プロローグ(主人と侍女とお姫様)
「アーベント様~、おはようございます~」
と軽い口調で叩き起す侍女の零7歳。黒髪の腰まである長い髪を先でまとめてる。顔は東方の島国の顔だちで非常に整っていて綺麗というよりは今は可愛い。しかし、顔とやってること、しゃべってることがかみ合ってなく侍女っぽくない感じがする。
窓を見ると雲が少しあるが晴れていて気持ちいい......が、起こし方がね?
「下で朝食できてるから、はやくこいよ~」
主人にため口聞いて起きたのを確認してさっさと自分は部屋から出ていく。
僕は、このレアリアム領の一つラクストリアという街の領主のアーベント・レアリアム7歳だ。家族みんなは、それぞれのレアリアム領の街の領主としてついているため、一緒には生活はしていない。この屋敷に住むのは先ほどの侍女の零、もう一人の侍女のメアリー18歳とこの街を裏で統括する婚約者のアリスの4人だ。ちなみに、屋敷の中は大きいし、たくさん部屋はあるぞ?人をあまり雇いたくないだけだ(入れたくないだけだ)。
初等科の学校に通ってるので行く準備をして、下の食堂に行く。席に着くと、零が適当に食べ物をもってくる。何を食べたいとか言うと「子供がうだうだ言うな」と言って殴ってくる。
食べ終わると、零も初等科に通ってるので準備をして一緒に登校する。
この街ラクストリアは、街の中にダンジョンがある。それを街で覆ってダンジョンから出てくるモンスターを予防、退治している。ダンジョンは、それぞれのダンジョンごとに階層が違うが、古いダンジョンほど、深く強いモンスターが存在する。一番下の階層に行き、主を倒すとダンジョンは死ぬ。
そう、ダンジョンは生きている。
特に、この街のダンジョンは、かなり前からあるようで、一番古い文献で500年前だ。
この、ダンジョンは今のところ43階層まで攻略できている。
深く行けば行くほど、珍しいもの発見できる。そのため、この街は、人が多く集まり、大きく発展した。 大きく発展するのはいいが、統制がとれなくなる、治安が悪くなるなどの対策のため、ほかの街にはないような冒険者ギルド、警衛隊、医療教護隊などなど、色々と設備が整っている。
そんな、アーベントが通う初等科、その上位の中等科、高等科でも、ダンジョン探索は授業の一環として行われており、パーティーを組んで実施する。だいたい4~6人だ。もちろん、安全を考慮しつつ、ギルドに依頼して実施する。
が、しかし、アーベントと零の2人は規格外で2人ではPTを組むのだが、他とはほとんど組まない。なぜかというと......
「アーベント様~、攻撃の邪魔です、どけです~」
「お前だって攻撃した後の左前が隙だらけだろ。もっとそっちいけよ、そっちいけ」
1~10階までは、慣れたもので、敵をどんどん切る、又は杖で撲殺、魔法で倒していく。ていく。零は、東方の島国で使われてる刀を、アーベントは主に杖と魔法と徒手格闘で。
アーベント
レベル22
職種 変神(龍神系魔法、魔力特化)
HP 2100
MP 2780
力 221
守 220
知 436
魔 1022
魔防 549
速 189
運 376
スキル 龍神化1(一定時間すべてのステータスをプラスする)
零
レベル22
職種 神子(光属性特化)
HP 3200
MP 300
力 784
守 670
知 1200
魔 276
魔防 250
速 439
運 150
スキル 光の加護1(一定時間光属性を覆う、HP,MP自動回復小)
零からゼロ(零に戻す、一定時間使用者の運が0になる)
10階ごとに階層主が存在する。一つのPTでは倒せないので普通であればPT合同で倒す。しかし、この二人は...
「無駄に体力だけある~」
「零、よけろ。燃やすぞ」
ここの階層主のオーガ強は6mはある巨大なモンスター。零は下から上まで連続で無数に切り刻んだ後、後方に飛び離れる。メイド服で戦ってなければもう少しかっこいいものなのだが・・・
「龍陣」
となえると、アーベストを起点として不可思議な模様の魔法陣が地面に絵が描かれる。
「異界の門よ開け」
唱えると同時に、アーベストの左右に黒い闇が生まれる。
「右より縛り、左より永久への燃えりよ」
右の渦から黒い炎の鎖が高速でオーガを縛り拘束する。オーガも抜け出そうとするがびくともしない。しばらくすると左の渦より小さな黒き炎が出てくる。それはそれは本当に小さな炎だ。
オーガのもとに、少しずつ詰め寄りオーガの胸元にたどり着くと縦に轟音とともにオーガを黒い炎で包む。
少しの間、もがくが瞬く間に灰も残さなく散る。
「右より縛りをとき、左より元の永久へと戻れ」
黒き鎖は、目にもとまらぬ速さで右の渦へと戻り、焼き尽くした黒き炎は元の小さな炎となり戻る。
零が「相変わらずチートっぷりですなぁ~」 みたいな顔してみてる。いやいや、あんたも攻撃回数がおかしいですから。
階層主は倒すとしばらく出てこない。これを倒しておく、倒しておかないだと、安全性がすごくかわってくるので、定期的に倒さないとだめだ。いつもであれば20階階層主まで倒すのだが、本日の夕方からは領主として仕事がある。
聖霊ミリアム王国からポテプス侯爵を迎えることになっている。視察に来るのだそうだ。まぁ、ただのひまつぶしなのだろうけど。
「さてともどって準備するか」
龍陣はそのままにしておいてあるので
「開け、異界の門。一つの道となり、我を導け」
黒い渦が出て遠くまで黒い道ができる。
「アーベスト様の魔法って便利だよね~。頭もそれぐらい使えればいいの...『殴る』げふぉ」
「いいから入れ。急がないと間に合わなくなるぞ」
「あーい」
二人は黒き渦へと入り道へと消える。
「おかえなさいませ、アーベスト様、零」
アーベスト達が出てくると同時に侍女のメアリーが挨拶をする。今日は屋敷の裏庭に出てきたのになんでこの人は毎回帰って出てくる場所がわかるのかな?前に聞くと「秘密です」だそーです(こわい...)
すぐに風呂に入り服の準備をしてお出迎え
馬車が来る、あちらの侍女がドアを開けると、少女が出てくる。
だれ??? とりあえず挨拶、挨拶。
「ラクストリア領主 アーベスト・レアリムです」
「私は、聖霊ミリアム王国第一王女 マリエット・メル・ミリアム です。お出迎えありがとうごさいます」
へ? なんで王女がくる?? 意味わからん??? が、そこは顔に出さないように
「さぁ、どうぞ中に入ってください。お疲れでしょうから部屋へと案内させます。その後、夕食としましょうか?」
「えぇ、そうしてもらえるとたすかるわ、あと、今回の視察は、内密でよろしくお願いしますね?」
「わかりました、そのように手配いたします」
ほとんど全部キャンセルってことじゃん、何しにきたんだ?
しばらく、時間をおいて侍女の方から夕食をと
先に席に待っていると、部屋に入ってきた姫は、着飾った服ではなく、どこにでもいる街娘のような恰好をしている。
「今日は食事の前に話しておきたいことがあります」
「どのようなことでしょうか?」
「ここのダンジョンをクリアしたものの中から私と結婚をしてもらおうと思ってます」
「・・・・・・は?」
「だから、ここのダンジョンをクリアした者の中から私と結婚をしてもらいます」
「それはどういった意味があるのですか?」
「ここのダンジョンは、かなり昔からあります。王国は今、内政が悪化し、王国国内がとてもいいとはいえません。そこに南方の我が国を帝国が狙いをつけ始めていると情報があります。このままでは、今まで築いてきた王国、先代様達に顔向けできません。そこで、ここのダンジョンをクリアするような強者は、勇者として恥じない者だと思います。私が身売りの形となりますが、結婚をしてもらって力で王国を抑えるかたちになりますが、備えようと思ってます」
「ほんとによろしいのですか?力で抑えたとしても、一時的な処置にしかならないでしょう、しかも、ここのダンジョンはクリアできる強者がいるかどうかさえ怪しいのですよ?」
「どうしてもクリアできないようであればクリアに近いほど潜れた方を。どんな形であれ、王国が残ることができれば、私は、その役目を全うできたと確信します」
んなわけないだろ?絶対なんか裏あるわこれ。まぁ、でも...
「わかりました、王国、王女貴方自身がそれを望んでいるのであれば、私は妨げようとはしません。すみやかに、明日以降に、各諸省結婚ができるということだけを伝わるようにしましょう。この街にいることは内密にさせていただきます」
「ありがとうございます。あと、急ぐような話ではあるのですが、時間も大目に見て最長でも10年ぐらいを目安に。しばらくの間、この屋敷に住まわさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
......まじか。まさかこっちが狙いなんじゃないのか?まぁいいか、どうせわからんだろうし。
「はい、負担にならないように善処させていただきます。それでも、侍女が少ないものですからご不便かけること多くなりますが、なにとぞご両所ください」
「侍女も一人つれてきてます。自分でできることは自分でやりますので、お気になさらず」
その会話が終えると、夕食が出されて食べていく。特にたいした会話もなく食べ終えると
「今日は少し疲れてしまったようなので、お先に失礼しますね」
「はい、ごゆるりとおやすみください」
そういうと部屋から出ていく。
変な子......緑色の髪の目も緑か。王族特有の家系の色だな。歳は僕と同じかな?