表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/308

真と雷電-04

●今だからこそ出来る事

「あ。だけど戦力大丈夫かな? 僕はこんな身体だし」

そう口にした僕にキミちゃんは、

「今はチカちゃんの身体から、チカちゃんの属性の魔法使えるはずだよ。お兄ちゃんは全て種類の魔力を集める事だけは出来たんでしょ?」

「うん」

「チカちゃんは真名(まな)は『(きじ)()』と書くから、火の力を使える筈だよ。お兄ちゃんの強みの一つが窮理なんでしょ?」

 そう言われて、

「あ、そうか。今は自分の身体がマジックアイテムに為るんだね」

「そうよ。使えない魔法についてもお兄ちゃん、習ってるでしょ?」

 頷く僕。ならば僕も戦いようが有る。


「それに私とコンちゃんには、護衛の神殿騎士さんが付いてるから。きっと何とかなるよ」

 キミちゃんが言うとクリスちゃんも、

「うん。あのお兄ちゃん強そうだもん」

 と信頼を示す。

「じゃあ」

 と口元をにっこりさせたキミちゃんは、

「巻き込んで最速攻略目指しましょう!」

 とちょっと悪人顔になって言った。


●サガかカルマか

「巫女様。その鳥は……」

 護衛の神殿騎士に聞かれたキミちゃんは、

「ん? お兄ちゃんだよ」

「お兄ちゃん?」

 オウム返しに聞き返す騎士。

「確かにただならぬ霊力を感じますが、お兄ちゃんとは」

「兄ちゃは兄ちゃだよ」

 横から断言するクリスちゃん。


 神殿騎士の目元には酷く残念な()、あるいはとても痛い()、さもなくば本当に可哀想な()を見るような諦観の彩がくっきりと浮かんだ。

 それを知ってか知らずしてか、

「ここから、お兄ちゃんの嘴が指す方向に進むよ」

 キミちゃんは有無を言わさず命令する。神殿騎士は静かに

「畏まりました」

 と返事をした。


 こうして懸念した問題は何も起こらず、護衛の騎士を先頭に進む僕達は地下水道の見取り図に従って最も近い道を行く。

 神殿騎士は成人間もない若者であったけれど、その武威はデレックや元の身体の僕よりも上。ここら辺に現れる魔物の類は相手にもならない。

 当に一触にして斬ると現すべき、手際の良さだ。


「お兄ちゃん! 口から火炎放射!」

 キミちゃんの出す指示に、頭に乗っかって居る僕は、半信半疑で試してみる。

 火の魔力を嘴に集め詰め込んで詰め込んでぎりぎりまで押し固め、それを四十五度の円錐状に放射した。

 ゴゴゴー! 魔力は青白い炎となって前方を面制圧。瞬間的に炭化した生き物だった物が、パチャパチャと水面に落ちた。


 ワニの怪物は水に身を隠して凌いだけれど、

「お兄ちゃん! 火焔を纏って貫いて!」

「ケーン!」

 燃え盛る青き閃光となってワニの身体を突き抜けると、一呼吸おいてワニの身体は弾けて飛んだ。

 火焔の熱で気化した体液によって内部からバラバラに千切られたのだ。


「ッピ、ピピルルピィ!」

 って、出来るんかい! 興奮して羽ばたくと、

「どぅどぅ。お兄ちゃん落ち着いて」

 指示して置いて随分なキミちゃん。

「兄ちゃ(すっご)ーい」

 手を叩いて喜んでいるクリスちゃん。

「こんな聖鳥様に護られるとは、自分は改めて巫女様の御霊験に感服致しました」

 さっきまでの生暖かい目が別の物に変わった。


 そしてその後も、護衛の神殿騎士さんの活躍やチカの身体を駆使する僕によってサクサクと進む。


 大分慣れた頃だった。

 シュッ! 燃え盛る焔の光に虫が飛んで来た。咄嗟に嘴で攻撃した僕は、

「ピピピルピピピッ」

 こいつはイケると、嘴の先で潰してもぐもぐごっくん。

 潰す感触も咽喉越しの良さも堪らない。とても美味しゅうございましたと余韻に浸っていた僕は、

「えーっ」「……お兄ちゃん」

 クリスちゃんやキミちゃんのドン引きの反応に漸くハッ?! と気が付いた。

(うん、これはきっと身体に精神が引きずられてるからに違いない!)

 そう自分に言い聞かせる。


「急ぎましょう。お兄ちゃんが人間辞めちゃう前に」

「うん。そうだね」

 キミちゃんもクリスちゃんもそして僕も、なるべく急がなきゃ。と心を新たにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもどうぞ。

転生したらタラシ姫~大往生したら幕末のお姫様になりました~
まったりと執筆中

薔薇の復讐 作者:雀ヶ森 惠


ブックマーク・評価点・ご感想・レビューを頂ければ幸いです。
誤字脱字報告その他もお待ちしています。

【外部ランキングで本作品を応援】(一日一回クリック希望)


メッセージと感想(ログインせずに書き込み可能)にて受け付けます。

ヒロインのビジュアル
ヒロインたち
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ