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眞名解放-02

●思い出せ

 本体は向こう岸だが中州には、僕達を欺く為に残された巨大な分体が鎮座して暴れている。

 そして今も熱線放射で戦っているアイザック様。


「なんて面倒な!」

 分体と言ってもあの大きさは侮れない。

「兄ちゃ!」

 声に視線を動かすと、帯電した本体が電撃を放とうとする寸前。

 狙いはアイザック様だ。間に合うか?


 咄嗟に張り巡らせた磁界が、僅かに軌道を逸らす。僕とアイザック様に走った光の流れの大半を、僕の方に引き寄せることに成功。

 衝撃こそ食らいはしたものの、電気は僕の武器。当然絶縁は完璧だ。

 しかし、引き寄せられなかった一部を浴びたアイザック様は、指をじゃんけんのパーから中指と薬指だけを折り曲げた奇妙な形にして地面に倒れていた。表情筋が痙攣して、端正な顔が台無しになる程歪んでいる。


 直撃は避けられたとはいえ、膨大な電気エネルギーを間近で受けたアイザック様の身体は、痺れてまともに動けそうにもない。

 支援に残って居たアイザック様の郎党が、なんとか後ろへ引き摺って行く。


 思い出せ。あいつの力を。

――――

 その力は()るなり。魔物も人も体躯を奪いて傀儡と成す。

――――

 古文書の通りだ。

 アイザック様の兵を剥ぎ取って自分の駒とし、ダメージを負いつつもちゃっかりと攻撃から雷の力を剥ぎ取って利用した。

 だから迂闊に僕の切り札は使えない。って言うか、例え斃せるのだとしても放つ前の溜めの時間が問題だ。

 かと言って、下手に近付けば吸収される。あるいは操られてしまう。


 どうする? 僕に何が出来る?

 僕の属性は雷。マジックアイテムの属性も雷。多分、力じゃあいつに敵わない。

 けれどもサンドラ先生は、窮理の深みがマジックアイテムの力だと言っていた。力をどう使うかが問題だと。

 そして窮理こそが僕が優位に立てる鍵。


 思い出せ。あいつの弱点を。

――――

 塩・石灰・炎熱・流水を恐れ、闇と湿りと腐を好み

――――


 どうすれば良いのか理解した。だけど力の差は圧倒的だ。策は力を何倍にもするが、圧倒的な力の差の前にはどうしようもない。

『どうしよう?』

 思わず心に思った時。

『おにいちゃん』

 キミちゃんの声が聞えた。スライムの攻撃を躱しながら、僕達は話す。


『お兄ちゃんの眞名(まな)を解放すれば、立ち向かえるよ。でも気を付けて、大きな力は自分自身を滅ぼすから』

『眞名って、僕知らないよ』

『ううん。知ってるわよ。だってお兄ちゃん、イズヤ様を降ろした事あるんだもん』

『イズヤ様?』

『うん。勇者に試練を与えるイズヤ様だよ。だからお兄ちゃん知ってるよ』


 僕が知ってる? イズヤ様を降ろした?

 全然覚えは無いけれど、それが真実なら心当たりは一つ。

――――

「どうした? 〇〇〇〇」

「違うよ。僕スジラドだよ」


「どうした? ライ……」

――――

 そう、今さっきも僕が呼ばれた名前。


「解った!」

 僕はやり方を『思い出し』た。


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