ハコニワ
カニバリズムありです。作者の実力が足りぬため、そんなにグロテスクではありませんが、食人表現あります。注意してください。
ハコニワ。
真っ赤で、狭くて小さくて、とても汚い、嫌なところだ。
ハコニワ。彼等がガラス越しに、ウサギが居るところをそうやって呼んでいた。
ウサギは偉い人達に飼われていた。
偉い人がウサギを飼うのには理由があった。
世界で一番強い人間を自分の部下にしようとしたのだ。
偉い人は考えた。世界で一番強い人間はどこにいるだろうか。
そして、思い付いた。見つけるのは難しいだろう。作ろう。と。
そこで、ハコニワを用意した。そして、貧困窟から何人かの人間を連れてきて、そこに入れた。偉い人は選んだ。目に強い光のある人間を。子供も大人も老人も、女も男も。関係なしに。
正確には、男の子が2人と女の子が1人、老人が1人に、大人の男が5人、大人の女が1人の、合計10人だった。
そして、ハコニワで飼われたウサギは、ハコニワの外から、ほんの少しの、みんなで飲む用の水だけもらえる。
食べ物はもらえない。水だけ。
老人は、水の争奪に負けて、3日も経たぬ内に死んだ。カサカサした、骨みたいに細い人間だった。
9人になった。
残った人間はお腹が空いて空いて仕方なくて、仲間を食べようと思った。
誰を食べようか。まずは、柔らかくて、簡単に殺せそうな子供だ。男のウサギは考えた。
女の子が殺されそうになった。
しかし、目の光が3人の中で一番強かった男の子の1人が、他の男の子を殺して食べた。女の子は助かった。
8匹になった。
次の日、男のウサギは大人の女と男を食べた。二人ともずっと泣き叫んでいて、気でも狂ったかのように煩かったからだ。
大人の肉は子供のものよりも、やっぱり固かった。
ハコニハは昨日の夜より静かになった。
6匹になった。
オトナウサギは皆、内臓を食べるのを嫌がり、ニクを食べた。
目の光が一番強いウサギは妹ウサギと一緒に、なるべく内臓を食べるようにした。
ハコニワは空調だけは良かったから、子どもより大きい、女と男のニクは割と長持ちして、一週間食べれた。
文字通り、骨の髄までしゃぶり尽くした。
それでも、やっぱりお腹は空く。
次に倒れたのは、オトナウサギだった。栄養不足だったのだろう。お腹だけ膨れている、変な格好で死んでいた。みんなで貪った。
5匹になった。
栄養不足で死んだウサギを、笑いながら泣きながら食べていたウサギが、発狂した。目が正面を向かなくなって。ハコニワの壁に頭をぶつけて、叫んでいた。誰もウサギが叫んでいることなんて聞いちゃいなかったし、ソレも、誰も分からないコトバで叫んでいた。
4匹はそんな賑やかな物音を聞きながら夜を越えた。
気の狂ったウサギは頭からいっぱい血を流して死んでいた。握り締めた拳からも、いっぱいいっぱい、血が出ていた。
それをまた、食べた。2匹の子どもウサギは内臓を。2匹のオトナウサギは争いあってニクを。
ここらあたりで、だんだん、子供ウサギとオトナウサギとの間で差がでてきた。
オトナの方はものすごく骨っぽいのに、子供の方はハコニワに入れられた、人間だった頃と大して変わっていなかった。
オトナもそれに気づいて、子供を食べようと、2匹で2匹を倒そうとした。
だけども、骨2つとウサギ2匹が闘えば、生きているウサギが勝つのは当たり前だった。
内蔵だった。内臓を食べなかったオトナが骨になって、兄ウサギと妹ウサギに負けて、死んだ。
ついにこの日、ウサギは2匹になった。
偉い人は、こんな展開は予想していなくて、ワクワクした。兄が残るだろうか、妹が残るだろうか。
偉い人の予想はまたはずれた。
ウサギは死んでしまった。
何も飲まずに。何も食わずに。
偉い人は溜息をついてこう言った。
失敗か。
きっとまた、次のハコニワが作られるだろう。
ニゲロニゲロ。ヒトデイルタメニ。