プロローグ 踵を掴む者
●天に二つの日は照らず
異世界転生知識チート。俺の人生は当にその一言で語る事が出来る。
生まれは皇帝と皇后より生まれた男子。まあ、奴さえ居なければ紛う事無き皇太子様だったのだが。
奴の名はライディン。俺の名はフーリン。
先に行かせまいと俺は頑張ったが、結果は奴の踵を握って生まれて来ることに成ってしまった。
僅かの差が明暗を分ける。将来あいつが皇帝でこの俺が臣下。畜生! それは俺の物だ。
だが俺はシャッコウだ。それも生まれる直前に覚醒した。
寿命を削る行為だとは判っていたが、ここで使わずにどうする。今だろ!
こうして、奴は生まれて直ぐに宮城を追われ、俺は皇帝家の長子として残された。
●飛び散った珠
「お目覚めですか? 枢機卿」
撰ばれし神子の一族が私を呼びに来た。時刻は丁度明け方だ。
私を呼びに来るのは確か三十過ぎの者だった筈だが、彼女はまだ二十歳を過ぎたばかりの顔にしか見えない。
今起こされるのは予定外だ。私は眠い目を擦る。
「……あまり時間は経っていないようですが、何がありました?」
「先程、殿の神璽が空に昇って八方に飛び去りました」
「神璽がですか?」
「はい、シャッコウ様がお生まれに為ったようです」
シャッコウはこの世界に智慧と力を齎す頼もしい存在でもあるが、一つ間違えば禍津神に成り兼ねない危険な存在だ。
「飛び去った珠は幾つですか?」
「八つ全てです」
珠は書庫に繋がる物。目覚めた途端に神璽を呼ぶとは、今度のシャッコウは恐るべき偉力の持ち主。
拙い。起きて早々冷や汗ものの一大事とは……。
「八種の偉力が受肉する時、天が廻ります。
一つだけでも厄介なのに、八つ全てとなりますと、今回はとんでもない面倒事に発展するかも知れません。
あるいは邪神様直々の事案になるやも知れませんね」
私は大きな溜息と共に身を起こした。
アドバイスを容れて入れた部分があまりにも不評なので、一旦外します。
アンケート次第では、この部分を一旦取り下げます。