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誘拐-01

●気が付くと

「痛っ……。ここは?」

 気が付くと石畳の上で眠っていた。顎がズキズキし、鳩尾の辺りに鈍い痛み。

 壁は三面石造りで残る一つが鉄格子。上に小さく通気の為の窓はあるが、差し込む光は乏しくて空気は湿気て淀んでいる。所謂地下牢だ。


 ここは多分、犯罪者や戦の捕虜を閉じ込めて置く場所。なぜそう思うか?

 簡単だ。商品ならば健康を損ねては売値が下がるが、犯罪者や隙を狙う敵兵など、心をへし折って程好く弱らせるに限るからだ。


 朧だった意識が晴れ渡って行く内に、僕は何が起こったかを整理する。

 そうだ。あれは……。


●奈々島の街

 二度目の奈々島。今回は僕が番小屋で見つけた通行書を使って中に入る。

 薪や野菜などを売りに来た近隣の村の者なら通行証を見せて終わりだが、

「君達武装してるね。武器は預けて貰うわよ。

 あなた達は貴族と一応その護衛ってことだから、嫌なら剣を持ち込めるけれど。その代わり封紙を貼らせて貰うわね。いざと言う時問題無いよう、封は簡単に千切れちゃうようになってるけれど、鞘から抜いたら判るからね。

 もし何らかの事情で封を破ったり、水に濡れて封が駄目になった場合は、直ぐ番屋に出頭して再封印をする必要があるの。何も事件を起こして居なければ手数料で済むけれど、出頭しなかったら子供でも罰を受けるから気を付けてね」

 胸甲を着けた女の人から武装解除を求められた。

「あ、全部預けます」

 代表で答えたデレックに、

「じゃあ、これと交換だよ。無くすと手続きが煩雑になるから気を付けてね」

 木札と交換に武器を預ける。武器の代わりに渡された木剣にも、木札と同じ番号が付いていた。

「えーとこれ。抜けないけど……」

 お姉さんが首を傾げたのは婿の印の宝剣だ。

「身分の証って物かしら? これなら封も必要ないわ」

 精査の結果、持ち込んだ武器の類でこれだけが持ち込み可能だった。

 最後にいざと言う時の本人証明の為に、合言葉のように質問とそれに返す答を紙に書くよう求められた。


「スジラド。物知りのあんたが書きなさいよ」

 ネル様がそう言ったので僕は、ネル様とデレックの見ている前で

 ――

 質問:ナポレオンの切り札は?

 答え:ダイヤの15

 ――

 と(したた)めた。

 出典を忘れたが、僕の記憶に有名な合言葉として残っていたものだ。


 そして丸めて封蝋を施し、ネル様の名前を書いた。

 この内容は僕達しか知らないものなので、万一木札を紛失した場合は、名前で封書を調べ質問と答えが一致したら返してくれるのだ。

 ついでにお姉さんから、万一に備えて武器と一緒にお金も預けておくよう忠告されて、そのようにした。


「兎に角、無くしたりした場合は、直ぐに番屋を訪ねなさい。色々聞かれるけれど何とかしてくれるからね」

 僕達が子供のせいか、実に言葉遣いが優しい。

「後、子供だけで裏通りやスラム街に近づいちゃいけないよ。人攫いに掴まって売り飛ばされてもお姉さん知らないからね。じゃあ、良い旅を」

 最後に物騒な事を忠告されて、市街に入った。


 軒を並べる商店。市場の賑わい。天秤一本肩に担いだ物売りの声。街の賑わいは前と変わらない。あのパチモンだらけの目抜き通りも。

 違うのが、モーリ師匠が居なくて代わりにデレックが居ると言う事だ。そりゃデレックは僕なんかよりも腕は立つけど。僕から見ても単純過ぎるしデレック自体まだ子供だ。

 少し年嵩の子供に、幼児の域を抜け出していないネル様。そして幼児以外の何者にも見えない僕。トラブルに来て下さいと言っているようなものに思えるんだけれど。だけど、

「心配するな」

 とデレックは胸を叩く。


 一応僕達は、家の課す訓練の為に子供だけで旅行していると言うことになっていた。

 デレックによると弓の貴族やその家来の家では珍しい話じゃない。実は子供に気付かれぬように変装した大人が見守って、人に頼らない訓練を積ませるのだそうだ。


「この手の話は知られてるからよぉ。そうそう因縁付けて来る与太者(よたもん)とか居ねーぜ。まあ、子供を煽って突っ掛からせて遊ぶ奴は居る。自分から突っ掛かって地面に転がされて泣かされるくらいなら、影供達も自分の実力を知る良い経験と黙認するからな」

 だから自分から喧嘩を売りに行かない限りは問題ないとデレックは言う。

「気を付けるのは、スリやひったくりに置き引き。そしてネル様なら……あ、十年後なら兎も角、これはまだ心配ねーか」

「なによ! あたしが心配しなくていいのは」

「ち・か・ん。ネル様みたいなお子様は跨いで通るさ」

 口の悪いデレックに、

「誰が痴漢跨ぎよぉ!」

 ネル様はおかんむり。

「痴漢に遭うのはこんな体型だぜ」

 手でボン・キュッ・ボンな曲線を描くデレック。

「スジラド!」

 ネル様が声を荒げた。

「命令よ。あたしに痴漢しなさい」

「ええ~!」

 人通りの多い目抜き通りなのに、言うに事欠いて大声で痴漢しなさいと口走るネル様。

 聞えちゃった人が噴き出すのが見える。笑いを堪えて通る人が見える。辺りの視線が僕とネル様に集中した。

「何よぉ!」

 ネル様の声が響いた。

 そして次の瞬間。恥かしさに居た堪れなくなったネル様が、顔を真っ赤にして駆け出した。


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