表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/308

開かれし記録-01

●禁域にて

 ノブちゃんの生まれ変わりである神子(みこ)様達神殿のお偉いさん方に付き添われ、僕は禁域に通された。

 出迎えたのは先程のフードを被った男の人だ。


「改めてご紹介します。シン殿にしてライディン殿であるスジラド殿と、御一行様です」

 最高権力者である筈なのに腰の低い神子様。そして改めてフードの男の紹介を受ける。

「こちらが枢機卿(カーディナル)様です」

(もり)殿、大儀」

 その言い方も彼が神子様より上位者なのを伺わせる。でもモリ殿って何だろう?


「邪神様の計らいにより、スジラド殿にはこれが与えられます」

 枢機卿と呼ばれる怪しげな男は、魔物の物と思われる親指程の牙で作られた笛を、盆に載せて僕に寄越した。

 だけどなんで、こうも怪しげな格好をしているのだろう? そう言えば、一番最初に見た神殿関係者もこんな格好をして、フードで顔を隠していたっけ?


 ざわ。ざわざわざわざわ。

 あれ? 神殿のお偉いさん方の雰囲気が変だ。


「スジラド殿。(おんみ)が十五歳の儀を超えし暁には、各地の神殿を巡る許可を与えます。

 それから、決してその牙笛を手放さぬように。それは卿が権伴(ごんのとも)比倫(なかま)として許可された証です。

 滅多な者には手にすることの適わぬ(しるし)故、魔力と息吹を籠めて鳴らし、卿の魔力を登録なされよ」

「これを吹くのですか?」

 頷く枢機卿。僕は言われた通り魔力を籠めて息を吹き込んだ。


 ポゥー! ライター程の火が噴き出すと共に、G音つまりハ長調のソの音が長く響く。


「これでいいのかな?」

「今よりその牙笛は(おんみ)にしか吹けなくなりました。余人が吹いても決してその音では鳴りません。その音は(しるし)であります故、いざと言う時はそれで身の証を立てられましょう」

 そう告げると紐で綴られた二つの本を僕に手渡す。


連枝世家(れんしせいか)刀筆参拾捌?」

「栞のページをお読みください。(もり)殿より伺ったライディン殿の悩みは消えるでしょう」

 言われるままに開いてみると、


『これは僕の父上の紋章だ。子爵家だったのか……』

 興奮気味にライディンは言った。そしてページを捲って行くと、

『あった!』

――――

・三百五十ニ年

 児を賜る。命名ジャック。

 嫡として系譜に記さる。


・三百五十三年

 女児誕生。命名アレクサンドラ。


・三百五十六年

 流行り病にて一族死亡。

 遠縁のチャールズ、家督を相続。

――――

 マッチョさんに見せられた映像とは異なる流れだが、一家全滅で遠縁が家を継いでいる。


『ライディンも死んだことに成ってるぞ』

『うん』

 言葉少なだが、ライディンのやるせない気持ちが伝わって来る。


『だけどこれで僕が、歴とした貴族の子供だってことだけははっきりしたよ。だって、子爵家が『賜る』生まれだもん』

 確かに。子爵家より上からの養子だってことがはっきりする文言だ。

 それだけしか判らなかったけれど、ライディンは確かめたかった回答を得た。


「宜しいかな? 本来持ち出し厳禁の物故、お返し願いたい」

 素直に僕が差し出すと、今度は釋光志典(しゃっこうしてん)と書かれた百科事典並みに分厚い一冊を渡された。

 真名(まな)から読み解くと、シャッコウとは『解き明かすめぐみ』かな? シャッコウがこの世界に恩恵を運んで来たと言うのかな?


 さっと最初の数ページを確認すると、内容は千年以上前からのシャッコウの記録だ。


 枢機卿は穏やかな声でこう言った。

「原本ですが、一晩お貸し致しましょう。神域の病室と為った部屋でお読みください。後ほど守殿に引き取らせます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもどうぞ。

転生したらタラシ姫~大往生したら幕末のお姫様になりました~
まったりと執筆中

薔薇の復讐 作者:雀ヶ森 惠


ブックマーク・評価点・ご感想・レビューを頂ければ幸いです。
誤字脱字報告その他もお待ちしています。

【外部ランキングで本作品を応援】(一日一回クリック希望)


メッセージと感想(ログインせずに書き込み可能)にて受け付けます。

ヒロインのビジュアル
ヒロインたち
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ