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もっと先だと思ってた  作者: 尭緋莉亜
1/1

はじまりなんてそんなもん



「2度目まして、だね」


そう言って私に話しかけたのはひげずらのおじいさんでも、背中に羽の生えたかわいい女の子でもなく、どこにでもいるような、ごく普通の、男の人でした。





---episode???




ごくごく、普通に暮らしていたはずだった。


多分、一般的な普通、よりお金はない家だった。


それでも、毎日楽しかった。


3姉妹に末っ子長男。


両親は厳しいけれど、やさしくて。


「ちょ、そこで株売るとか、ひどっ」


「いや、増資されたら株価下げないと負けるし」


「いや、手加減は?!大人げない!」


「ゲームに年齢は関係ない、常に全力だ!」


…夜通しゲーム大会とか、多少教育方針やら、育成環境やら疑問を持ったこともあるし、


些細なことで喧嘩もしたけど、それ以上にみんなで楽しいことを共有した。


離れても、友達だと、心友だと思える子にも出会えた。


苦しいことも多かった。


人づきあいが上手なほうではなかったから、よくケンカを売られたし、

なんでか彼氏になる人はろくでもない人が多かったけど、、、


でも、喧嘩をするたび、もめるたびに私のために本気で怒って、泣いてくれる家族、友達。


やっぱり、私は幸せなんだと思った。


あと1日で高校も、卒業で、就職もなんとか内定をもらえたのに、、、屋上なんて、行くんじゃなかった。



「進路分かれるから、最後にみんなでさぼろーよー」



なんて、メールを友達に送りながら、一人で屋上へと足を向けたのがいけなかったのか、そういう運命だったのか…


階段を上りきろうと足をかけた瞬間…


扉の奥、私からはちょうど死角になっている所で声がした。



「ねぇ、久しぶりに抱いてよ?

 彼女がいても構わないのよ?あなたの…かきくんに抱かれたのが忘れられないの…

 ね?お願い」




かきくん、、、最愛の彼氏であるはずの愛称を聞いた瞬間、私は片足を階段にかけたまま動けなくなった

珍しい愛称ではあるけれど、決してないわけではない。お願いだから、違う人であってほしい、と。


「…あぁ」



声を聴いた瞬間、私にはわかった。わかりたく、なかった。

それは、あの人の声。私を好きだと、私だけだと言ってくれた。。。


気が付けば私は声のする方に歩き出して、扉を開けてしまっていた。


そこには知らない女の人とキスをしている愛しの彼の姿があった。


まさかの私の登場に、抱き着いていた女の人を勢いよく引き剥がした彼は目を見開いて唖然と立ち尽くしていた。


そんな彼に掛ける言葉も見付からず、ああまたか、なんて私は逃げる様にその場を駆け出した。


運動神経がよくないはずなのに、全力疾走。


途中で誰かにぶつかって、相手も見ずに走り去る。呼ばれた気もしたけれど、今は誰の話も聞きたくはなかった。



学校を飛び出した私は、そうして人目につかない場所、近所のさびれた神社にきた。


さぼろうって誘ったのに、私がすっぽかしちゃったな、連絡しなきゃ



そう思っても、先程見た衝撃的映像が頭から離れる訳もなく身体が動かない。


ここではない、どこかへ行きたい、と。


あまり、思考回路の働かない頭でそう、考えていた。


声が聞こえたのはそんな時。


御社のふすまに背を預けるようにして彼はたっていた。



「・・・だれ?」


「今の君にははじめまして、が正解、なのかな?」



どこかで見たことあるような懐かしさがあるけれど、知らない気もする不思議な人。



「ねぇ、タイムリープって知ってるかい?」




そう言って男は、きれいに、笑った。

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