天 小土嚢

.α:土の天 土嚢

.α:土の沢 振動感知

.α:土の火 石礫

>β:土の雷 地震

.α:土の風 振動制御

.α:土の風 穴掘り

.α:土の風 盛土

.α:土の水 砂化

.α:土の山 石化

.α:土の土 抜け穴

.α:土の土 隧道

――――


 カランカラン! カランカラン!

 予鈴を鳴らして廊下を通り過ぎて行く音。


「さぁて。あたしも頑張らなきゃ」

 ネルは隣の教室へと向かうのであった。


どうも、オープニングで興味を引こうと工夫したところが裏目に出ている模様。

どうしましょうかね。


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